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第18話 アイダたちの進軍


「魔王のベリアルと戦うつもり?」


 レイラに付いている熾天使セラムが聞いて来た。


「どういう意味なの、戦うに決まっているでしょ」

「勝てないわよ」

「そんな事は戦う前から分からないわ」


 悪魔であるレイラに天使が付き添っているのは奇妙な光景だが、天使と悪魔の関係は複雑で微妙なのだ。魔王のベリアルでさえ、元は神によって造られた第一の天使であったと自ら言っているのである。


「あなたはまだベリアルの事を分かっていない。力で勝とうとしても無理だわ」

「じゃあどうすればいいの?」

「……それは私にも分からない」

「でも付いて来るんでしょ」

「もちろんよ」


 そう言いきった熾天使セラムを見ると、レイラはため息交じりに、


「じゃあ、邪魔にならないようにね。魔王軍団との戦闘が始まったら、ずっと隠れているのよ。怪我をしちゃいけないから」

「…………」

「私を見守っていてくれるんでしょ」


 レイラはちょっぴり皮肉を込めて守護天使に言った。


「…………」




 神は人間に天使以上の愛情を注いだが、それに反発したのがベリアルだった。

 ベリアルは天界において、自分は神をも凌ぐ力を持っているのではないかという驕りが出てしまった。そのため、味方となる天使を集め神に対して反旗を翻したが、結果は敗北に終わり仲間と共に下界に堕とされてしまう。

 天界から堕とされ、誇りを踏みにじられたベリアルは、激しい怒りと憎悪を吐き出した。そのけがれは実体となり……やがて最初の汚物が怪鳥の群れとなり、二度目の汚物によって半獣人の軍団が生まれた。それらの軍勢を引連れた魔王の怒りは、神の寵愛の対象となっていた人間に向かうようになったのである。




「行くわよ」


 はっきりとした勝算の目途は立っていないが、このまま引き下がるわけにはいかない。アイダは再びジャガーのワイナとゴリラのトゥパック、キイロアナコンダ、レイラを従えて歩き出した。レイラの傍には犬のノラがぴったり付いている。


「アイダ、後ろを」


 ワイナの声でアイダが振り返ると、そこにゾボとオオカミの軍団が付いて来ていた。


「ゾボ様」

「そなたが魔王ベリアルと戦うと聞いたのに、この儂が何もしないでいるわけにはいかんのでな」


 ゾボの後ろに控えているのはオオカミの精霊たちである。ゾボは数々の窮地から仲間を脱出させた元オオカミのリーダーで、伝説的な存在であった。ゾボの呼びかけに応じたオオカミは四十頭をはるかに超えて、群れは血縁関係でさらにいくつかの群れに分かれている。


「儂の呼びかけに応じてくれたのじゃよ。まあよく動く者達であるから、邪魔にはならんじゃろう」

「ゾボ様……」


 ところが付いて来ている者はそれだけではなかった。


「あの方は……、アモン様」


 悪魔の中にもアモンという名の強者がいる。その生まれ変わりを自称する戦車好きの神である。


「アイダ、久しぶりではないか」

「アモン様」

「敵は魔王ベリアルとその軍団だな?」

「はい」

「よし、相手にとって不足は無い、この儂が来たからには何も心配するな、ハッハッハッ」

「…………」


 こうして虹の精であるアイダは、ジャガーのワイナとゴリラのトゥパック、キイロアナコンダ、風の悪魔少女レイラ、犬のノラを率いて、さらにその後からゾボの率いるオオカミ軍団、戦車に乗ったアモン神が胸を張り威風堂々と進軍を始めた。さらに言えば、レイラには熾天使セラムが守護天使として付き添っている。

 しかし、アイダがポツリと呟いた。


「そういえば怪物の正体はまだ分かっていないわね」

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