第一幕 f レミナス・トット α巻
男は聖ボリティモス王国出身ではない。どこの国にも属さない田舎の集落の出である。
遥か昔、神話の時代ほどの時の避難民が作った村であり、特に目覚ましい発展もなく、どちらかというとどこの国にも属さなかったせいか、裏事業が根付いていった。
男の母はそこそこ身分の高い人物であった。裏事業の根付く村になぜだろうか。なぜ男はボリティモス王国で働いているのか。
それを全て語るには男が生まれる前に遡る必要がある。
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テレーはカラル村の少年である。
幼少期はとにかくやんちゃをして育ち、ことあるごとに母親のトーカに叱られていた。父親のレイラがいるときは、トーカからの叱責を受けた後はたっぷりと甘えさせてもらったものだが、仕事で家を開けていることが多かったためテレーの幼少期の大半はやんちゃしてはトーカの叱責を浴び、またやんちゃしてはトーカから叱責を浴びるの繰り返しであった。
幼少期が過ぎて少しした頃、やんちゃに飽きてきたテレーはたまにしか帰ってこないレイラに幼少期より一層、興味を持ち始めた。
一体、自分の父親はどんな仕事をしているのか、なぜ帰ってくるスパンがまばらなのか。聞きたいことはたくさんあったが、帰ってきた日は丸々2日くらいは眠りこけるため聞く機会はなく、仕事でない日は次の仕事の準備に出かけていたりしていたためこれまた聞く機会はなかった。
だがある日、我が子の意思を汲み取ってか、レイラは予定していた仕事を早めに終わらせ、家族の時間と称してトーカやテレーと過ごす時間を大事にし始めた。
だから、初日に思いっきり聞いていみることしたのだ。
「親父、何の仕事してんだ?」
「俺はな、墓守してんだ」
「ハカモリ...?」
知らない単語に首を傾げるテレーだったが、6歳にして墓守と言う単語を知っている方が不思議というものだ。だがどうだろう、大人からしたら知っていて当然の職業だ。トーカは知っていて当然だと言わんばかりの顔でテレーの疑問に答えた。
「あんた、墓の場所は知ってんのに墓守は知らんのかい?」
「だってよ、母ちゃんは全然親父の仕事のこと話してくんねぇしよ」
「そりゃ、あんたが聞かないからだろう?聞けばあたしだって言うさ」
「そんなもんだったかな」
自分の記憶とはえらい違うものだ、とテレーは記憶を思い起こしてみる。
前にトーカに質問した時には「あんたの知らない仕事の名前さ。それより、晩飯の支度をするんだから手伝いな」とはぐらかされた記憶と似たような場面が多数思い起こされる。
「あと、あんたが聞いてくる時は大半間が悪いのさ」
ごもっともである。誰が晩飯の支度中にわざわざ長くなる話を持ちかけるものか。そう自分で納得しながらテレーは改めてやり取りを見守るトーカに向き直す。
「その墓守ってのはどんな仕事なんだ?」
「んー、墓守の仕事か。そうだな、例えばだな、去年亡くなった村長がいたろう?村長は村総出の葬式の後に火葬をしたよな?」
「ああ、たしかに火葬して、村人が一人づつ骨を拾って壺に入れた」
火葬をしないと屍人になってしまうとは子どもを怖がらせるための迷信なのだとテレーが言えなくなったのはある事件を経験したからだ。
この事件とは、テレーの遊び仲間であった村の子どもが死んだ愛犬を秘密に裏庭に埋めてしまったことがきっかけになった。その翌日、テレーがいつも通り遊びに行くと、急速に腐食の進んだ子どもの愛犬の死骸が、かつての友人であった子どもを襲うところに出くわしてしまったのだ。不幸中の幸いというべきか、子どもとテレーに怪我はなく、子供の親が屍犬にとどめを刺して事なきを得てこの事件の幕は閉じる。
これと同じように犬に限らず人も、火葬という手順を踏まなければ同じ道を辿ることは簡単に想像できたのだ。
