残る傷跡、始まる道
冷たい鋼の感触がようやく喉から消えたとき、マリー・レインストンは恐る恐る肩越しに振り返った。その視線は、同じく前方を注視していたルシエルの視線を追った。そして、通路を歩いてくるケイレブの姿を捉えた。彼は走るのではなく、むしろ不気味ささえ感じさせる、落ち着き払った規則正しい足取りで進んでくる。
10フィートほどの距離でケイレブは立ち止まった。低く、しかし厳しい声で彼は言った。「マリーから離れろ」
マリーは一歩後ずさった。一瞬、ルシエルが本当に従うかもしれないという馬鹿げた考えが頭をよぎった。しかし、ルシエルの視線がマリーに移ると、彼女は毅然とした態度を取り戻した。短剣を固く握りしめたまま、さりげなく腕を組む。
「私がどこに立とうと、関係ないはずよ」と彼女は言った。
ケイレブがもう一歩踏み出した。「俺には関係ある」
ルシエルの鋭い視線が彼を射抜いた。「あなたは介入できない。ルールは知っているはずだ」
彼は臆することなく言い返す。「近頃、そのルールはずいぶんと柔軟になっているように見えるがな」
ルシエルはわずかに眉をひそめた。「興味ないわ。どちらにせよ、私は報酬を約束されている」
「だが、代償なしではない」ケイレブは言い返した。
マリーは完全に混乱し、彼らの謎めいた会話を理解するのが難しかった。しかし、ケイレブに全幅の信頼を寄せていた彼女は、彼らの話が何であれ、それがケイレブに有利に働くことを願いながら、彼をじっと見つめていた。
『あなたは天使なの?』 マリー自身の問いが心によみがえる。彼女はケイレブから、いつも黒い服をまとっているように見える少女、ルシエルへと視線を移した。彼が天使なら、彼女は間違いなく悪魔だ。
ため息をつきながら、ルシエルは腕を下ろし、持っていた短剣を弄び始めた。
彼女は言った。「疲れたわ」「ただ、もう終わらせたいだけ」
呆然として、マリーは見つめた。その言葉は、彼女がルシエルに何度も投げかけた言葉だった。しかし、それは自分自身の痛み、自分自身の終焉を言い表すためだけのものだとずっと思っていた。ルシエルが二人、つまり自分たち両方のことを指していた可能性など、考えたこともなかった。
ルシエルはケイレブから顔を背け、弄んでいる刃を見つめた。無表情のまま、安定した手つきで、彼女は短剣を空中に放り投げ、驚くほど軽々と受け止める。時には鋭利な刃を、時には柄を。
ケイレブはさらに一歩踏み出し、マリーに近づくためにわずかに体を傾けた。一方マリーは、ルシエルの手の中で流れるように動く刃をまったく信用できず、身じろぎもせずにいた。
「これには二つの終わり方がある」とケイレブは言った。
ルシエルはちらりと彼に目をやってから、再び輝く短剣に視線を戻した。「あなたが勝つ方法は一つしかないわ」
「それは違う、お前も分かっているはずだ」彼は主張した。「まだ時間はある。すべては赦される」
短剣の回転が止まった。ルシエルがケイレブを見上げると、その体はわずかに震えていた。マリーは短剣の柄をさらに強く握りしめ、指の関節が白くなるのを感じた。
「あなたが言うのは簡単よ」彼女は吐き捨てた。「あなたはいつも特別扱いだったから」「私たちの中には、この定命の領域に足を踏み入れる前から見捨てられていた者もいるのよ」
ルシエルの目がマリーの目と合ったとき、マリーはびくっとした。「この子は生まれるずっと前から呪われていた」
「それは呪いではない」ケイレブははっきりと言った。「ただ諦めることを拒む者たちがいるだけだ」
「お願いだから」ルシエルは嘲笑した。「あなたが見てきたのは白と黒、善と悪だけ。そんなに簡単なことじゃないのよ」巨大な十字架に向き直ると、彼女の声のトーンが上がった。彼女がマリーの隣に膝まずくと、マリーは恐怖に駆られて後ずさった。
あざけるような仕草で、ルシエルは両手を組んだ。「親愛なる天の父よ、私の犯したすべての罪を赦したまえ。私が耐え忍んだアビスを赦したまえ。あなたが私に与えたすべてのクソみたいな仕打ちを赦したまえ」彼女はマリーに目をやった。「一体何があなたを続けさせるの? これがまた繰り返されるだけなのに?」
マリーが答える前に、ルシエルは彼女の無傷の右手を掴み、手のひらに新たな切り傷をつけた。
