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霊感を欲しがるヤツらは、どうかしてる。  作者: 田村優覬
学校七不思議の親愛編
20/66

十三個目*良い名じゃな……

俺の名前は麻生やなぎ。

目の前には小清水千萩が、湯沢純子の強制成仏を始めようとする。

果たして、俺は止めることができるのか?

湯沢純子に妹、湯沢巻のことを伝えられるのか?


七不思議編。

やっと完結。

 幼馴染みに憧れる奴をよく見かけるが、大して良いものだとは言えない。

 幼馴染み。

 それは、幼いときからずっといっしょにいる存在。長く共にいることで絆は深まり、相互理解に富む者である。

 大概の人間はこれだけで、幼馴染みを親友だなどと唆すが、それは大きな間違いである。

 今回は昔話から始めさせて頂こう。もっとも、最近昔話を多用しているのだが、どうか聞いてもらいたい。



 昔々あるところに、麻生(あそう)やなぎくんと小清水千萩(こしみずせんしゅう)くんという、太陽のように明るい男子小学生がいた。二人は大の仲良しで、学校の休み時間、放課後、学校が休みの日など、ほぼ毎日いっしょに遊ぶ仲だった。

 特に休みの日では、二人が遊ぶ場所は決まっており、小清水千萩くんの家である小清水神社でよく通っていた。遊ぶ内容に関しては、神社内でのかくれんぼ、神社の階段を使ってグリコ、春から秋には昆虫集め、冬は鬼ごっこ、雨が降れば社内でテレビゲームなど、外でも内でも多岐にわたっていた。時には騒がしくしてしまい、小清水神社の神主兼小清水くんのおじいさんである小清水一苳(こしみずいっとう)さんには、よく笑顔で注意されたものだ。

 また、この頃の小清水くんは正義感が強い少年であった。

 ある日、二人でテレビを観ていると、そこでは『女子高校生誘拐殺人事件』の報道がされていた。

 内容は、とある地方の女子高生が男に誘拐され、樹海の奥に埋められたという。犯人は未だ捕まっておらず、警察は尽力で犯人を追っているようだ。

 小清水くんはそのようなニュースを聞くことがあると、「絶対に許せないよ!!」と、口癖のように決まって言っていた。

 それを隣で見ていた麻生やなぎくんは、そんな小清水くんの姿勢にいつも尊敬の意を表していた。

 二人はそんな日々を共に暮らして平和に過ごしていた。

 しかし、この日を境に二人の絆は弱まっていく。

 その日も、二人は小清水神社で遊んでいた。今は神社にある、しめ縄が着いた大きな木を見上げている。

「やなぎ!!あそこにカブトムシ!!」

 虫網を持つ小清水くんは、人差し指を木の上部にある太い枝に指して言っていた。

「でも、あんな高いところじゃ網がとどかないなぁ」

「じゃあ俺に任せて!!木登り得意だから!!」

 すると、虫かごを首からぶら下げる麻生くんはそう言って神社の木の窪みに足を乗せ始める。

「大丈夫?危ないから辞めた方がいいよ」

「平気平気!!この高さくらい、何てことないよ!!」

 心配する小清水くんに対して、麻生くんは有り余る元気をもって言っていた。


『たまには千萩にもかっこいいところ見せなきゃ!!』


 麻生くんはそんなことを思いながら一歩、また一歩と登っていく。

 木の下では小清水くんが相変わらず心配した表情で見上げていたが、麻生くんはそれに目を向けず、ゆっくりと静かに登っていき、目的地の太い枝に乗っかった。麻生くんは匍匐前進のようにカブトムシに近づき、遂にカブトムシの目の前まで着いた。

