表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/5

第1話 ジャガーと共に密林を歩く少女


 第一部 精霊界の旅編


 あらすじ

 虹の精霊アイダは、仲間たちと共に異界に現れる怪異を巡る旅を続けていた。

 人界と精霊界を巡るアイダの前には、魔術師、怪鳥、食人植物、そして堕天使の魔王ベリアルなど、数々の脅威が立ちはだかる。

 やがて一行は、冥界をも巻き込む大いなる戦いへと足を踏み入れてゆく。

 これは虹の精霊アイダと仲間たちが紡ぐ、長き異界の旅の始まりを描く物語である。




 オスのジャガーと共に密林を歩く少女がいる。鬱蒼としたジャングルの濃い緑が辺りを覆っている。少女は少し開けた小高い丘に来ると、そっと身を乗り出し下を見つめ始める。黑い瞳で切れ長な目、肩を超える黒髪が風になびき頬を斜めに横切って、その横顔を隠す。

 隣に控えるジャガーも少女と呼吸を合わせて身を沈め、静かに見下ろしている。


 丘の下、旅客機が煙を引きながら森へ落ちていった。人間たちが作った大きな機械の塊が、森を傷付けながら落ちていく……


 その時、後ろから遅れて姿を現したのは小山のような厳ついゴリラだ。

 しかしいつまでも動こうとしない状況にじれたのか、このオスのゴリラは鼻を鳴らして少女の方を向き、更に声を出そうと口を開く。だが少女のきつい瞳に睨まれると、体重150キロを優に超えているだろう黒い毛並みのゴリラは、申し訳なさそうに身をすくめた。


「行くわよ」


 そう言うと、立ち上がった少女とジャガー、そしてゴリラの姿が揺らいだようにふっと消え、辺りに再びうだるような熱気が戻ってきた。





「地元メディアの情報によると、消息を絶った旅客機はコロンビア南部のジャングルでアラクアラ川付近に墜落したとみられています。偶然地上から目撃した人の話では、爆発音がして機体から火が出たとの事です。なお、この便に乗る予定だった大統領候補の……」


 コロンビアの首都ボゴタの外れで、通りには、エンパナーダを売る店先に設置されたテレビが最新のニュースを流している。とうもろこしの粉から作った皮に、肉、じゃがいも、そしてチーズと野菜を詰め焼いたものを手に持ったまま、一人の男がニュースを見続けている。

 話題の切り替わったテレビに背を向けて店を出た男は、雑踏を縫って歩き始めた。エンパナーダを掴んでいない手に持つ携帯を耳に当て、


「失敗だ。奴は乗っていなかった。……そんな事知るか。こうなったらまだるっこしいのは止めだ。直接殺るぞ」





 二頭の獣を連れて細い路地に忽然と現れ、大通りに出ようとしている少女がいる。


「ワイナ」


 雑踏を前にした少女は、傍に従っているジャガーをそう呼び、細い腕で何やら指示を出す。

 指示を受けたジャガーのしなやかな肢体が、人気の無い天幕の影にすっと入る。すると反対の端から、剣を携えた端正な若者が覆いを広げ姿を現した。只ならぬ気配に気が付き、立ち上がって吠えかけた犬は、その若者の一瞥に首をすくめて尻尾を丸め唸るのを止めた。

 ワイナと同じように少女に付き従っていたゴリラの方は、いつの間にか猛々しい戦士の姿になっていた。その背中に背負っている大げさな武器を目にした少女は、少しため息をついたように見える。戦士は現れるなり自分の胸をドンドン叩き始めたのだ。


「トゥパック、大人しくしていなさい。人間に変身したら自分の胸なんか叩くんじゃないの。それから勝手に騒ぎなんか起こしたらただじゃ置かないからね」

「…………」




「ここは大統領候補が殺害された広場よ」


 少女と二人の剣士はボゴタの広場に来ている。しかしその時少女の顔に影が浮かんだ。


「貴方が殺された大統領候補ね」


 少女が前に伸ばした手の先には陽炎のような揺らぎが現れている。大統領候補の霊魂である。


「貴方は密林の秩序を保とうとしていた。緑の森にすむ生き物たちの密猟を防ごうとしていたのは理解しているわ」

「…………」

「仇は必ず取ってあげる。密猟者も、麻薬組織も、森を焼く者たちも――私たちの森をこれ以上脅かすものは容赦しない」

「おい、お前たち、そこで何をしている」


 突然数人の警官が三人を取り囲んだ。


「…………」

「ここではお前たちのような不審人物は取り調べをする事になっている。襲撃事件があったばかりだからな」


 警官がワイナの剣やトゥパックが背中に背負った剣を見ている。その時少女の手が前に伸びた。少女が古い森の言葉で呟く。


「アラヴォアラ・シスヴァー……亡くなった者の霊に従うがいい」

「……あっ……」


 威勢のよかった警官らは、夢遊病者のように棒立ちとなった。


「あなた方は襲撃犯の殺害に関わった警官ね」

「…………」

「今から私たちを雇い主のところまで案内しなさい」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