「じゃあ、その壺はどこにやるんだ?」
「そりゃ墓だろう?墓石の前に穴を開けてそこに埋めるんだよな」
「ああ、そうだ。俺はその骨の入った壺と、墓石とそこに眠る人の魂を守ってんだ」
ならば夜だけ行けばいいことだろう、そう言おうとしたがテレーはなぜか言ってはならないような気がして、口をつぐんでしまった。これからも聞く勇気は出るような気はしなかったが、成人でもすれば聞く勇気は芽生えているだろうと思い、一度その疑問は飲み込むことにした。
だが、これに答えてもらうことはついに叶わなかった。
レイラが死んだ。
最初は父親が死んでも悲しいという感情が芽生えない自分に驚き、淡々とその事実だけが身に刻まれたが、葬式が始まってすぐにテレーの感情は決壊した。
レイラが死んだ。
この事実はテレーの将来のなりたいものを見事なまでに曲げた。あの疑問を飲み込んでから実に11年、いつか聞こうと思い忘れてしまっていたテレーは自分の冒険者になりたい言う願望を周囲に言ったほうがいいだろうと思っていたところでもあったが、当分それは先送りにするしかなくなった。
テレーの悲しいという感情は芽生えないのではなく、それをとうに過ぎ、自責に変わっていた。もっとやれることがあったのではないか、もっと話せることはあったのではないか、なにか気づくことができたのではないか、と。
最初に家族3人で初めてゆっくり話したときからレイラは定期的に長時間の家族の時間を作ってくれた。
そのおかげもあってか、トーカはテレーの幼少期からは想像もできないほど穏やかな母親になった。まさに順風満帆と言っていいような生活だった。
いくら村が裏事業の根付く場所であったとしても村人皆がそうだったわけでもなく、村全体はとてもいい雰囲気であり、よそ者嫌いも発生せず、外との交流もそこそこであった。
村全体が順風満帆だったのだ。それも、レイラの一件以前の話だが。
葬式が終わり、遺骨を墓に埋めてからは放心状態が続いた。
葬式の間はお世話になった人や、村長などの村人へ挨拶回りをすましていて、一見穏やかだったトーカは家に帰ると部屋に行く前にテレーの眼の前で泣き崩れた。
もはや、泣き言とも嗚咽ともわからない音を吐き出す母親を眼の前にテレーは背中を擦ってやることしかできない。
何時間続いただろう。家の中が暗闇に支配されていることを見るあたり恐らく夜も更けているのだろうか。擦り続けた背中を見ると泣き疲れたのか、最近白髪が増えてきたと愚痴をこぼしていた頭をガクリと落として寝息を立てていた。
子どもか、と思ったが二人の愛への冒涜に気づきその思考を放棄した。
トーカを寝室へ運び、テレーは一人夜に出かけた。
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「テレー、相手を斬る時は頭を正直に狙っちゃあいけないんだ」
「なんでだよ、弱点っつったら頭か、男だったら玉だろうが」
「ははは、暴力的なこと覚えているな。あながち間違ってはいないんだが、頭は急所としてなら一番的確なとこだからな。みんなそれわかってるから防御しちまうんだよ。玉に関しては言えないな、まあ、守られてることが大概だ、急所を丸出しにしてるわけ無いだろう?」
苦笑交じりに説明してくれるあたりちゃんと教え込むつもりなのだろう。だが、わからないものはわからない。
「わかってなさそうな顔してんな。よし、俺に斬りかかってこい!殺すつもりでな!」
時々レイラはテレーに稽古をつけてくれていた。レイラ曰く、自身は月闘剣帝級ほどあるらしく。そろそろ剣を教える頃だろうと木剣を手渡してきたのが始まりだ。毎度一回は死に物狂いでかかってこいと言われ、斬り殺しにかかるが傷を負うのはいつもテレーだけだ。
「らぁあああああああ!!!」