「よし!!虫かごに入れよっと」

 麻生くんはそう呟き、カブトムシに手をのばすと、

 そのカブトムシはふと片足を挙げ始める。


 ピュー……


「うわぁー!!」


 カブトムシの股から出た黄色い液体は、麻生くんの両目にかかってしまう。

 無情にもカブトムシはすぐに飛び去り、枝の上には目を開けられない麻生くんのみがいた。

「やなぎ~!!大丈夫~!?」

 木の下では小清水が大声で心配していたが、麻生くんはかっこわるいと思われたくなかったため、

「大丈夫大丈夫!!すぐに下りるから~!!」

 と、目を閉じながら言い返した。

 すると麻生くんは、着ていたシャツにカブトムシの小便を着けたくなかったため、側にある木葉をもぎ取って瞼を擦って拭き取る。その後は無事に木から下りて、二人はカブトムシを採れずにガッカリしていた。

 夕時になり、二人に今日もお別れの時間がやってくる。二人は神社の入り口にあたる鳥居の前にいた。

「じゃあやなぎ!!また明日学校でね!!」

「うん。また明日!!」

 二人はそう言い手を振り合うと、麻生くんは駆けて去ろうとしたが、何かに気づいたようにすぐ立ち止まる。

「やなぎ~どうしたの?何か忘れ物?」

 小清水くんは不思議に思い、ボーッと遠方を見続ける麻生くんのもとに寄った。


「ねぇ……あそこに浮いてる人がいるよ……」


 麻生くんは口から漏れるように言って、神社前の道路に指を指していた。

「えっ!?……って、何もないじゃん。急に脅かさないでよ~」

 小清水くんは苦笑いをしてそう告げるが、麻生くんは再び、

「ほらあそこだよ!!白衣の女の子……あっ!!今こっち見てる……あれ?消えちゃった……」

 と、独り言のように呟いていた。

 小清水くんは何がなんだかわからぬ様子でいたが、麻生くんは確かに見たことを伝える。

 その後、麻生くんは学校を初め、家庭、道端でも様々な宙に浮く人間を見るようになった。しかし、どうも周りの人々には見えないらしく、麻生くんの話を誰も聞きはしなかった。

 そして、周囲の人々からは、

「麻生くんの発言は気味悪い」

 と、言われるようになってしまい、一人、また一人と麻生くんを遠ざけるようになる。遂には家族からも口をまともに聞いてもらえなくなり、学校でも家庭でも一人きりで黙りこむ時間だけが流れた。

