採用担当は私!?
すこし長いです。
私はどこにいるでしょう〜か!
正解は事務所の大きい部屋!
ここで何をするのか。
答えはドアに貼ってある紙に書いてある。
〈第二次審査〉
ここは新しくバビンスにできた音楽レーベル「フローレス」の第二次審査、つまり面接会場である。
ちなみにこの「フローレス」という名前は格好いいが、込められた意味がえげつない。
フローレス。英語で「欠点のない」「完璧な」という意味がある。
フローレスの目標は一つ。欠点のない音楽レーベル。
常に欠点のない完璧な音楽をやること。
これ以外に求めるものはない。以上。
てなわけで、私は社長に言われて第二次審査と第三次審査の審査員をすることとなった。
なんでも、あんたがプロデュースするチームなんだからメンバーを選ぶのは当然のことだろ?というのだ。
社長にはあの会議の後呼び止められてこんな会話をした。
「なんで輪廻さんにこんな勝手なことをしたかわかりますか?」
「わかりません」
「私は輪廻さんに趣味ではなく『本気』で音楽をやってほしい」
「それと新人のデビューに何の関係が?」
「新人を指導すれば音楽に妥協出来なくなると考えたんです。あなたのオリジナル曲『情景』を聞きました。紹介で『今後の活動を代弁しているような曲』と言っていましたね?聞いたとき、今後も楽しく活動してくよ〜と私はそのように聞こえました」
確かにそのように歌った。だって音楽は『趣味』だから。
「私は本気の輪廻さんを見てみたい。『私の音楽に勝るなんて百年早いわ!』と笑顔で煽るあなたを見てみたい。だからちょっと強気に出たんです」
「あなたの過去なんて私にはわかりません。どんなに辛い思いをしていたのかなんてあなた以外の人には関係ないでしょ?早くその壁乗り越えてくれませんか?」
確信した。私は社長の押しと煽りにめっぽう弱いらしい。
「上等だ!やってやるよ!」
部屋のドアからノック音が三回。
「お入りください」
「失礼します!」
入ってきたのはロングヘアに高身長の女性。
スタイルはめちゃめちゃいい。
フローレスの応募条件には女性のみ。音楽に真剣でプロを目指す方という二つの項目しかない。
一次は書類審査だからどんな容姿をしているかは見えない。
流石一次に残った精鋭と言える。なんか書類の時点で光るものが見えたんだろう。
ちなみに応募は六千五百件あった。一次で七割を落とした。
指示をしたのは私。やったのは一次の採用担当者さん。
基準は向上心があるか否か。
なんでもいい。自分は努力できる。本気でプロになりたいと感じられた人。
一見難しい採用基準だが、意外と文章や書き方に出るもんだ。
フローレスに向上心がない奴などいらない。
「自己紹介と特技と苦手なことを教えてください」
「はい!七海愛花、二十歳。特技は——」
「はい。有難うございました。三次審査は一週間後です。なので十月十日ですね。同じ時間同じ場所で行います。がんばってくださいね」
「!?!?あの!私合格なんですか?」
「はい。なので次は三次審査です」
「てっきり通知は後日かと思いました」
社長には君が決めていいと言われている。
オーディション形式も何もかも。社長は最低限の介入。
こんなに私を信用するんですか?と聞いてみたんだが、あなたは音楽がわかる人だからそれが一番いいと返された。
勝手に期待しすぎだっつ—の!
こんな調子で二次審査は捌いていき、三次審査当日。
実はもうメンバーは決まっている。二次審査で勝ち残った四人。
じゃあこの三次審査は何のために設けたのか?
個人の覚悟を問うためである。
三次審査に歌唱テストを行う事務所は多い。音楽に力を入れているならなおさら。
でも、歌唱がうまくないとしてもどうせこのチームに入ったら嫌という程ボイトレをする。
楽器?引けないからってなんだ?どうせ一通りやる。
作詞作曲が出来ない?知識は叩き込む。
要は誰にも負けない武器が一つあればいい。
よって面接の質問はたった一つ——
「あなたは音楽のためにすべてを手放すことが出来ますか?」
三次審査で不合格になったものは一人もいなかった。
三次審査から一週間。
事務所で新人の顔合わせを行う。
最近忙しくて全然配信はできてないけど、曲は出してるし、歌ってみたも出している。
リスナーには『輪廻の曲だけあればとりあえず生きてられる』と言われているので問題ない。
それにとある大事な用事があるので一ヶ月半は配信も曲も出さないと言ってある。
その期間が過ぎるまでは既存の曲を聴いて貰おう。
最近はすっかり新人に割く時間が増えた。
今の生活が思ったより楽しいと感じている自分に驚きを隠せない。
新人四人はとある部屋に集められている。
私は現在その部屋の前に立っている。
ノックを三回。扉を開けた。
「お久しぶりです。皆さん」
全員こちらを見つめる。そしてびっくりしている。なぜか?答えは簡単。彼女らの面接を担当した担当者が立っていたからだ。
「面接官さん?」
「だよな!あの面接官だよな!なんでこんなところにいるんですか?」
「おっと、この姿でははじめましてですよね?じゃあ改めて自己紹介を。バビンス所属四期生の鈴川輪廻です」
「「「「ええええええええええ!」」」」
全員が驚愕の表情をしている。まあ予想はしてた。
「面接官さんが私達のプロデューサーの輪廻さん?」
最初に口を開いたのは七海愛花さん。
彼女は二次審査でとても印象に残った子だ。なんせ特技があれだからな。
「そうだ。それと私のことは輪廻先輩と呼んでくれ。デビュー後は配信やらコラボで先輩とたくさん絡む、今のうちに慣れとけ。敬語も忘れずに」
「じゃあ、輪廻先輩?今日は顔合わせってことですが、私達はこれからどうするんですか?」
「いい質問だ。やることは終わっている。もう帰ってもいいが連絡事項が二つ」
「連絡事項?」
「一つ目、契約の詳細は明日の三時に行うそうだ。契約書はちゃんと読むこと」
「二つ目はなんですか?」
「デビュー前に合宿をする」
「が、合宿……?」
「君らは自分の音楽が何点だと思う?」
「五十点ぐらいですかね……?」
答えたのは広野穂華。
「答えは零点だ。理由は武器が一つしかないから」
「それは……でも!武器が一つって十分じゃ…」
「君らが所属するレーベルの名前は『フローレス』という。英語で欠点のないという意味だ。歌がうまかろうと楽器は一通り触ってもらうし、作詞作曲の基本は叩き込むつもりだ。音楽はすべて一通りの知識や技術があると自分の武器に磨きがかかってより強力になる。決してみんな同じになるようなことはない」
「ていうことで合宿は三日後。私の家で行う。家は広いから気にすんな」
もちろん社長の許可は取ってある。
異論はないみたいだ。
新人は知る由もなかった。鈴川輪廻がスパルタ式を軽く越え、自分たちに魔改造を施そうとは——
楽しんでいただけましたか?
2日書かなかったからなのか反動がやばい。




