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霊感を欲しがるヤツらは、どうかしてる。  作者: 田村優覬
学校七不思議の親愛編
12/66

湯沢(ゆざわ)純子(じゅんこ)の想い**なあ、巻よ?

 ――花を咲かせた桜の (うら)らかな日々には

   鳥が飛び去る刹那に 我襲うは悲喜かな

   風が揺らめし階段に 訪れた四季とは

   月と似た移ろいを 屋根へ示すよ西から


   やがて全ての時は止まり 我は動かぬ石となる

   庭から貴方(あなた)を見つめる故に 我は(さと)りし意味を

   嗚呼(ああ)、この恩が音として 届くを祈る(いと)し君へ――




 これはいつもワシが、心を寄せた学校の屋上で唄っていた、とある童謡。

 そして愛する妹の(まき)へと贈りたい、儚くも心暖まる、長き(うた)じゃ。



 なあ、巻よ? 

 


 このワシを許せとは言わぬ。事故と言えども死したワシは、御主を始め、多くの者たちに多大なる迷惑を掛けたじゃろうからな。



 ――誠に、済まぬ想いで満たされておる……



 もうじき百年か……御主と別れてからな。


 あっという間と言えば、確かにそう感じるときもある。ワシがここにいることも、ついこの間のことのように覚えておるからな。


 じゃが、ここから見える世界は、やはり大きく変わってしまった。平地だった田んぼには数えきれぬほどの家屋が並び、あの日歩いた土の道も黒き板で覆われておる。


 御主とワシが知っておる景色は、恐らくはほとんど残っておらぬじゃろう。

 


 ――じゃがな、巻よ? 御主に対するワシの心は、未だ変わらず顕在じゃ。



 愛と呼べるこの想いは、死して百年経っても、変わらぬのじゃよ。ワシが入学した、この学校と同じようにな。

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