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20.帝

帝の元に行くなど、ないないない。

しかし、帝の申し出にキッパリNO!を突きつけてもよいものか。いいわけがない。社会的に死亡してしまう。

やんわりと断る!これに限る。

私は笑顔を作り、


「私如きに有難くも勿体無いお言葉です。身に余る栄誉ではありますが…」


「なんだ、朕より東宮がよいのか?朕の方が良い男であろう。東宮よりそなたを楽しませてやるぞ。」


なんかセクハラ入ってない?

どちらが良い男かは知らないが、どちらが良き主かはわかる。


「私は既に仕える主を決めております。」


ヤバい、キッパリ断ってしまった。


「はっきり言うではないか。なかなか気の強い女子(おなご)だ。嫌がる女を思い通りにいたすのも悪くはないが、東宮が怒るであろうな。」


帝、すっごい不穏な事仰ってない?


「院も東宮も一人の女人に執着しておる。朕にはその心が図りかねる。そなたにはわかるか。」


わかりません。


「東宮様のお気持ちを察するなど、私如きが畏れ多い事です。ただ、東宮様とは好みが通じる部分があるのかと存じます。」


趣味、音楽。これですよ。単に音楽仲間なだけだ。


「ふむ、好みか。確かに東宮は楽を好んでおったな。」


納得して下さったようだ。


「東宮は女の嗜好が変わっておると思っておったが、そちとは好みを共にする同志であるのだな。」


ご理解頂けたらようで、よろしゅうございました。




帝の御前を辞し、梨壺へ戻るとすぐに東宮様より呼び出された。

強張った表情で私を上から下まで眺めてから、ふぅと一息つかれると、


主上(おかみ)はなんと?」


「東宮様と私の仲を誤解しておいででした。『院も東宮も一人の女人に執着しておる』と。主上はそれが理解できないと仰せでした。」


「その様に仰せであったか。…院は皇太后様をご寵愛されているからな。主上も思う所があったのだろう。」


東宮様は何か物思いに耽っているご様子だった。




御前を下がり、局へと帰る道々に考え込んでしまった。


皇太后様はお子をお産みになられなかったが、それでも院の強い希望で当時中宮へと立后された。院が不遇な時に皇太后様が寄り添われたからご寵愛が深いのだと、巷では美談として流布している。


寵を受ける者。寵を受けられない者。皇子を産みながら中宮になれなかった女御様方はどの様にお感じになられたのだろう。

まさか姉の様にヒスを起こして失神!なんて事はないだろうけど。


尊き方々にも色々おありになるだと思うのだった。




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