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霊感を欲しがるヤツらは、どうかしてる。  作者: 田村優覬
学校七不思議の親愛編
16/66

十個目*この幼児体型がッ!!

俺は麻生やなぎ。

七不思議の最後の一つ、屋上の歌姫の真相をしるため屋上に向かった。しかし、俺の目の前に映ったのは、祖父が神主で神社に住む小清水千萩(こしみずせんしゅう)、そして、全身を鎖に巻かれた少女だった。

一体、この少女の正体は?

そして、なぜ小清水はこんなことをしているのか?


 夕陽ってなんか好きだな。

 優しくオレンジ色の光で人々を照らす夕陽。長い時間を見ることはできないが、それによって、より幻想的に感じる。

 そんな夕陽を見るたびに俺は思う。「よし、やっと城に帰れる」と。

 朝からうざっ苦しい人間たちといっしょに生活をしてクタクタになった俺に、夕陽は「お疲れさま」と囁いているように感じる。

 俺たちにとって、夕陽とは母のような存在であり、誰にも差別なく接してくれるものだと俺は思う。


 しかし、今日の夕陽はいつもとは違っている。

 俺たち、麻生(あそう)やなぎ、水嶋麗那(みずしまれいな)、自称悪霊のカナとフクメは夕陽が射す屋上にいる。そのなかで俺は、屋上の入口に数々の鎖に縛られた少女を見ている。

 その少女は、水嶋より背が低く丁度フクメと同じくらい。この学校の制服を着ており、ボブヘアーで肩にかからない程度の髪型であり、目を閉じて悲しそうな表情を浮かべていた。

 俺たちよりも屋上に先に来ていた小清水千萩(こしみずせんしゅう)は俺の驚いた顔を見て口を開く。

「どうだ?視えるか?」

 小清水は怖い表情で言い、俺は首を縦に振って口を開く。

「お前に……こんな性癖があったとは……」

 俺は恐る恐る言うと、小清水は顔を赤くして「違う違う!!そういうことじゃない!!」と俺の言葉を撤回するよう求めた。

 俺と小清水のやり取りを見ていた水嶋は、なんのことだかさっぱりわからない様子で俺に「麻生くん……何か視えるの?」と聞く。

 俺は不思議に思った。あの水嶋が、目の前でこんな小清水の性癖を見せられているのに平然としているからだ。

 俺はカナとフクメを見た。すると二匹はともに目の前の光景を恐れた様子を浮かべていた。


 あいつらは視えて水嶋は見えない……もしかして……


 俺はそう思い、もう一度鎖に縛られた少女を見る。すると、その少女からは夕陽による影が全く無かったことに気づく。


「こいつは地縛霊だ」


 少女を見ていた俺に、小清水は俺に向かって言っていた。

「しかし、俺にはまだ視えないがお前なら視えてるんだろう?麻生……」

 小清水の低く闇を抱くようなトーンの言葉で、今俺の前で起こっていることがやっとわかった。


 この少女は地縛霊だ……


 すると、水嶋は俺たちの話を聞いていたため、「地縛霊?」と驚いたように呟く。

 隣の俺は小さく「ああ……」と答えて、水嶋の疑問に解答を教える。


「ふん……さすが霊が視えるだけあるな……」


 小清水はふて腐れたように俺に言った。

「どうしてこんなことする?悪さするようなやつには見えないぞ……」

 俺は、鎖に縛られた少女を庇うつもりでは言っていないが、小清水にそう告げた。

「地縛霊は悪霊だ……いつ悪さを起こすかわからん……」

 小清水は真剣で恐い表情のまま俺に言った。


 この少女も悪霊?


 俺には理解できなかった。なぜ、悪霊とわかっているのに消さないのか?

