この先の道は暗い
マリーは自宅にたどり着くと、ドアを開け、背後で固く閉ざした。どうにか平静を取り戻そうと、冷たい木の扉に背を預け、恐怖に引きつった荒い呼吸を繰り返す。
「あの子は私に何もできない」。それは真実ではない。こみ上げてくる恐怖の波に抗うため、マリーは心の中で「信念は石よりも強し」という言葉を繰り返した。しかし、その言葉は空虚で、何の慰めにもならなかった。何かが起ころうとしている、と腹の底で警鐘が鳴っていた。
差し迫る災厄の感覚を振り払うように、マリーはドアから身を離した。靴を脱ぎ、聖域である自室へと続く廊下へと向かう。その時、新たな事実に彼女は気づいた。家の中が異様なまでに静まり返っているのだ。
いつもなら、両親はもう帰宅している時間だ。しかし、彼女は放課後のミサをさぼったため、いつもより早く家に着いていた。父親に欠席のことで説教されずに済むのだから、この静寂はむしろ好都合かもしれなかった。廊下を歩きながら、いっそ一度外へ出て、ちょうど良い時間に戻ってくれば、いかなる対立も避けられるのではないかと、ふと思った。あるいは、これは不幸中の幸いというものかもしれない。これ以上、波風を立てることは望んでいなかった。
自室に着くと、マリーはバックパックを床に落とした。再び外へ出ることも考えたが、その考えだけで体が激しく震えた。脅迫同然だったルシエルの最後の言葉が頭から離れない。家の中にいる方がずっとましだった。
どうしていいかわからず、絶え間ない不安感に駆られ、マリーはリビングルームへと引き返した。マントルピースの上の時計に目をやる。時刻は三時五〇分。いつもなら、四時少し前に帰宅する。両親がいてしかるべき時間だった。
マリーは突然の、恐怖に満ちた直感に突き動かされ、ガレージのドアへと歩み寄り、それを開けた。
二人の車は、両方とも中に停まっていた。
パニックに飲み込まれそうになるのを、必死でこらえた。理にかなった説明があるはずだ。近所を散歩にでも出かけたのかもしれない。
あるいは、そもそも家から出ていないのかもしれない。
マリーは踵を返し、廊下を戻ってリビングを通り過ぎ、客用のバスルームと自分の寝室を通り過ぎ、主寝室の前に立った。ドアは少しだけ開いていた。ノックしようと拳を握ったが、考えを変え、そっとドアをさらに押し開けた。そして、中へと頭を覗かせた。
二人はそこにいた。まだ、そこにいた。ただ昼寝をしているだけだ。マリーの立っている場所から、大きなベッドの上に横たわる母親の体のシルエットが見えた。彼女はドアを完全に開け放ち、部屋の小さな玄関スペースへとおそるおそる足を踏み入れた。
今度は、ベッドの向こう側にいる父親の姿も、そして母親の姿も、よりはっきりと見えた。しかし、その部屋にはもう一つ、何かがあった。そこにあるべきではない、何かが。
最初、彼女の心はそれを理解するのに苦労した。両親のベッドはいつも真っ白で清潔な掛け布団で覆われているのに、今見えているものは赤と白だった。新しい毛布だろうか?