前に出した右足に負荷をかけ、敵めがけて一直線に飛び出していく。闘剣流『一閃の太刀』を移動手段として応用したものだ。土埃が舞い、剣筋が目標に到達し、頭を突き貫いたと思われたが、相手は練習用の藁人形ではない。生きた人間であり、さらには闘剣流の頂を一度目指したという男だ。
テレーの放つ剣閃を躱した反動で即座に足払いが施された。
だが、これまで教え込まれたことをテレーは無下にした覚えはない。足払いされ体勢を崩されたが、足先の仕込み刃で牽制しつつ両手を地面に着地させ、間を取り足場を戻す。
「ちっ、仕込み靴か。どこで仕入れてきやがったんだ?お?でもそりゃ俺が上げた靴だな。さてはお手製か」
即座に見抜かれたが気にしない。一度でも隙を作れたのであればこちらのものだ。解説中の敵まで瞬時に鋭く足を運び、距離を詰め、刺突を繰り出す。
「甘い甘い、突くなら一個一個突き切るんだよ。こんなふうにな!」
鳩尾を深く突き刺され後ろへと突き飛ばされる。肺の空気がなくなる感覚を味わうが、頭はまだ回る。体を微回転させ、本来背を押し付けるはずだった木に垂直に立つ。
「はぁぁっっ...!!ふぅう」
一瞬の余裕で肺に空気を送り直し、未だ目で捉え続ける敵を睨み直し、体勢を再度立て直す。後ろは似合わぬ大木を生い茂らせる林、眼の前は圧倒的に実力差の埋まることのない敵。撹乱のために後ろへ下がるか、フェイントを見せつつ敵の背後を取る動きにするか、迷う、が敵の動きに瞬時な決断を迫られる。
「いいかー!!最大の刺突はこういうものだ!!!」
闘剣流の極技の一角である『光斬』とは、世界最速を誇る剣閃であるが、テレーがその基本の型である『一閃の太刀』を応用したように、闘剣流の速さとは剣にだけではなく、剣と人体の両方で再現が可能だ。
細かく言うと両方というより一つで使うという違いはあるが、使えるというのであればさほど違いはない。
まさに敵が放とうとしている最大の刺突とは、光斬による最速の剣閃でテレーを後ろの木に縫い付けることが目的だ。先程のように鳩尾に当たれば二度と二足で立つことはできない。そしてそれは予想ではなく完全な事実になる。
であれば、林に逃げる他なくなったわけだ。
苦汁を飲まされたが仕方ない。
林へと踏み込み、木々の間を登るように駆け上がって木の上に到達する。
敵は正面から突っ込んで来る、テレーがそう考えていたのなら絶命していただろう。
真上から斬りかかってくる敵の剣を樋で受け止めた。敵はテレーの予備動作を見て光斬の軌道を遥か上空に直し、超重量の剣閃を実現させたのだ。
当然、衝撃を殺しきれるわけもない。足から飛び出る衝撃は足場の大枝を見事にへし折り落下を促す。
交えた剣を薙ぐように振り、横への動力を生み出し、大木へと体を押しやる。懐から出した短剣を大木に突き刺して落下速度を止め、再度体勢を立て直す。
敵が着地したであろう場所を注視してようやく違和感を覚えたときには遅かった。
「敵から目は離しちゃなんねぇ、目を潰されようが見てなきゃいけないんだって教えたはずだぞ」
降ってくる言葉を聞き、反撃に出ようと木に突き立てた短剣を握りしめるが、行動は叶わず、テレーの意識は深く遠のいてしまった。
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目を開けるとそこは天井ではなく星のきらめく夜空だった。
夢を見ていた、かつてレイラがつけてくれた剣の稽古の夢だった。たしか、あの時衝撃を逃がしきれずに木剣を折ってしまったのだったか。
だが、剣は無くしたが、同時に称号を得た、闘剣王だ。剣王は月剣帝の一つ下の段位にあたる。剣の腕前は上から月剣皇、月剣帝、剣王、剣鬼、剣豪、剣生、剣士の七つに分かれて評価される。剣王以下はそれぞれの師匠から名をもらうことがあるが、月剣帝となると流派のたった一人しかなれない月剣皇から名をもらう必要がある。