 気づけば親友の小清水くんも遠ざけるようになっていき、遊ぶことも話すことも無くなってしまった。

 こうして独りとなった麻生くんはある日の夕やけのなか、近くの公園にあるブランコにうつ向き座っていた。


「あの……どうしました?」


 麻生くんに優しい女の声が放たれる。

 麻生くんはふと顔を上げて女の顔を見る。

「あなた……あのとき道路にいた人……」

 麻生くんは、小清水神社の前で見かけた宙に浮いていた女性だと判断し彼女を見続ける。

「人?いいえ、違いますよ……」

 女性は優しい表情ながら衝撃の言葉を口にする。


「私は……死人です……霊なんです……」


 それを聞いたとたん、麻生くんは気がついた。今まで見てきた宙に浮く人間は霊であった。そして、それは自分だけが視えていたんだということを……


 夕日が沈むと、空と俺の表情は真っ暗な夜に変わっていた。



 そんな小清水は、今俺の前に敵として立っている。

 今にも雨が降りそうな朝空の下、俺たちは屋上で睨み合っていた。

「今から強制成仏を始める……邪魔はするなよ……」

 小清水が恐ろしい目付きでそう言うと、鎖にぐるぐる巻きにされた湯沢純子(ゆざわじゅんこ)の前にゆっくりと向かった。

 俺は足を動かせずにいたが、なんとか口を動かす。

「どうしてだよ?ソイツが何かしたのかよ!?」

 俺が珍しく声を荒げて言うと、小清水はボソッと、

「悪霊だから消す……それだけだ……」

 と、俺には見向きもせずに言った。

 俺の後ろにいるカナとフクメも黙ったままで、これから起こることへの恐怖感に恐れ(おのの)いていた。

 すると小清水は、自身では視えないが、湯沢純子の前に立ちはだかる。

「悪霊に疑いのある者は全て消す。家族のためにも……お祖父様のためにも……」

 小清水はそう言うと、湯沢純子に右手の平を見せ、強制成仏を開始しようとする。


「そうか……お前の両親と一苳のじいさんは、悪霊に殺されたのか……」


 俺がその一言を言うと、小清水は動揺した様子で固まった。

「どうやら図星みたいだな……おかしいと思った。お前はどうして全ての悪霊を消したがるのか……要するに復讐って訳か?」

「黙れ!!」

 俺の冷静沈着な言葉の後に、今度は小清水が大声で叫び俺の方を向く。

「復讐ではない……正義だよ!!悪霊は人間にとって有害だ!!消されて当然だ!!それぐらい、お前だってわかるはずだ!!」

 小清水は完全に怒りの有頂天に達していた。

「お祖父様から聞いたんだよ……俺の家族は交通事故で亡くなったとき……どうもそれは事故ではなかった。悪霊が仕組んだ事件だったんだとな!!それにお祖父様まで……そんな悪霊を、俺は絶対に許さない!!」

 小清水は完全に取り乱している様子であり、話の流れがむちゃくちゃのまま言っていた。眠いのを我慢して発表する子どものように……

 それを見た俺は、やっと足を動かし始め、小清水の正面に立つ。


「なあ、どうして一苳のじいさんは、ソイツを消そうとしなかったのか……考えたことあるか?」


 俺は、小清水には視えない湯沢純子をチラッと視て、小清水の顔を見て言った。


「一苳のじいさんは、人間と霊は心を通わせることができると、信じてたからだよ……昔の俺たちみたいによ……」


 俺の発言のあと、周囲には静かな時間が流れた。すると、ポツリと俺の頬に雨粒が降りてきた。

 ポツリ……またポツリ……次第に天気は雨に変わり、辺りをザーっという雨音が包み込む。


「悪霊と……心を、だと?」

「違う……霊と、だよ……」


 雨の音のなか、俺たちの緊迫した会話が再開された。

「お前は霊を全て悪霊だと思ってるようだが、決してそうではない。人殺しを拒否するヤツもいれば、いつだって成仏されても構わないってヤツもいる……少なくとも、そこにいる霊は、人を殺そうなんて考えていない……」

 俺はカナとフクメ、そして湯沢純子を一度ずつ目を向けて話していた。

「皆が悪霊だとは言えない。お前は悪霊とただの霊の認識をしっかりやることだ」

「しかし、霊だっていつかは悪霊になる!!言霊とかなんかを集めて、無事に成仏されることを目的にしているんだろ!?結局ヤツラは人を殺して大量の言霊を手に入れる……霊は悪霊の種だろ!!」


「そう思わなかったのが、一苳のじいさんだよ」


 小清水が相変わらず荒々しい口調で話すなか、俺は言い聞かせるようにゆっくりと話していた。

「一苳のじいさんは、悪霊を消していくんじゃなくて、悪霊にさせないようにしていこうとしたんだ。そのために、この学校に一匹、霊を置いて監視させたんだ。ソイツが悪霊じゃないってわかっていたからな」

 俺は再び湯沢純子に顔を向けていた。

 湯沢純子の表情は、今すぐ消されてしまうのではないかという不安はなく、悪霊によって殺された小清水一苳から信頼されていたという、うれしくも儚い表情で下を向いている。

 そして俺は再び、うつむく小清水に向かって話す。

「ここまで聞いても、お前はソイツを消すつもりか?一苳のじいさんの想いを、無駄にさせることになるぞ」

「わかるわけねぇだろ……」

 すると小清水は歯軋りをして、顔を上げて俺に怒りの表情を見せつける。

「俺は、お前といいお祖父様といい、霊が視えて会話ができる人間じゃねぇんだよ!!それで悪霊とただの霊を判断しろだと……そんなの、わかるわけねぇだろうが!!」

 小清水はまるで荒れ狂う雷のような大きさで叫んだ。

 しかし、ずぶ濡れになっている俺は冷静だった。そう……冷静だったのだが……


「だったら、俺がお前の手助けするよ……」


 ……と言ってしまった。

 俺たちの間に再び雨音だけが響く沈黙が流れた。

「手助け……って、お前が俺の目になるとでも言うのか?」

 小清水は落ち着きを取り戻したが、予想もつかなかった俺の発言に対して、目が点の状態だった。


 なんで……こんなこと言っちまったんだ?