「だったら、とっとと成仏でもしてやればいいじゃないか?」

 俺は小清水にそう言うと、小清水は首を横にゆっくりと振り目線を下げていた。

「土地に憑いた地縛霊は、なかなか成仏できないものでな……今のところはこうやって鎖に縛りつけてやることで精一杯だ……しかし、安心しろ……」

 小清水はそう言うと、視線を上げて再び俺に向かって口を開く。

「もう少しで俺も神主になり、こいつを成仏できるような能力がつく。それまでは、この状態で居てもらう」

 小清水は最後に鎖に縛られた少女を視て言った。

「神主が成仏できるってんなら、その神主をなぜ連れてこない?」

 俺は再び浮かんだ疑問を小清水にぶつけると、小清水は一度笑い、「そうか……まだ言っていなかったな……」と言っていた。


「俺の祖父であり神社の神主でもある小清水一苳(こしみずいっとう)は、この前亡くなった」


 小清水の言葉のあと、俺たちがいる屋上に沈黙の空気が流れた。

 確か、小清水は、幼いときに両親を事故で亡くしており、それから祖父といっしょに暮らしていると聞いたことがある。その親のような存在でもある祖父、小清水一苳が亡くなったと聞き、俺は口を動かせずにいた。

 すると、小清水は沈黙を破り言葉を話す。

「まあ、そういうことだ。いずれこの霊は消す。だからお前らは絶対に邪魔するなよ……」

 小清水は冷徹にそう言い、俺の方へ歩いてくる。

「まあ、今回お前たちが屋上に来たことは黙っておいてやる……もう、俺は降りるぞ……」

 俺たちはただ黙った状態が続いていた。すると、小清水は水嶋の前に立ち止まり、屋上と非常階段の策の鍵を手渡すし、俺と水嶋の間を通り過ぎるところだった。


「憑かれてるよな?匂いでわかるぞ……」


 小清水は、俺の方を見て、俺だけが聞き取れるくらいの小さな声で言い通り過ぎていった。

 水嶋は、小清水の背中を心配そうに見つめていたが、俺は小清水に振り向きもせずに固まっていた。しかし、小清水が非常階段を降りる音が聞こえたため、アイツがこの場からいなくなったことを実感しひと安心していた。


「なあ水嶋……」


 俺は静かに口を開いた。

 隣の水嶋は俺を見て、悲しそうな表情をしていた。

「先に降りていてくれないか?」

 俺は水嶋と目を合わせずそう言うと、水嶋は「うん……わかった。鍵渡しておくね……」と言い、俺のズボンポケットに鍵を入れて優しい微笑みをして去っていった。

 水嶋は本当に空気を読める女だ。俺の目の前に霊がいるとわかると、俺の気持ちを察して去っていく。俺は、この霊という存在を視た日からイジメにあうなど散々な生活が始まった。霊を視ただけで周りから気持ち悪がられ、俺は人前で霊を視ることがトラウマだった。また、正直言って、霊に対して良い印象はない。しかし、コイツらにも心があり想いもある。俺は唯一その心と想いを受けとることができる。きっと、水嶋はそのことも踏まえて、黙って去り俺を独りにしてくれた。きっとアイツは良い女だ。世間では、良い女には悪い男が寄ると聞くが、水嶋にはどうか立派な家庭を築いて頂きたいものだ。


 感謝はするが、礼はしないからな……


 俺は頭のなかでそう思ったあと、縛り付けされている少女の前に向かった。

 すると、カナ、フクメも黙って俺の後ろについていき、二匹とも険しい表情をしていた。

 日没間近。夕陽が徐々に消えていくところ、俺は少女の前に立ち止まった。

 すると、少女はゆっくりと目蓋を開けて俺の顔を見て口を開く。

「何者じゃ?……ワシが視えるのか?」

 その少女は小さな声で年齢不相応な発言をしていたが、俺は平常心を保って「まあな……」と小さく返した。

 その少女は「そうか……」と弱々しく呟いて、再び目をゆっくりと閉じた。すると、少女はそのまま「お主の後ろにいる者は……やはりワシと同じか……」と口を開く。

「ワシが見たところ、お主ら二人はまだ、悪霊に成りきっておらんようじゃな……」


 悪霊に成りきっていない?


 俺は、その言葉がどうも気になった。確かに、このカナとフクメは自分で悪霊だとほざいていたが、そんな恐ろしさは全く伝わってこない。仮にも、コイツらが正真正銘の悪霊になったら、一体どうなるのか?


