短編集No.016 売り物
「へいらっしゃい!金属専門小売の移動販売だよ!短剣、長剣、槍、鏃。果ては鉄屑、インゴッド!なんでも揃ってるからいっぺん見ていってな!」
フロンティアネクサスのプレイヤー到達域の東側、商業連合首都のコマーショにて商人プレイをするアイロニクは声を張り上げる。
コマーショ、キラキラと輝く商業都市――というのが表の顔。
ただし光の裏には影があるように、そこには広いスラム街もあった。
そのスラム街には極力近寄らないように、アイロニクは道具を扱う第二商業ギルドを目指す。
道中、第一商業ギルドのウィースキーとすれ違う。
「こんばんは、ウィースキー。そちらはどうかい?」
「おお、これはこれは。その声は我が友アイロニクではないか。久しぶりだな。そちらは上々と見えるが如何に?」
「相変わらず古めかしい言い回しだね。そりゃあもちろん上々さ。今北方ではいくつかのレイドが動いているからな」
「そうだな。私もそのためにここで東方にない作物を買い付けているのだからな。あれはおそらくアーミー規模、少なく見積もっても3レイドは参加することになるだろう」
「やっぱりそうか。今東方にいないのを不思議に思っていたところだ」
「しかしお前もなぜここに?北方に行くのが商機ではないのか?」
痛いところをついてくるな、とアイロニクは思う。それもそうだ。ここで移動販売をする意味は、ほとんどない。在庫処分くらいだろう。
「実はこの後、ギルドに寄ってから北方へ向かうんだ。もしよければ一緒に行かないか?」
「なるほど、護衛費を減らせるな。その話、乗った」
「それじゃあ3時間後に冒険者ギルドに集合だ。合同で依頼を出そう」
そうして二人はそれぞれの準備へと向かっていった。




