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贖い主の目

マリーが意識を取り戻したとき、彼女は埃っぽい丘の中腹にいた。どうして自分がここにいるのか、その記憶は一瞬の戸惑いと共に霞んでいた。だが、道に目をやった瞬間、恐ろしい衝撃と共に記憶が蘇った。ぼろぼろの、土で汚れた服をまとった男が、肩にのしかかる木製の構造物の圧倒的な重みに苦しみながら、こちらへ向かってくるのが見えた。


男の姿が見えるやいなや、マリーの周りにいた群衆から一斉に怒号が上がった。それは激励の欠片もない、憎悪に満ちた鋭い叫びだった。その時になって初めて、マリーは自分が巨大な群衆の一部であることに気づいた。前方へと押し寄せる人間の塊、その一人ひとりが、侮蔑の言葉を投げつけるためにより良い場所を渇望していた。


マリーは何も言わず、悲痛な憐憫の情を目に宿し、よろめきながら通り過ぎていく男を見つめていた。彼は道中、すでに何度も倒れており、一度は助け起こされたものの、見物人たちの憐れみと勇気はすぐに消え失せてしまったようだった。彼女は同情の念と、彼を慰めたいという強い欲求に駆られたが、それが何にもならないことは分かっていた。彼の苦悶は群衆の娯楽であり、彼らの痛みに対する飽くなき渇望は明らかだった。


囚人が通り過ぎた後、マリーは群衆が前方へ殺到するのを感じた。抗うことのできない波に飲み込まれ、彼女もまた山頂へと引きずられていった。冷たい恐怖が彼女を襲った。頂上で何が待ち受けているかを知っており、その場にいたくはなかった。しかし、彼女を押し流す群衆の圧倒的な力が彼女の意志を打ち砕き、個人の願いなど無意味なものにした。


山頂に着くと、群衆は登ってくる間、嘲笑しか浴びせられなかった囚人の周りに集まった。やがて、重々しい十字架が地面に投げ出されるのを、マリーは黙って見ていた。人々は男を立たせたまま、彼のぼろぼろの衣服の残りを引き剥がした。その時から、見世物は本格的に始まった。


衛兵たちが男を取り囲み、群衆からは瓦礫や罵詈雑言が浴びせられた。偽りの王冠、すなわち、悪意を込めてねじられたギザギザの棘の輪が彼に示された。ある兵士が何かを言うと、群衆はどっと笑った。マリーはその言葉を理解できなかったが、その毒々しい意図は察することができた。「ヘブライ人の王に」と、彼らは棘の冠を見せびらかしながら宣言した。


王冠は情け容赦なく彼の額に押し付けられ、棘が頭皮に深く食い込んだが、彼は声を上げなかった。赤黒い血が目に染み込んでいく中、彼はただ瞬きをし、その顔には断固たる決意が浮かんでいた。苦しむ姿を見せて拷問者たちを満足させることを拒む、あまりにも尊厳に満ちた態度だった。


病的な好奇心に囚われ、マリーは見続けた。逃げ出したい、見るのをやめたいという自身の願いに反して、体は動かず、視線は恐ろしい光景に釘付けになっていた。自分の額がかゆみ始めたが、それを無視し、一心不乱に集中し続けた。冠が載せられた後、囚人は衛兵たちが彼の十字架を準備するのを無理やり見せられた。マリーは視界の隅で、他に二人の死刑囚がそれぞれの十字架と共にいることを漠然と認識したが、彼らは完全に無視され、影のような存在でしかなかった。この一人の男だけが、観衆の唯一の、毒気に満ちた注目の的であり、衛兵たちもそれを察して、彼の苦しみをより長く引き延ばした。


十字架が埃っぽい地面に置かれると、それぞれが金槌と太い鉄の釘を持った三人の衛兵が進み出た。マリーは胃が締め付けられるような不快感に襲われた。これから始まる暴力から逃げ出したかったし、彼らの目的も痛いほど分かっていたが、彼女はそこに立ち尽くし、無力な傍観者でいるしかなかった。


待ち構える木材の方へ突き飛ばされた後、囚人は体勢を立て直し、怒りではなく深い慈悲の表情で執行人に向き合った。観衆は、さらなる反抗の行為を期待して静まり返った。しかし、男はそれに反し、自ら威厳を保ちながら十字架の上に身を横たえ、目を閉じた。彼の四肢が所定の位置に引き伸ばされても、彼は静止したままだった。群衆は緊張した静寂に包まれた。彼らが待ち望んでいた瞬間だった。


衛兵たちはためらうことなく、彼の手足に釘を打ち込み始めた。残忍な一撃ごとに男の体は目に見えて震えたが、彼は歯を食いしばり、沈黙を守り続けた。金槌が振り下ろされるたびに、マリーの体は共感するように反応し、その目は苦悶に釘付けになった。彼女は声なき叫び、狂乱した群衆の誰にも聞こえない、密やかな苦悶に囚われていた。


恐ろしい処刑がついに終わった。五人の新しい衛兵が砕け散った木材を掴み、手慣れた効率でそれを持ち上げると、十字架は鈍い音を立てて土台にはめ込まれた。彼らは満足げな表情で顔の汚れをぬぐい、一歩下がった。他の二人の囚人も同じように素早く処刑され、彼らの泣き叫ぶ声が大気を引き裂いたが、夢中になっている群衆から一瞥もされることはなかった。


その時、中央の十字架の根元近くに立つ人物がマリーの目に留まった。聖母、その顔が深い悲しみの肖像画そのものである女性。彼女を見ることはマリーにとって辛いことだった。しかし、その痛みに反して、彼女の視線は何度もその悲嘆にくれる女性へと戻っていった。


男の目が開いたとき、彼は揺るぎない献身の眼差しで自分を見下ろす聖母を認めた。二人は言葉なく対話しているように見えたが、その瞬間は群衆の野次によって断ち切られた。彼の沈黙に業を煮やした彼らは、再び侮辱の言葉を浴びせ始めた。


「自分を救ってみろ!」と、別の声が嘲笑した。「神の子なら、それができるはずではないか?」


また誰かが叫んだ。「天使を遣わせろ!父の助けを請え!」


ヨシュアは彼らの野次を無視し、観衆を見渡しながら一人ひとりの顔を見ていった。そして、驚いたことに、彼の目が自分を見つけ、その視線が注がれるのをマリーは感じた。心臓が肋骨を激しく打ち鳴らし、彼女は恥ずかしさのあまり顔を背け、隠れたいという強い衝動に駆られた。助けようと考えただけで何もしなかった、臆病者。しかし、彼が彼女の目を見つめ続けるうちに、恥ずかしさは薄れ始め、畏怖の念に変わっていった。ほんのかすかに、彼の唇に笑みが浮かんだように見えたが、そんなはずはなかった。


説明のつかない力に引かれ、マリーは彼の方へと引き寄せられた。ためらいながら一歩前に踏み出した、ちょうどその時、地面が揺れ始めた。この恐ろしい場所から立ち去りたいというこれまでの全ての願いは、ただ一つの、彼の視線の中で永遠に凍りついていたいという切迫した欲求に取って代わられた。だが、それは叶わなかった。地面の揺れはさらに強くなり、彼女はまるでその光景から引き剥がされるように感じた。全てが暗転し、最後に彼女が覚えているのは、自分自身の涙の感覚――静かで、誰にも聞こえない叫びだった。

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