こんばんは、異世界
・・・・
・・
・
ヒュッと空気が逃げた音と共に、私はどこかに着地した。
つい先ほどまでは空にいた。
もっと詳しく言えば、なぜか何処かから落とされ、空にいた。
科学の視点から見ると、そんなとこから落ちて私が無事なはずがないだろう。
落とされたということは上にいたこと。あの気圧が低い上空にいたということ。
短に言えば、重装備をした状態で深海に潜るようなこと。
そこから落ちたということは、私はもう体が投げたトマトや卵のようにペチャンコになって中身が床に衝突するということだ。
いや、炸裂する中身もペチャンコになっているかも....
とまあいろいろな一瞬で起きた出来事を大声で突っ込みたい衝動にかられながら、心を沈ませようと一息ついて、目を開く。
___そこは、霧の都ロンドンのような街並みだった。
白い霧があきこちに広がり、非常に見渡しにくいが、ここは教科書の端にちょこんと乗せられる写真、ロンドンの街並みのような風景だった。
葉を付かせ日光浴をするということを忘れたような、そんな雰囲気を漂わせる寂れた木。
日本とは大違いで、石造りのファンシーな家。特徴的な時計塔。
まさにファンタジーだ。私の思い描くファンタジー世界だ。
鐘の音を聞いて、足元を凝らす。
足元には魔法陣のような、コンパスで綺麗な円を描き、何重にも重ねた魔法陣が書き綴られていた。
「I call you me, here.
私、呼ぶ、あなた、私を、ここに...?私が呼ぶ、あなた、私にここ...
ああ、私がここに、あなたを私が呼ぶ。」
風化したのか、一部が透けていたり消えかかっていたりしているが、指でなぞるもかけたような文字は見つからない。
「The person that you are the strongest in the world.
男女問わず、あなた、強い、世界...
あなたは世界で強い人....かな?」
1つ1つ自分でも読める文字を拾う。
それにしても驚いた。たとえ異世界だとしても、言語が共通されていることに。
もしここが英国だとして、本当に異世界なのか?と疑うほどに違和感はない。いや、時間差という違和感はあるが...
いや、決定的なものがあるか。
目の前に噴水2つ分丸々収まってしまうような大きさの魔法陣だ。
私の知ってる地球では魔法なんて馬鹿馬鹿しいの一言で己の目にも写さずゴミ箱に捨てるような世界だ。
魔学より科学!な世界。
もし本当に魔学が進歩しているというのなら、先ほどの私落下出来事にも理由が言える。
時計塔を見上げる。
針はおそらく午前1時を刺した頃。まだ陽は登らないだろう。
散歩時に愛着のあるパーカーのフードを髪が見えなくなるまで深くかぶり、走る。
私の中では、黒髪は珍しいと相場で決まっている。