22.再出仕
朝夕が涼しくなる頃、私は再出仕する事になった。女房五人を引き連れて。
いや、多すぎでしょ!乳母宣旨さんだってそんなに女房抱えてないよ!
悪目立ちするからと養父に伝えたが、「少ないくらいだ。」と返された。
宮中に着いて、何故か宣耀殿に通された。
梨壺は改装中なの?その割に見知った女房仲間がいない。一体どう言う事なの。
釈然としないまま時間だけが過ぎてゆく。陽が傾き始めると、女房達が「御支度を」と私の髪を漉いたり調度の確認をしたりと、落ち着かない様子だ。
夜になり、そろそろ寝るかと思っていると、東宮様がいらっしゃった。
「久しいな。」
「お久しぶりにございます。こんなみっともない姿で失礼いたしました。」
寝るつもりだったので、小袖一枚だ。慌てて正座して、礼をした。
「何を言っている。こっちに来い。」
今日も添い寝か。やはり梨壺は改装中なのだな。
「やっとだ。」
そう言って、ぎゅうと抱きしめられた。
それから、そっと口づけされた。
「なっ、なに?なんで、えっ?」
「なんでって…私の妃になったのだろう。」
はあぁぁっ!?きっ、キサキ??妃!!
私が目をシロクロさせていると、
「お前、私の好意に気付かなかったのか。」
ジト目で言われてしまった。
「いや、その、楽を好む、えっと、同志のつもりでおりました。」
はぁ〜とため息を吐かれてしまった。
「申し訳ありません。」
梨壺は改装中ではなく、ここが私の殿舎らしい。御匣殿の役職も女房としてではなく、妃として与えられたのね。なるほど〜。
私が一人で納得していると、
「…いや、言わなくてもわかれなどと、私が傲慢だった。」
東宮様は私の手を取って、
「私はお前を好いている。そばにいて欲しい。」
まっすぐに伝えてくれた。
誠実な方だ。女房身分のまま手を出しても許されるお立場なのに、私の事を慮って妃として迎えて下さった。
胸がぎゅっと苦しくなって、涙が出そうだ。
「私も東宮様のお側にずっといたいです。」
するっと言葉が出て来た。きっとそれが私の答えだ。そうと決まれば腹を括るのみ!
私は東宮様に飛び込んだ。
「なっ!トカゲ!本当に突拍子の無い奴だな。」
文句を言いつつ、笑っておいでだ。
「東宮様はこれからもトカゲ呼びするおつもりですか?私は御匣殿になりましたが。」
そう聞くと、
「妃をトカゲ呼びはまずいか。そう言えば、本当の名を聞いていないな。」
「私は…梅と申します。」
そうなのです。私の本名は梅なのです。ちなみに姉は松、兄の幼名は竹若、松竹梅兄妹です。
「そうか、梅か!それで梅の花が好きなのだな。合点がいった。」
形よし、香りよし、食べても美味しい、がお気に入りなのはヒミツにしておこう。
「私は、重明だ。…二人きりの時は名を呼んでくれないか。」
「はい。…重明様」
ちょっと照れる。でも東宮様が嬉しそうなので良かった。
結婚しない為に女房になったのに、不思議な縁で東宮様と結ばれた。私も姉の様に嫉妬に苦しむかしら?
でも今は、
「私も重明様をお慕いしております。」
こうして、私は東宮様の妃になったのでした。
めでたし、めでたし…?
読んで下さった皆様、ありがとうございました!
これにて、一旦完結とさせていただきます。
不定期に番外編を更新予定です。
よろしくお願いします!




