感情変異
2010年10月24日の作品です。
――私の頭はどこかの線が一本切れているのだ――
今朝じいちゃんが死んだ。随分前から肝臓や腎臓が悪く入退院を繰り返していたが、今朝早く病院の看護師が巡視中に、心停止しているじいちゃんを発見したとの事だった。
ばあちゃんは、泣き崩れていたが、母や父の表情には何か安堵のようなものが感じられた。
母や父は、通夜の準備やら親戚への連絡でバタバタしていた。私は特に気にもとめていなかったので、無関心に徹していたが流石に家から出る事は出来なかった。
そして私が、いや私の頭がおかしい事がわかる瞬間がやってきた。通夜が始まると、坊主が命の抜けたじいちゃんの抜け殻にお経を唱え始めた。
その時だった。私の心は脇腹や足の裏、脇の下をそれはもうしつこい位にくすぐられる様な感覚に襲われ、笑いたくて仕方なくなった。
親族なので、その場を離れる事が出来ず、真っ赤な顔をして笑いを堪えていた。その様子を見て母がかなり私が悲しんでいるのと勘違いし、背中をさすってきたが、次第に笑いを堪えられなくなり、とうとう大声で涙を流しながら大笑いしてしまった。
すぐさま、『マズい!』と感じその場から飛び出し、建物の裏に行くと笑いが止まらなくなっていた。
葬儀の時には母と父に説明し、私は参列を拒否した。親族からは非難の視線を浴びせられたが、悲しみを感じなければならない空間で笑うことを躊躇した結果だったので気にしなかった。
――だから、私の頭はどこかの線が一本切れているのだ――
そう思うしか他に無かった……。