 俺は自分の発言に激しく後悔していた。

 どうにか時間が戻らないか?

 誰か時を止めて助けてくれ!!

 そんなことを思いながら、俺はこの場を潜り抜ける方法を必死に考えていたが、何も浮かばず冷や汗をながしていた。


「フフ……まさか、お前から来るとはな……」

「え?」


 すると小清水はそう呟き、一度ため息をついて下を向く。

「お祖父様から言われていたんだよ。こういうのは、一人でやるものではないとな……しかもその相手は、やなぎ……お前が相応しいともな……」

 すると、小清水は顔を上げて俺と目をあわせる。小清水はここ最近では見せない、少し優しさを含んだ表情をしていた。

「良いだろう……お前がそこまで言うなら、是非とも俺の目になってもらおう」


 はぁ!?


 俺はそう思うと、何故だか次第に雨が止んでいった。

「全く……素直でない親友を持つのは苦労するなぁ」


 お前さっきから何言ってんの?


「やはり、お祖父様のいう通りだった。やなぎは寂しがっていると……」


 おい、シバくぞ!!


 すると、空から太陽の陽が射し始め、俺たちを優しく照らしていた。


 なんだよ、ドラマによくある良さげなこの展開は!!


 すると、小清水は歩き始めて俺に近づいてくる。

「お祖父様の気持ちと、お前の目に従って、この霊は見過ごしてやろう……」

 小清水はそう言うと、俺の隣を通り過ぎるところで、

「またよろしくな……やなぎ……」

 と、俺だけに聞こえる小さな声で囁いて通り過ぎていった。


 もしかして、アイツが一番寂しかったのか?

 俺と話さなくなってから、日々神社に一人で居たようだし……

 それに今じゃ、両親だけでなく一苳のじいさんもいないんじゃ……そうか……アイツは俺と同じ立場になったのかもな……まあ俺は寂しいなんて思っちゃいないがな……

 それに、俺たちが話さなくなったのは、アイツが俺を遠ざけたことではない。俺が一方的に距離をおいてしまったからだったのだろう。

 まさか、この腐れ縁を復活させようとは……

 素直じゃないのは、お前もいっしょだぞ……


 俺はそう思いながら、女にはない男の幼稚さを感じていた。こんなことで仲直りなんて、幼稚すぎる……

 そして、小清水の袴を身に纏う背中が屋上から見えなくなるのを、じっと見届けた。


「湯沢さん!!」

「純子ちゃん!!」


 小清水がいなくなると、俺の後ろにいたカナとフクメが涙目で叫ぶ。

 俺は二匹の気持ちを汲み取って、ゆっくりと湯沢純子の前に立った。

 すると、湯沢純子の全身を巻いていた鎖が白く光り始め、次の瞬間粒子となって消える。

 鎖から解放された湯沢純子は、唯一彼女と学校を繋ぐ、地縛霊としての鎖のみを首に繋がれた状態となった。

「湯沢さん!!」

「純子ちゃん!!」

 カナとフクメは、解放されて倒れこもうとした湯沢純子を正面から支えた。

「大丈夫ですか!?」

「立てる?」

 二匹は心配した表情を続けて、膝をついて肩を持たれた湯沢純子に問う。

「ああ……ワシは問題ないぞ……ありがとな」

 湯沢純子は顔を上げて、右肩を支えるカナ、左肩を支えるフクメをそれぞれ見て囁いた。

 すると、湯沢純子はそっと立ち上がり、カナとフクメは支えるのを止める。

「世話になるとはな……感謝するぞ……小童(こわっぱ)