どのくらい眠っていたかわからないが、恐らく小一時間程度だろう。
よく稽古前と後にレイラと雑談していた丘の大きな切り株から体を起こし腰を上げた。
「母さんが起きてるかもな」
つぶやきながら腰に差した真剣に手をかける。剣を抜く意志はない、ただ触れただけだ。
「親父は、いつも見ておけって言ってくれてたな。一体何を見ろって言うんだ。親父の背中を見ることはもうできなくなっちまったじゃないか」
はぁ、とため息をつき、帰路についた。
「ただいま」
家の扉を開けてまず、トーカの部屋へ向かった。トーカのというより、両親の部屋だったのだが。
トーカはまだ寝息を立てて寝ていた。一番ショックを受けたのは彼女だろう。
たまにしか帰ってこなかったとしても、家族との時間を大事にしていたし、余裕がある時であれば実に活動的でもあった。二人の愛無くしてテレーは生まれることはなかったし、二人の教育無くして今のテレーはいなかった。
今はそっとしておくべきだ、そう思ったテレーはトーカが起きてきたときになにか食べてもいいように、冷めても美味しいククルドスープと柔らかめのパンをいくつか皿に乗せ、料理蓋を被せて部屋の机に置き、自分の寝室で泥のように眠った。
翌日、目が覚めたテレーは、一昨日までと同じように寝間着から運動着に着替え、水場で顔を水で軽く洗ってから、トーカの様子を見て外に出た。朝の鍛錬である。
テレーの朝の鍛錬はまず走り込みから始まる。村の外側を見回りを兼ねて走りつつ、魔獣が見えれば愛剣で仕留め、村の見張りに引き渡す。その魔獣も滅多に出ないため本当にたまにである。村の外側の走り込みを終えた後は村の中の大通りや路地を片っ端から走り村の地形を体と頭に覚えさせながら、朝の早い村人たちに挨拶をして回る。
「グレーヴェ婆さん、おはよう」
「おや、テレーじゃないか。おはよう。今日はわしが最初かえ?」
テレーはその日の気分によって村の中での経路を変えている。今日は畑が多い場所を通ってみたのだ。
「ああ、今日はグレーヴェ婆さんの畑から見ようと思ってね」
「そうかい、偉いね。レイ坊がいなくなってすぐだってのに」
「はは、そりゃ思うところがないこたないけど、そうくよくよしててもいいことはないだろ?」
「そうかい、ならいいんだがね。そうだ、昨日レタソが市場で余っちまってね。持ってってくれるかい?」
グレーヴェ婆さんは週に一回、村から少し離れたところにある市場に畑で育てた野菜を売っている。
質は良いのだが、辺境で買いに来る人はやや少なく、必ず荷車の半分くらいは持って帰ってくる。市場に出しに行く量のほうが多いので収入は赤字にはなっていないらしい。そのあまりは近所の人や、たまに走りに来るテレーにお裾分けしているのだ。
「あー、また昼間に取りに来ていいかな。今荷台持ってないし」
「そうだね、昼間まで取っておくよ」
「あんがとさん、またくるね」
「はいよ」
グレーヴェ婆さんの畑を後にしたテレーは大通りに向けて走り出した。
「次は肉屋か、ついでに農場に行ってから帰ろう」
カラル村は農業人口が多い、その影響で村のおよそ三分の一は畑や水田の地域があり、農家業の村人はその地域に住んでいる。実際、その地域を一番奥に位置するグレーヴェ婆さんの畑から抜けようとすると大通りまでは30分近くかかってしまうが、体力がついてきたテレーからすれば余裕である。
「ふう」
一息ついたところで目的の肉屋へ向かう。
「おっちゃん、おはよ」
「おお、テレーじゃねえか。今日はな、珍しく魚肉が仕入れてあんよ」
「魚肉ぅ!?」
海の遠いカラル村にとって魚肉はなかなかに高価なもので、珍味でもある。川魚とはまた違う脂の乗り方をした魚肉は時折こうして肉屋に並ぶのだ。
「おうおう食いついたな。まあ、こっちのは売れねえがよ。レイラさんにはお世話になったんだ、こっちを持ってってくれぇい」