マリーは悲鳴を上げて逃れようとしたが、ルシエルの拘束は解けなかった。彼女はマリーの指を傷口の上で拳に握らせ、血が滴り落ちるまで強く握りしめた。
「これがあなたの望む人生なの?」ルシエルは迫った。
マリーは歯を食いしばり、手を振りほどこうともがきながら涙を流した。
どこからともなく現れたケイレブが、ルシエルの肩を掴んで引き離した。
「もうやめろ、ルシエル」彼は言い放った。
ルシエルが彼女を離すと、マリーは急いでケイレブの保護的な腕の中に戻った。彼は彼女が立ち上がるのを助けると、自らの体で彼女を守るように前に立った。
ルシエルは床から顔を上げた。その表情は穏やかだった。「最初に彼女を傷つけたのは私じゃない」と彼女は無感情に言った。
「お前はこんなことをしてはいけない」ケイレブは言った。「結果に直接影響を与えることは許されていないはずだ」
ルシエルは優雅に立ち上がった。「それに、この子は一人で戦わなければならない。あなたはいつもそう言っているじゃない?」
それに対し、ケイレブはためらうことなく言った。「彼女がお前と戦う必要はない」
ルシエルは一歩下がり、その視線は礼拝堂をさまよった。黒いステンドグラスの窓、揺らめく蝋燭の炎。やがて、その目は十字架に戻った。その時初めて、マリーはルシエルの首に常にかけられている十字架に気づいた。黒いジャケットに対して、それは際立つ銀色だった。
「父よ、お赦しください」と彼女はつぶやき、マリーは彼女が泣き出すのではないかと思った。彼女はジャケットに手を入れ、小さなリボルバーを手に取り出した。
「私は罪を犯しました」
銃口はまっすぐにマリーに向けられていた。銃声が教会中にけたたましく響き渡る直前、彼女は銃身から閃く小さな炎の舌を見た。
ケイレブが横に飛び出すのが見えた。弾丸の軌道から彼女を完全に遮るための動きだった。
衝撃で彼は後方に弾き飛ばされたが、すぐにまた前につんのめった。驚くべき一瞬、時間が止まったように感じられ、そしてケイレブは膝から崩れ落ちた。
「いや」マリーは、今起きたことを理解しようと苦しみながら言った。彼の頭がぐったりと彼女の肩にもたれかかる。彼女は腕を伸ばして彼の肩を抱き、彼の落下を和らげ、共に床に沈み込みながら彼を抱きしめた。
「いや」彼女は再び言い、恐怖に満ちた目で彼の胸を見つめた。左側には黒い穴が開き、みるみるうちに赤い染みとなって広がっていく。彼女は流れを止めようと、最後の望みをかけて無意識に傷口に手を当てた。
マリーはルシエルの方を向いた。彼女は片手にリボルバー、もう片方の手に短剣を持ってじっと立っていた。その顔には何の表情もなかった。
「何てことを……?」マリーが絞り出すように言ったその言葉は、詰まったささやき声だった。叫び、怒りたかったが、声は彼女を見捨てていた。
彼女の目はルシエルの黒い瞳と交わった。「ほら」と言って、彼女は短剣を投げた。それは石の床を滑り、マリーの前で止まった。
「元に戻しなさい」
マリーは刃を掴んだ。その視線は、手に持った短剣から目の前の女へと移った。彼女を殺せるかもしれない。その考えは、頭の中で燃え盛る石炭のようだった。
彼女は立ち上がりかけた。
「だめだ」ケイレブがささやいた。
マリーはすぐに再び膝をついた。「話さないで。助けを呼んでくるから」彼女はルシエルに獰猛な視線を送った。「用事を済ませたらすぐにね」
「だめだ」ケイレブは苦しげな声で繰り返した。「彼女を殺してはいけない」
マリーははっとした。彼の傷がおそらく致命傷であることは分かっていたが、彼女は医者ではなかった。彼にはすぐに助けが必要だったが、自分が助けを呼ぶ間、ルシエルがただ待っているはずがないと確信していた。
「どうして?」マリーは食い下がった。「目には目を、よ」「第一の契約だわ」
ケイレブは首を振った。「俺が彼女の機会を奪った。彼女にはもう他にできることがないんだ」彼は手を伸ばし、優しく彼女の手を見つけた。「君を助けると約束しただろう。君が耐えられないほどの試練は与えられない」
彼女の怒りは静まり、代わりに悲しみの波が押し寄せた。声を詰まらせながら、彼女は言った。「助けを呼んでくる」
彼の唇にかすかな笑みが浮かんだ。「本物だと言っただろう」と彼はささやいた。「大した天使様だ」