違う。もう一歩踏み出したマリーは、両親もまた赤に染まっていることに気づいた。掛け布団だけではなかったのだ。
それは、忌まわしいほどに見覚えのある光景だった。
自分の白い羽毛布団の上に散らばっていた、無残な鼠のことを思った。そして、庭にいたカラスのことも。両親の顔をより詳しく見るまで、その繋がりには気づかなかった。
母親は、虚ろな目を見開いて天井を見つめていた。父親の目は閉じられていた。しかし、彼女を恐怖させたのはそこではなかった。二人の額には、複雑な十字の模様が刻まれ、そこから細い血の筋が流れていた。
その印に、マリーは見覚えがあった。
思わず、二人の手に目を落とす。掌には、血まみれの gaping hole が穿たれていた。足を見なくても、どうなっているかはわかっていた。
ついに、彼女は全ての赤の源を理解した。それは血だった。彼女の両親の、血。
マリーは背後のドアを乱暴に閉め、逃げ出した。逃げることに必死で、何も考え、処理することができなかった。リビングルームに真っ直ぐ駆け込み、急停止する。そこには、すでに別の誰かがいた。
「言ったでしょ」部屋の向こうから、ルシエルが呟いた。
マリーの口は開いたが、音は出なかった。体中が震え、自身の血が耳元で狂ったように脈打つのを感じた。
「何を言ったの?」ようやく、マリーは囁くことができた。
「事態は悪化するだけだって言ったのよ」ルシエルは冷たい声で答えた。「でも、あなたは信じなかった」
「でも、どうして?」マリーはよろめいた。「何が起こったの?どうして両親がこんなことに?」
ルシエルは眉をひそめた。「それも、もう言ったはずよ」
マリーの下唇が制御不能に震え、頬を涙が伝い始めた。「何を?」
ルシエルは芝居がかった、焦れたようなため息をついた。「ずいぶん前に、終わらせなさいって言ったでしょ。病院で目を覚ました、あの夜に。こうなるって、わかってたのよ」
マリーは一歩前に踏み出した。恐怖と悲しみに、怒りが混じり始める。「何が起こるって?あなた、何をしたの?」
「ケイレブだって警告したじゃない」ルシエルは偽りの同情的な口調で言った。「あなたは他の子たちより影響力が強いって。あなたの聖痕の原因は何だと思ってるの?普通なら、もうとっくに死んでるはずなのよ」
その言葉はマリーの肺から空気を奪い、物理的な一撃のように彼女を打ちのめした。「でも、私の両親が…これがどうして両親に関係あるの?」
「あなたが生き延びたから、均衡が崩れたの。だから、あなたの代わりに彼らが死んだ」。ルシエルは言葉を切り、マリーの鋭い青い瞳を覗き込んだ。彼女は二人の間の距離を詰め、すぐ近くに身を寄せた。「まだ、この贈り物を持ち続けたい?」
嗚咽がマリーの喉から迸り、彼女は後ろに飛びずさった。「欲しがったことなんてない!」
「なら、今すぐ終わらせなさい」ルシエルは厳しく、事務的な口調で言った。「あなたが物事を正せば、両親は戻ってこれる。死は、彼らのためのものじゃなかった。あなただけのものだったの」
嗚咽は今や波のように押し寄せ、マリーの全身を揺さぶった。彼女は息を呑み、「でも、怖い」と絞り出した。
「何が?」ルシエルは嘲笑した。「まだ神を信じてるのかと思ったわ。まあ、どっちにしろ、あなたの主は気になんてしてないって、言ったでしょ。そうでなければ、どうしてあなたにこんな重荷を負わせるの?彼は、他の者たちを無知のうちに死なせておきながら、あなたには選択の苦しみを与えるのよ」。ルシエルは言葉を止め、不安そうに周りを見回した。彼女はマリーの肩に手を置き、その言葉は共謀者の囁きへと変わった。「本当は言うべきじゃないんだけど、あなたが苦しんでいる唯一の理由は、あなた自身でそれに終止符を打つためなの。あなたが苦しむのを見るのは耐えられない。でも、本当は、あなた自身でこの結論に達するはずだった。他の誰もあなたのことなんて気にかけなくても、私は気にかけてる」
マリーの涙が少し引いた。「両親が…戻ってこれるの?」
ルシエルは頷いた。「均衡が取り戻されればね」。彼女は背後からもう一方の手を出した。そこには、キッチンブロックから取ってきた大きなナイフが握られていた。彼女はそれを、マリーの震える手のひらに押し付けた。「これで終わりよ。今度こそ、正しくやりなさい」