 すると、鎖に巻かれた少女を見ていたカナは「苦しいのですか?」と今にも泣き出しそうな表情で言うが、少女は「気にするでない……ワシはこのままで良い……」と目を閉じながら言っていた。

 カナに続いてフクメも「でも、アンタそのままじゃ何もできないだろ?」と心配した表情で言った。すると、少女は少し笑いだして口を開く。

「そんなことはない……ワシは、景色を見て、歌を歌えれば、それで良いのじゃ……」

 少女はそう言い、再び目をゆっくりと開けた。

 辺りは徐々に暗くなっており、夕陽は照らすことなく沈んでいた。

 すると、少女は俺を見て静かに口を開く。

「お主……帰らなくて良いのか?お主の家族らが心配するであろう?」

 少女は無表情のままそう言ったが、俺は「問題ない……」と一言で片付けた。

 俺は独り暮らしの身であるため、どの時間に帰ろうが誰からも心配などされない。ましてや、俺が独り暮らしを始めるきっかけになったのは、俺の親どもが、俺の霊視能力を気持ち悪がったことだ。正直、家庭から追放されたと言いたいところだが、面倒事が嫌いな俺は、あえて周囲の人間に言わずにいた。それに、今の独り暮らしはとても充実しているし、この生活がずっと続けば良いと思っている……まあ、この二匹がいないことを前提に……

 俺の発言のあと、少女は「そうか……」と少し笑顔になったように見えたが、再び無表情に戻る。


「なあ……」


 気づいたときには、俺は口を開いていた。

「アンタに聞きたいことがたくさんあるんだが……」

 俺はいつも他人と話す時の無表情で言うが、少女は「小童(こわっぱ)の話か……退屈になりそうじゃが、付き合ってやろう……」と俺をガキ呼ばわりしてきたことに腹が立った。


 コイツ……見た目は俺より年下のはずなんだが……


 俺は怒りが込み上げてきていたが、何とか抑えて少女を視る。

「お前は……」と俺は言い出すと、少女は俺の話を止めるように「先ずは名からじゃろ?」と偉そうに言ってきた。


 いちいちムカつく……


 俺は再び堪えて「麻生(あそう)やなぎだ……」と声を震わせて言うと、少女は「麻生やなぎ……良い名だな……」と目を閉じて呟く。

「ワシの名は湯沢純子(ゆざわじゅんこ)だ……」

 少女は目を開けて俺に言ったが、俺は奇妙だと感じた。

 以前、カナから聞いた話では、死んだあとの霊には、生きていたときの記憶はないとのことだった。しかし、この湯沢純子は、あたかも前から知っているかのように、平気に言っていた。


「何も驚くことはなかろう?」


 湯沢は口を開き俺の様子を見て言っていた。

「ふん……これじゃから、小童(こわっぱ)は退屈じゃ……」

 湯沢はため息をついてそう言うと、俺の後ろにいたカナ、フクメを見始める。

「お主ら……この小童(こわっぱ)に説明してあげなさい……」

 俺は湯沢の言葉につられて、カナとフクメの方を見る。すると、まずカナが話始める。

「はい。確かに、私たちのような霊には、記憶はありません……しかし、唯一例外の者がいます……」

 カナは落ち着いた状態で真剣な表情で話していた。そして、次にフクメが口を開く。

「それが、地縛霊……その地に強い想いを寄せて亡くなった霊だけが、死んだあともしっかりと記憶を持つ……」

 フクメは、フクメらしくない真剣な表情で話していた。


「なるほど……」


 俺は呟き、再び正面にいる湯沢を視る。

「つまり、アンタは地縛霊だからこそ、名前もしっかり覚えているってことか……」

「そうじゃ……小童(こわっぱ)にしては、なかなか物わかりが良いのじゃな……」


 俺は今年で17だぞ!!この幼児体型がっ!!


 俺は、少しでも怒りを抑えようと、心の中で叫び解消していた。

「で、お主がワシに聞きたいこととは、何じゃ?」

 なぜか話の占有権を握られたような感じがしたが、俺は我慢して言葉を放つ。

「まず、どうしてお前はいつから、こんな状態でいる?」

 俺は鎖に縛られている湯沢を視て言った。

「疑問符が二つ出とるな……小童(こわっぱ)は国語が苦手のようじゃな……」


 余計なお世話だ!!このまな板野郎!!