 感謝してたらそんな言い方しないだろ……


 湯沢純子に言われた『小童(こわっぱ)』に対して、俺はいつものように不満を感じていた。


「しっかし、今日のやなぎは、かっこよかったな!!」


 すると、フクメは表情を笑顔に変えて言っていた。それに対してカナも、

「はい!!麻生さんは、やっぱり素晴らしい人格者の持ち主だったのですね!!」

 と、まだ涙を目に残していたが、うれしそうに喜んでいた。


 俺としては、アイツと友だち関係になる予定ではなかったんだが……

 まあ、結果的に湯沢純子を消さずに済んだんだ。我ながら良しとしよう。


「まるで、男同士の禁断の愛ですね!!」

「ゲイか!!そうか、やなぎはゲイだったのか!!」


 はい、お前ら消しまーす。


 カナとフクメの会話に俺はそんなことを考えていると、湯沢純子は屋上に足を着けて歩き始める。

 99年前の制服を着ている彼女は、ゆっくりと足を前に出して歩き、柵に当たるところで立ち止まった。

「フフ……久しぶりにこの景色を見たのぉ……やはり、屋上の景色はワシの宝じゃ」

 湯沢純子は、屋上から見える校庭、校舎、校外の街並みを見ながら、うれしそうに呟いていた。

「さて……歌でも歌うかのぉ……」

 湯沢純子がそう言うと、俺はあることを思い出した。それは、姉、湯沢純子のために生きた、妹、湯沢巻(ゆざわまき)のことだ。

 湯沢純子が歌い始めようとしたところで俺は止めて、カナとフクメも交えて湯沢巻についてを話し始めた。


「そうか……あの声は巻じゃったのか……」


 話を聞いた湯沢純子は目を瞑り、妹の名前を噛み締めるように言い、古き良き思い出に耽ていた。

「素晴らしい歌声じゃった……ワシのそばには、ずっと巻がいてくれたのじゃな……」

 湯沢純子がそう言うと、彼女の目からは一筋の涙が流れ始める。

「巻には、たいへん迷惑をかけたつもりじゃった……お父さんが死んで、ワシも死んで、母と二人にさせてしまって……さぞ苦しかったじゃろう……」

 湯沢純子は次第に声を震わせていた。

「それなのに……ワシのために……こんな……グスッ……」

 湯沢純子は潤ませた目を開き、屋上の夏空を見上げる。

 そして俺はそっと湯沢の隣に立ち、同じ青空を見上げた。

「アンタと再会させたいのはやまやまだが、もう亡くなってる……でも、無事に天国に逝ったんじゃないか?」

「ああ……きっとそうじゃのぉ……きっと、笑っておろう……すぅ……」

 湯沢純子はそう言うと、大きく息を吸った。すると、空に向かって、とある童謡を歌い始める。

 湯沢の高く澄んだ美声は響きわたり、この世界を明るく照らしているようだった。

 夏の日射し、屋上に流れる優しい風、目の前に拡がる校庭に支えられながら、湯沢は涙を流して歌っている。

 それの歌はまるで、姉から親愛なる妹への、示し切れない感謝の印を表しているように聞こえる。


 七不思議。

 それは、生徒が身勝手に作ったイタズラ話。しょうもない話であれば、誹謗中傷すら起きてしまうものだ。

 しかし、どうやら例外もあるらしい。

 七不思議っていうのは、ときには姉妹のように、切なくも温かい関係性を持つこともあるのだ。



「やなぎ……」

「ん?」


 歌い終わった湯沢純子は、涙を浮かべていたが、うれしそうな表情で呟く。

「良い名じゃな……覚えておこう……」

「時の救世主だ……しっかり覚えておけ……」



 その後、びしょ濡れのまま教室に戻った俺は、閻魔大王の九条満(くじょうみちる)に地獄の説教ノックを浴びせられたとさ……



 おしまい。




 

皆さんこんにちは。

クーラーとは幼馴染みの田村です。

今回もありがとうございました。

予想よりだいぶ長引きましたが、無事に七不思議編を終えることができました。

ちなみに、最後に『おしまい』 と言いましたが、最終回って訳ではありませんのでご安心ください。

これからも地縛霊、湯沢純子をよろしくお願いします。

次回からは新編に入ります。名前は決まっておりませんがお楽しみに。

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