短編集No.007 ログアウト
ボスを倒した。ソロプレイヤーのソリティアは深く呼吸をして討伐報酬の入った宝箱へと近寄る。
あまりおいしくはないななどと考えつつ、出てきた報酬を受け取る。
安全地帯のない北の大地から最果ての都市まで戻り、ログアウトをする。
ヘッドセットを取り、しっかりと伸びをすると、ちょうどそこへサポートAIが昼食を持ってきた。今日のメニューは普通食ブロックにビタミンジュースらしい。
普通食ができてもう50年は経つらしいが、初期の普通食はペースト状だったと幼い頃に祖母から聞いた。
「ありがとう、アイちゃん。そういえば昔の話ってあまり聞かないんだけど、その辺り教えてくれない?」
「かしこまりました。2050年代に小氷期から脱した地球はすでに人口の大半を失いました。
そこで当時地球に多く存在した地域政府は多くが気候に左右されにくい作物栽培法を研究しました」
「うーん、もう少し最近の話を教えてよ。ちょっと長すぎるかな」
「かしこまりました。2100年ごろ、地球政府準備機構がベーシックインカムを導入。またそれと同時に食料の配給についても協議を始めました。
2105年に初期型普通食、つまりペースト状の普通食が開発されましたが、ペースト状ということや食べにくいということからあまり広まらなかったようです。
そこから改良されて、2108年に現在のブロック型普通食とビタミンジュースの組み合わせが誕生し、今まで愛用されています」
「ありがとう。昔は気候に左右されていたんだから大変だよね。今の普通食ってなんで研究されてなかったんだろうね」
「効率ばかり考えてはダメですよ。
確かに現実世界では、味のある食事は面倒で高価ですが、フロンティアネクサスでは簡単に食べることができるのですから、そちらを楽しんでくださいね」
ゲームでも普通食ばかり食べているけれど、たまにはそんな非効率なものもいいのかなと思った。