 俺は、湯沢の平たい胸を見て思っていた。すると、湯沢は下を向いて目を閉じる。

「いつから……か……もうじき百年になるのかのう?なんせ、ワシはこの学校の一期生じゃからなぁ……」

 湯沢の言葉に、俺は狼狽えた。コイツはやはりこの学校の生徒であり、しかも百年近くここにいる。

 湯沢は再び言葉を続ける。

「どうしてか……ワシがきづいた時にはこのように鎖に縛られておったなぁ……」

 湯沢は昔のことを思い出したせいか、少し微笑んで言っていた。


「湯沢さん!!」


 声を発したのはカナだった。カナは、子を心配する親のような表情で言っていた。

「湯沢さんは、どんな想いをもって地縛霊になったのですか?」

 カナの質問はあまり意味を持たないと感じたが、湯沢は笑い、カナと目を合わせた。

「なんじゃ?ワシの想いに興味でもあるのか?」

 湯沢は微笑みながら口を動かしていた。

「はい。差し支えなければ、お願いします」

「私も私も!!教えてください!!先輩!!」

 カナが頭を下げたあと、フクメも大きな言い一礼した。

「そうか……良かろう……」

 湯沢は目を閉じながらそう言い、湯沢がどうやって地縛霊となり、どんな想いを抱いているのかを説明し始める。



 今から99年前。

 当時の日本は第二次世界対戦を終了し、敗戦となったときだった。

 激動のなか、日本は教育に力を注ぎ、全国に新しい学校を建て始める。そしてその一つ、笹浦第一高等学校が完成した。

 当時、高校受験を見事に合格した湯沢純子(ゆざわじゅんこ)は、満潮の想いで笹浦一高に入学した。笹浦一高は湯沢の近所でもあり、ものすごく親しみを感じていた。また、湯沢純子の家庭は、父、母、三歳の妹を含む四人家族。しかし、湯沢の父は、ヨーロッパの医療を学ぶためにイギリスに赴任していたため、実質は三人で暮らしていた。湯沢は父の影響で学問にもたいへん興味を抱いていたが、何よりも好きなことは、学校の屋上で、自分が住む町を見ながら歌を歌うことだった。高い景色を覗きながら、音楽で習った歌を毎日のように口ずさんでいたという。

 そんな初春のある日、湯沢が学校から帰宅すると、母はうれしそうに口を開く。

「お父さん、帰ってくるそうよ」

 その言葉に、湯沢はうれしさが込み上げてきた。あまりのうれしさに、目を潤ませるほどだった。湯沢の妹も笑顔で喜び、湯沢家の屋根の下では、一時の穏やかな時間が流れていた。

 それからというもの、湯沢は心を踊らせて大好きな学校に向かっていた。毎日屋上では、校舎に植えられた小さな木、広いグランド、吹き抜け廊下を走る生徒たちを見ながらうれしそうに大声で歌い、周りから良くも悪くも視線を集めていた。帰るときはいつも職員室の前にある時計を見て、帰宅するのが日課のようになっていた。

 しかし、父が帰ると聞いてから時間がどんどん進み、気がつけば一ヶ月が過ぎてしまった。

「お父さん……いつ帰ってくるんだろう……」

 湯沢純子は下を向きながらそう思い続けていた。

 学校から帰宅し、湯沢は「ただいま」と言いはなったが、家から誰の返事もなかった。

 家には誰もいないのであろうか?

 そう思った湯沢は家を上がり茶の間に向かった。すると、そこには母が、電話の受話器を持ちながら泣き崩れていた。

「お母さん!?どうしたの!?」

 湯沢は慌てて母の肩に触れて問うと、母の口からとんでもない一言が放たれる。


「お父さん……亡くなったって……」


 湯沢の父がイギリスを発ったのは二週間前。父は日本行きの飛行機に乗り、早く家族に会いたいという想いでいっぱいだった。うれしさが顔に出る父だったが、そこで事件が起こった。


「アンタ……日本人だよな?」


 通路を挟んで隣に座っていた男が、湯沢の父に韓国語で話しかけた。しかし、父は韓国語など習ったことがなく、男が何を言っているのか検討がつかずにいた。

 すると、韓国語の男はポケットに手を突っ込みながら立ち上がった。

「お前らがいなければ……」

 恐ろしい憤怒の表情をした男は湯沢の父の前に立つ。すると、ポケットから刃渡り20センチ程度の包丁を取り出した。

 湯沢の父はそれを見て驚きのあまり目を見開くが、もう遅かった。


「死ねぇっ!!」


 湯沢の父は、首を深く切りつけられ、大量出血で死亡する。その後、その男はイギリス警察に捕まり、国籍が韓国人であることが明らかになる。殺害動機として、男は「侵略に対する復讐……」と言うだけだった。第二次世界対戦では、日本軍は数々の国々を侵略しては民間人を危険にさらしていた。男性だったら捕虜としての強制労働。女性だったら慰安婦。また、はむかう者は平気で殺していた。

