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アンバランス

2011年05月31日の作品です。実はこの話の前に、フェイクテラピーって話があるんですけどね。

「どうもバランスが悪いな」

 先日【フェイクテラピー】という怪しい店で肩凝りを治療してから、頭が重たくなったような気がする。

 やけに身長が縮んだような気もするし、周りの人達も大きくなった気がする。

 街中に出ても、小顔で身体が異常に大きい人がいたり、どこからどう見ても女の顔をした男がいたり、男の顔をした女がいたりとして、実に不気味な世の中になった。

『それにしても俺、こんなにチビだったっけな?』

 頭が異常に大きく、どういう事か五等身。バランスが悪いなんて問題じゃないのかもしれない。


『あの店が、やっぱり怪しいな』

 そう思って【フェイクテラピー】のあった場所に来てみた。

 しかし、あの怪しい店は何処にもなかった。

『あれぇ!? おっかしぃなぁ!?』

 周辺を歩き回ってみるが、やはり【フェイクテラピー】なんて店は無かった。

 途方に暮れて帰ろうとした時だった。

 あの【フェイクテラピー】のあった裏側の路地に、これまた怪しい店を発見した。

【あなたの悩み解消いたします。身長でお悩みの方。性別でお悩みの方。当店に一度、ご相談ください。我社の最新技術によって、あなたの悩みを即解決する事が出来るかもしれませんよ。詳しくは、店内にて説明いたしますので、気になられた方は、2階までお上がりください】

『なんか、この前の店に似てる気が……』

 そう思い、怪しい店に入ってみた。


「お帰りなさいませ。御主人様」

 真っ赤なローブで全身を覆った男が話し掛けてきた。

『おいおい。黒が赤になっただけじゃないか!? しかもまた、お帰りなさいませって言ってるし』

 先日の店と同じだと確信した俺は、赤ローブの男の傍まで早足で歩いて行った。

「おいこら! 俺の体、肩凝りは治ったけど、何かバランスおかしくなったけどどうなってる!?」

 赤ローブの男の前のカウンターを、両手でバンッと叩いて大声で怒鳴る。

 しかし、赤ローブの男は、「御主人様。我が店は、治療を行う所ではありません。御主人様方のお悩みを解消する所にございます。何処か、別のお店と間違えておられるのではございませんか?」と、淡々と答えた。

「確かにこの前は黒いフードだった……。っっって! 騙されるかよ! 黒いフードが赤いローブに変わっただけだろ!」

「そう言われましても……。仕方ありませんね。御主人様には、我社の最新技術を無料で体験していただき、そのいかがわしい店との違いを、理解していただくというのは如何でしょうか?」

 何やら話がややこしい方向に向かいそうだが、バランスの悪い体が無料で元に戻るならば、と思い赤ローブの提案を受ける事にした。


 指示を受けた部屋に入ると、光も射さぬ暗闇だった。入室と同時に、部屋のドアがバタンと音をたてて閉まると、ガチャッと大きな音がして部屋に閉じ込められた。

『クソッ! ヤラレた! どうなってる! 真っ暗で何も見えやしない! 俺とした事が、前回と同じ手に引っ掛かるとは!』

 暗闇の中を、壁伝いにグルグル周りながら出口を探す。

 もうどれだけ歩いただろう? 全くドアの場所が分からない。その時、ヒュッと聞いた事があるような音が聞こえたと思うと、頭や腕・体を鈍器で殴られたような痛みが走り、身体の自由がきかなくなった。

『もう訳がわからない』

 動かない頭・動かない身体を、どうにかして動かそうと躍起になったが、冷汗が額を横に流れていく感覚だけしか分からなかった。


 動こうとすれば動こうとする程、額を汗が流れていくのみ。右から左に流れる汗は、冷たかった。

 暫くすると、頭や体を誰かに触られているような感覚になった。

『う! き、気持ち悪い……』

 そして、手の感覚がなくなった瞬間、後頭部に重い痛みを感じた途端、意識を失った。


 気が付いた時、俺は自分の家の前で倒れていた。

 起き上がろうとしたが、空が見える。

『どういう事だ!?』

 空を見上げ起き上がると、とりあえず頭を冷やす為に、家へ入ろうとしたが後退りしてしまう。

 疑問が頭を駆け巡り、顔を触った時だった。

『……何だ? この感覚……』

 それは、俺の後頭部だった。


 俺の顔は……背中を向いていた。ただ世界の大きさは、俺の知っている高さに戻って……いた。





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