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エッセイ~ペットは語る~

エッセイ(ペット(にゃんこ)の視点)

作者: シュリンケル

 あたいは「みゆ」。ネコだわ。

人間からは「のらネコ」+「雑種」としてカテゴライズされていたわね。

(人間ってなんでも分けたがるみたいね)


 みんなは知らないの。あたいが特殊な生き物だってことを。

言葉も理解できるし、種族を超えて会話もできるのよ。

カラスはカラス語を話すし、スズメはスズメ語を話すのよ。

(みんな少しずつ違う国の言葉だと思えばわかりやすいんじゃないかしらね)


 お腹がすいてる時、あたいはよく魔法の呪文を唱えるの。

「ネコさまからのお願いよ。鳥ちゃんたち、だれかあたいの力になってくれるかい?」

人間が聞くと”にゅわわ”とか”うにゃにゃにゃ”としか聞き取れないみたいね。

たまにスズメが呪文の力に囚われて舞い降りてくるのよ。そこであたいのしなやかな捕獲が可能になるわ。

やっぱりスズメがいいわね。小さくてぷりっとしてるし、声もステキだものね。

え?スズメが可哀想? じゃあなんで焼き鳥たべてるのよって話だわ。

(カラスはだめ、彼らは臭いし野蛮だもの)


 野良ネコとして生きて行く上で一番気をつけていた事は「水」ね。

新鮮な水が飲めなければいけないわ。腐った水は身体をすぐに壊すもの。

そうするといつまでたっても元気が戻らないし、仲間の多くもそれで亡くなってしまった。

だから水のある場所は常にチェックしていたわね。


---


 あたいたちは同じ種族であっても馴れ合うことがあまりないわね。

血が繋がっているか、運命の相手にしか心を開かない。

あたいの場合としてだけども。(まあ、みんなそれぞれ違うから)


 それでもゴハンをくれる奇特な人間もあちこちにいるわ。

スズメの時と似てるけど、人間の心にダイレクトに響く呪文をあたいたちは習得してるのよ。

なるべく力を抜いてポテって感じで寝転んで見せるの。にいにい鳴くの。

あたいが狙った人間は、たいていの場合無視できないみたいね。


 怖い目にもたくさん会うわよ。それは誰でも同じでしょ。

だからあたいたちは常に身体を鍛えてるの。

鍛え上げた身体で木に登る瞬間は”あたいは生きてる!”って感じるわ。

そして木の幹にしがみついて鳥たちと同じ目線で辺りを見渡すの。(睨みを利かせるって言うのかしら)

それを見た他のネコたちが、憧れや嫉妬の眼差しで見上げるのよね。

そんな風にしてあたいは野良ネコの道を歩んでいたんだわよ。


---


 あたいのヒゲが台風の近づいてくる不穏な気圧の変動を感じていた、ある日のこと。

今までのナワバリに凶悪ネコ族が入り込んできたために、あたいはエリアを追われたの。

食料にことごとくありつけず、水も確保できないまま、身体が衰弱していったわ。

数日かけてたどり着いたある草むらであたいは倒れて眠っていた。

その場所は複数の犬の臭いとネコの臭いがかすかに感じられた。

危険な兆候だ。

勝手の知らない場所で倒れた場合、テリトリーとしている他のネコに攻撃される可能性は大変高い。

それよりも犬に噛み殺されたり、凶暴な人間にひどい目に合わされたり、でかい車に轢かれる事だってあるのだ。

このまま雨が降ってきた場合も考えれば、安全かつ雨風がしのげる場所を探さなくてはならない。


 残念な事に、あたいにはもうこれっぽっちの力も残っていなかった。

「あっけない人生だったな」背の高い草むらに身体を横たえてそう思っていた。


 最後の力を振り絞ってあたいは助けを呼んでみたの。「たすけて」って。

そのままあたいは気絶したらしい。



 どれほどの時間が、日数が経過したのか知れないけれど、あたいはまだ生きていた。

幸い、身体にまだ異常は見当たらない。


 人間の気配がする。犬の気配もする。遠ざかり、また戻ってくる。

これは賭けだった。少しだけ目の前の道路に向かって鳴いてみた。

犬にやられるかもしれない。人間に追い払われるかもしれない。

でもあたしは鳴いた。なんども、なんども。

やがてさっきと同じ気配が近づいてきた。

人間。男と女と子供。さらに小さめだけど怖そうな顔の犬!


 不思議なことに、かれらは優しかった。

犬はあたいに話しかけてきた。「だいじょうぶだよ、ぼくがまもってあげる」

彼らの差し出すエサは、この犬の食料らしかった。

久しぶりに食べた食事はとってもおいしかったよ。

「うまいうまい」かれらの言葉が話せることを少しアピールしながら頬張って食べたわ。

ミルクまで差し出すかれらを見上げて、あたいは決心したの。


彼らと一緒にいたい。


そのようにしてあたいの野良生活は終わりを告げたのよ。


 実際、かれらはスペシャルな家族だったわ。だから大好きになっちゃったの。

ちなみに、そのときの恩を忘れていないってことを、毎日の散歩にくっついて歩くことでアピールしてるわよ。

そりゃまあ、たまに楽しくて帰らなくなったりするんだけどね。


 言い忘れてたけど、今のあたいには別宅が数件あるわよ。これは内緒だわよ。


挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
[良い点] とっても可愛い文章ですね♪ほっとしました [気になる点] 文の初めにスペースを空けておくと見やすかったかもしれません(私もよく忘れますが……) あと、「」の中の最後の。はいらなかったような…
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