ルシエルは一歩後ろに下がった。マリーの視線はナイフから、前腕に沿って走る細いピンク色の傷跡へと移った。
「だめよ」ルシエルはため息をついた。「そこじゃない。前回はそれで失敗したでしょ?」
マリーが顔を上げると、恐怖は不気味な好奇心へと変わっていた。ルシエルは自身の顎の下のくぼみに触れ、喉を指し示した。「ここから始めて」彼女は穏やかに言った。「そして、あちら側へ引きなさい。その方が簡単で、早いわ」
マリーの口がぽかんと開いた。恐ろしい考えだった。それでも、彼女は物事を正さなければならなかった。素早く、決定的に。もう病院はごめんだった。
震える手で、彼女はナイフの先端を喉元へと持ち上げ始めた。ルシエルは小さく励ますように頷き、瞬きもせずに見つめていた。
「マリー、やめろ」
滑らかで、落ち着いた声だった。マリーの手が凍りついた。開いた戸口に、ケイレブが立っていた。彼の茶色い瞳はいつもより大きく見開かれていたが、その表情は揺るぎなかった。「やめるんだ、マリー」彼は家の中に入りながら、再び言った。
「やらなきゃ」彼女はためらいがちに言った。「私が、均衡を崩したから」
ケイレブの視線はルシエルへと移ったが、彼の言葉はマリーに向けられていた。「マリー、違う。僕が言ったことを思い出して。全てが見たままとは限らない。これは、現実じゃない」
マリーは用心深くナイフを下げた。「何ですって?」
「ダイニングテーブルを見てごらん、マリー」ケイレブは囁いた。彼の声は、混乱の中にあって心を落ち着かせる存在だった。彼女は、それに従わざるを得ないような気がした。
マリーは、互いに睨み合うルシエルとケイレブの間を駆け抜けた。テーブルの上には、小さく折りたたまれたメモが置かれていた。
『会社の会合に行ってきます。六時に戻ります。愛を込めて、両親より』
まるで紙に焼かれたかのように、マリーはそれを落とした。そして、二人の元へと振り返った。「一体、何が起こってるの?」彼女の声は、恐怖と、困惑と、そして計り知れない、ほとばしるような安堵の奔流によって歪み、甲高い叫びとなっていた。
「私はただ、あなたを助けようとしただけ」ケイレブとの対峙から離れ、マリーを睨みつけながらルシエルは言った。「それなのに、あなたは何てことをしてくれたの」
「マリー」ケイレブの声が、不意に切迫したものになった。「家から出るんだ。今すぐ」
ケイレブの尋常でない警戒心に背中を押され、マリーは躊躇なく正面玄関へとよろめいた。彼女が二人のそばを走り抜けるとき、ケイレブはルシエルに向かって一歩踏み出したが、マリーは状況を考えるために立ち止まらなかった。ドアにたどり着き、それを勢いよく開けたが、不意に声に呼び止められた。
「マリー、どこへ行くの?」ルシエルの声ではなかった。女性の声だった。
ドアノブに手をかけたまま、マリーはゆっくりと振り返った。廊下の突き当たりに、彼女の母親が立っていた。一瞬の、幻覚のような時間、マリーは全てが元通りになったのだと信じた。しかし、母親は手招きをしていた。その手から、何か黒いものが広葉樹の床にこぼれ落ちた。「まだ、何も正せていないじゃないの、お嬢さん」
「マリー、行け!」ケイレブの声が懇願した。「お願いだ!」しかし、マリーには母親と、その背後の影に見える父親のシルエットしか見えなかった。
父親の声が唸った。「こんな目に遭うべきだったのは、我々じゃない」
「現実じゃないんだ、マリー、思い出せ!」ケイレブの必死の声が響いた。
その時、ルシエルの狡猾な囁きが聞こえた。「マリー、どうして彼にわかるっていうの?彼は自分の都合のいいことしか言わない。あなたのことなんて考えてないわ」
「私たちはあなたを助けようとしたのよ!」母親の声のピッチが上がった。「助けたかったの!」
マリーは両手で耳を塞いだ。「やめて!」
「でも死ぬべきだったのは私たちじゃない!」と母親は叫んだ。
マリーは固く目を閉じ、開いたドアを駆け抜けた。敷居でつまずいたが、体勢を立て直し、歩道からその先へと、盲目的に走り続けた。
ブロックの半分ほど進んだところで、背後で、敗北した怒れる獣が憎しみを吐き出すような、背筋も凍る金切り声が空気を切り裂いた。その音は、ただマリーをさらに速く走らせるだけだった。