そう言って店主が取り出したのは身こそ小さいが、立派な海魚であった。
「ありがたく受けっ取っとくよ。親父のとこにも供えたいから、そっちの魚肉とケラスタウラスの肉をくれないか」
「へいへい、あー、そうだな。一番客だからまけねぇとな。となるとだなぁ、ちょとばかし待ってくれや...いち、に、さん...3ルメと5ルノだな。」
「うわ、あったかな」
額を聞いて驚きつつ財布袋をまさぐると、月銀貨3枚と銀貨6枚が朝陽に照らされていた。
「あっぶな、1ルノだけしか残りないや」
「あいよ、ちょうどいただくよ。ほい、一応冷蔵版が1時間くらいのやつが入れてあるから、お前さんが帰る頃には間に合うだろ」
「ありがとね」
「いいやぁ、いいんだい。それならってんじゃねえけどよ、墓の場所教えてくれんか。俺もレイラさんには挨拶をしてえんだ」
「ああ、きっと親父が喜ぶよ。たしか、騎士墓地群の前から5列目の左から9番目とかだったと思う」
騎士墓地群、自分で思い出しておいてなぜあんなところにと思ったが、後で調べておこう。レイラのことは知らないことが多すぎる、遅くなったが自分の父親を知るには良い機会でもあるだろう。
「えぇっと、騎士墓地の前5の左9か。妥当なとこに置いたな、あいよ。んじゃ、何卒ご贔屓に」
肉屋から離れた後は家に帰る途中にある農場に向かって肉類を片手に走り出していた。
「おはようございまーす」
「あらぁ、偉いわねぇ。ほら、あんたも挨拶すんのよ」
「お、おはようございまひゅ...あ」
十分な高さまで日が出てきたあたりから村人たちがより活発的になってきた。
すれ違う村人に挨拶をしては、挨拶が返ってくる、とても気持ちの良い瞬間だ。
「「パッカパッカうっまがーひっずめっをなっらすーパカラッパカラッヒヒーン」」
きゃはははと言う笑い声と同時に響く陽気な歌は農場の主、アレンとその娘のアリスのものだ。
「おはよう、アレン、アリス」
「お、テレー兄さんだぞ、ほら、アリスご挨拶を」
そう言ってアレンはアリスを肩から下ろしてテレーの前に立たせ、仁王立ちし始めた。
「テレーお兄さんごきげんよう!」
よく響く声でスカートの裾をつまみながら幼いながらも上品に挨拶を済ませ、満足そうな顔でもじもじと体を揺らしている。
「ごきげんよう、アリスお嬢様。心地良い朝ですね」
口調こそ丁寧なものであるが、両手を広げアリスの眼の前に膝をついてしゃがむと、待ってましたと言わんばかりのアリスが豪快に飛び込んできた。
「この親ばかめ、アリスお嬢様になに教えてんだ」
「はっはっはっはっ!そういうテレーも乗ってくれているじゃないか!!!」
「そりゃあ、こんな可憐なアリスちゃんに付き合わないわけがないよねー」
「ねー」
きゃっきゃと腕の中ではしゃぐ少女と同意を交わしながら眼の前の親ばかに返してやる。
「それで、親父の馬を引き取りに来たんだが」
「ん、シヴァラッジョなら元気だぞ。あいつぁ、名馬だ」
「そっか、昼過ぎくらいにうちに連れてきてやってくれないか、できれば馬小屋も建てたいんだ。作業も手伝ってほしい」
「む、そうだな。あいわかった。昼飯食ったらすぐ連れて行くとしよう」
「助かるよ」
「ははは、友の頼みは断れんもんだろう!なあに、生まれたときからの付き合いだしな」
「へいへい、じゃ、そういうことでよろしくな。またねーアリスちゃん、ちょっとパパ借りるけどいいかな」
「よきにはからう!!」
娘になに教えてるんだか、そう思いながらようやく家へと足を進める。
トーカはもう起きた頃だろうか。
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テレラウス・テンペッド著
盤遊者解体書 第一幕 レミナス・トット 上巻 完 中巻に続く