マリーの目に涙が溢れた。「死なないで。やっと、私の祈りが届いたのに。今、私と一緒にいてくれなくちゃ」
ケイレブは指を動かし、優しく彼女の顔を包み込んだ。「私は自分の役目を果たした」と彼は言った。「義務を果たし、約束を守った。君は強い。これからの君の旅は、もっと楽になるだろう」
彼女は彼を抱く腕に力を込め、首を振った。「まだどうすればいいのか分からない。一人になりたくない」
彼は彼女の目を見つめ返した。彼の茶色の瞳がマリーの瞳を捉えると、彼女は黙り込み、深い静けさが彼女を包んだ。その瞳には苦しみはなく、ただ愛と、深く微かな思慕だけが宿っていた。まるで生涯ずっと知っていたかのように、その瞳が馴染み深いことに彼女は再び驚かされた。
磔にされる救世主の夢を見た。その記憶が稲妻のように彼女を貫いた。まさにその最期に、彼女は救世主の目を見つめていた。ケイレブの目は、あの目だった。同じ目。
「あなたは、天使なのね」と彼女は息を吐いた。
ケイレブは再び微笑んだ。「ならば、私は常に君と共にいる」
彼が目を閉じ、苦しげな息を吐くと、一瞬の痛みが顔をよぎった。再び目を開けると、彼はささやいた。「忘れるな、マリー」「信念は石よりも強固だ」
そして、彼は言葉を止めた。
マリーは彼の上に身をかがめた。最後の平静が突然崩れ去り、純粋な苦悩の洪水が彼女を襲った。彼女は彼をさらに強く抱きしめ、自分の膝の上に引き寄せ、動かなくなった彼の体を抱いた。
「さあ、終わらせるつもり?」
マリーははっと顔を上げた。悲しみは怒りへと変わっていた。
ルシエルは元の場所に立ったまま、いらだたしげに足で床を叩いていた。「さあ」と彼女は言った。「怒りを解き放ちなさい。この苦しみから自分を解放するのよ」
マリーはそっと彼の体から抜け出し、ケイレブを床に横たえた。彼女は立ち上がり、短剣はまだ手に握られていた。
ルシエルは促すように頷いた。「そうよ。さあ、私を殺して」
マリーは下に横たわるケイレブに目をやった。彼女は自分自身を疑い始めていた。彼は彼女を殺さないようにと警告していた。
『俺が彼女の機会を奪った』
手に持ったナイフを検分した後、彼女はルシエルが脇にだらりと提げているリボルバーにちらりと目をやった。もしルシエルがずっと彼女を殺すつもりだったのなら、なぜ今、その仕事を終わらせようとしないのだろう?
「さあ、マリー」ルシエルは必死の口調で要求した。「もう終わりにしましょう。私を殺して!」
マリーは十字架の方を向いた。
『父よ、彼らを赦したまえ。彼らは何をしているのか、分からずにいるのです』
救世主の、最後の、時を超えた言葉。彼は決して報復を望まなかった。
突然、すべてが腑に落ちた。
「あなたは私を殺せない」マリーは言った。その声には新たな確信が響いていた。
ルシエルは顔をしかめた。「何ですって?」
「あなたは私を殺せない」マリーは繰り返し、一歩前に出た。「それは許されていない。あなたが勝つ唯一の方法は、私にあなたか、私自身を殺させること。どちらの選択肢も私を地獄に落とし、私の魂を破滅させる」
「復讐したいでしょう、マリー」ルシエルは甘美な口調で言った。「あなただって、私がそうであるように、ここにいたくないはずよ」
「それで、あなたの約束された報酬は何?」マリーは尋ねた。「アビスからの自由通行証?」
ルシエルはたじろいだ。「何のことか分からないわ」
マリーが手から短剣を放すと、静寂の中にカランという音が響いた。「平和に、幸せに生きなさい」と彼女は言った。「報酬がなくなった今、あなたはもうそれほど死に急ぐことはないでしょう」
彼女は背を向け、蝋燭に照らされた通路を歩き始めた。
「マリー!」ルシエルが彼女を呼び止めた。
マリーは立ち止まり、再び肩越しに振り返った。
ルシエルは一瞬言葉に詰まり、普段の冷静で抑制された態度が崩れた。「無よ」
マリーは理解できず、眉をひそめた。
「無」ルシエルは震える声で言った。「それが私の報酬。アビスでも、天界でもない。完全な無」彼女は唇を噛んだ。「アビスには戻りたくない」
マリーは彼女をまっすぐに見つめた。「ならば、あなたの罪から立ち返りなさい。今すぐに。『信念は石よりも強固だ』」
そして、背後から追ってくる叫び声と罵詈雑言が夜の静けさに消えていく中、マリーは再び背を向け、礼拝堂を後にした。