 その男の家族は皆日本軍に殺害され、それが犯行に及んだと考えられる。


 その事を聞いた湯沢純子は、母のように座り込み、現実を直視できないままいた。


 それから、湯沢は学校に行き、いつも屋上に上がり歌を歌っていた。最初は、父の死のショックでとても暗い表情でいたが、本人としては、大好きな屋上で歌うことで、父の死に対する悲しみを忘れることができたという。徐々に日が進むにつれて、悲しく、悲壮感漂う音を響かせていた湯沢の歌声は、入学したときのような、明るく、優しい、穏やかなものに戻っていた。

 まるで、学校が湯沢純子を優しく支えているようだった。

 父の死から二ヶ月経った六月。

 今日の放課後も屋上で歌い続ける湯沢は、夕陽のなか独りで歌っていた。すると、湯沢はふと父を思い出してしまい、何を血迷ったか、屋上の周りを取り囲む低い柵を飛び越えて、膝を折って下を眺めていた。

「……お父さん……私は楽しくやってるよ……」

 湯沢は穏やかな表情で呟いたが、目から大きな涙を流していた。涙は夕陽に照らされ、屋上から落ちて地面に滴るのを繰り返している。

 すると……


 !?


 屋上に突如大きな風が吹き込んだ。風は湯沢の背中に当たり、湯沢はバランスを崩して前に倒れるようになっていた。しかし、手をつこうとしても、そこに地面はなかった。


 やだ……まだ、ここで歌いたいのに……


 そして数秒後、湯沢は頭から地面へと向かっていた。


 ん……んん……


 しばらくすると、湯沢は再び屋上に立っていた。

「あれ?どうして……夢?」

 湯沢は確かに、先ほど屋上から落ちたと思っている。

 しかし、なぜ今や私がここにいるのか?

 湯沢は全く理解できずにいた。手で頭を抱えようとしたが、湯沢はある異変を感じる。

「あれ?」

 手に何か冷たく固い物が触れたような気がした。湯沢は奇妙に後ろを振り向いた。

 すると、屋上の入口のドアから、鎖が一本、湯沢の首めがけて延びているのが見てわかる。

 湯沢は自分の首に手を添えると、冷たく固い鎖が巻かれていた。息苦しくはなかったが、湯沢は鎖を取ろうと試みるが、引っ張っても取れる気配がなかった。

 困り果てた湯沢ではあったが、また他にも異変にきずく。

 何だか騒がしい……

 湯沢は多くの人々の声が聞こえた気がし、屋上の下を見下ろした。


「あれ……私?」


 なんと、屋上の下には、湯沢純子が、目玉が飛び出し、頭から血と骨が見えた状態で寝転がっていた。

 それをたくさんの生徒、大人が取り囲んで騒がしくなっていた。

「え……なんで?……私はここにいるのに……」

 湯沢は青ざめてそう言い、自分の身体がある下に行こうと屋上から降りようとした。走って屋上なドアを開けようと試みたが、手はドアの部をすり抜けてしまい握ることすらできなかった。

「どうして……」

 驚く湯沢はドアから降ることを諦め、奥にある非常階段から降りようと考えた。しかし、階段に向かうと、見えない壁があるのか、湯沢は階段に足を踏み入れることができなかった。

「なに……どうなってるの?」

 冷静さなど全く失ってしまった湯沢。そんな湯沢を沈みかけた夕陽は照らしていた。

 湯沢は夕陽を見ているとあることに気づいた。

「あれ?私の影がない……」

 湯沢は屋上の地面を見てそう呟いた。まるで、自分の存在を否定されたように感じていた。

 そして、湯沢は改めて気づいた。


 私も……死んだんだ……


 こうして、湯沢純子は、学校に対する無償の愛により、地縛霊となってしまった。

皆さんこんにちは。

この前、映画サマーウォーズを録り忘れてやる気スイッチオフの田村です。

今回から新たなキャラクターが登場しました。

湯沢純子(ゆざわじゅんこ)をどうかよろしくお願いします。

次回は湯沢純子の真実をさらに掘り下げていこうと思います。

次回もよろしくお願いいたします。

また、ご意見、ご感想、ご愚痴もお待ちしております。

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