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勇者猫  作者: バゲット
62/98

62.狐族の町へ

俺達は森を抜け、途中にある猫族部隊の陣地へと向かった。



レオとレナが今日はテントにいるか、営舎のほうにいるかは分からない。

だから最初にテントに立ち寄ったのだ。



しかしテントをくぐった瞬間、俺達の目に飛び込んできたのは、人間の死体の山だった。

しかもそれは皆、エレーナが率いていた仲間達だ。



「なっっ………!!!い、一体、何が…………!!!!」



エレーナはあまりの惨状に言葉を失う。

冒険者達は皆、槍で串刺しにされ、血まみれで地面に倒れていた。



「わ、私がいない間に、何が起こったんだ………!!!」



俺とアルクも唖然としてその惨状を見回す。

アルクは無意識にロベルトを自分の後ろにサッと隠し、死体が目に入らないようにした。


エレーナは仲間の一人に駆け寄り、体を揺さぶる。


「おい、しっかりしろ、……おい!!!」


しかし、皆既に息絶えていた。エレーナが声をかけても、反応する者はいない。


「そ、そんな……なぜ………」



エレーナはよろよろと地面にへたり込む。

そして下を向き、体をぶるぶると震わせた。



「……これは、レナ達猫族がいつも使っていた槍ではないか。これは、どういうことだ……」


「エ、エレーナさん……」


アルクがおずおずと声をかける。しかしエレーナは聞いていない。


「おい、落ち着け。まだ猫族の仕業とは決まっていない」


俺がそう言っても、エレーナはやはり反応しない。



しかしやがてすくっと立ち上がり、握りしめた拳を震わせながら、低い声で言った。



「……すまない。私は戻る。」


「エ、エレーナさん………!!!」



アルクが止めるのに目もくれず、エレーナはサッと身を翻し、テントから出て行った。

そして森の中を、東へと向かって疾走した。



「しょ、しょこら、どうしよう。なんで……一体誰がこんなひどい事を……」

「考えても仕方ない。とにかくレオ達を探すぞ。」



俺達はテントを出て、ガエルダへと向かって走る。

アルクはロベルトを背中に背負いながら走った。



するとその途中、町の方からこちらへ向けて走って来る影が見えた。

走ったかと思うと木と木の枝を飛び越えている。獣人だ。


よく見るとそれはレナだった。


「レナ!!!!」


アルクが大声でレナを呼び止めた。

レナは足を止め、俺達の方へと向かってくる。



「アルク!しょこら!誰だいその子、いや今はどうでもいい!!兄貴が、兄貴がいなくなっちまって……」


レナは珍しく非常に焦っている。


「ええ、レオさんが!?そ、それにあのテントで何があったの!?エレーナさんの仲間が……」


「あれは獣神協会の奴らの仕業だ!!あいつら夜中に急にそこにいた人間を襲いやがったのさ、猫族のふりしてな!!そんでその時テントにいた兄貴がどっか連れてかれちまった!!兄貴は弱っちいんだ、戦闘力は全部あたしに取られたから……」


「そ、そんな、獣神協会が……」


「おい、どこに連れて行かれたか、心当たりはないのか。」


「分かんねえよ、あたしは頭の方は全部兄貴に取られたんだ、そういう調査は全部兄貴がやってたからさ!……いや待てよ、狐族……」


レナはアルクに背負われたロベルトを見て言った。


「そういや協会のリーダーがどうやら狐族っぽいって、兄貴が言ってたぞ。ああもう、何で今まで忘れてたんだ!!おいお前、あたしと一緒に来いよ!!」


レナがそう言うと、ロベルトはこくりと頷いた。



「で、狐族の町ってのはどこにあるんだ」


「こっからずっと西だよ、犬族の町を超えた先だ!!狐族ってのは数が少なくて閉鎖的で、なかなか町から出てこないんだ!こいつを送り届けるって大義名分がありゃ、町に入れてくれるだろうよ!


しかし遠いから、これじゃいつまでかかるか……」



「ぼくが、つれてって、あげる…」



その時、ロベルトが声を発した。

皆驚いて足を止め、ロベルトの方を見る。


「おい、連れてくってどうやって……」


レナが問いかけると、ロベルトはアルクの背中から降りた。


そして俺達を茂みの陰へと連れて行き、地面に向けて手をかざし、なんとそこに紫色の魔法陣を展開したのだ。


「こ、これって、転移魔法……!?」


アルクが唖然として言う。狐族は転移魔法陣を作り出せるのか。

ということはロベルトは、そのために王宮に捕らえられ、その力を利用されていたということだろうか。


「とにかく行くぞ。ここに乗れ。」


俺はレナにそう言い、俺達は一斉に足を魔法陣に踏み入れた。

全員が入ると光が強くなり、俺達は再び宙に浮く感覚に陥る。



そして次の瞬間、俺達は別の場所に立っていた。

足下を見ると、緑色の魔法陣が光っている。



「こ、ここは……」

アルクがキョロキョロと見回す。


「こっち。お兄ちゃんに、あわなきゃ……」

ロベルトはそれだけを言うと、アルクの服の裾を引っ張り、西の方向を指差した。



どうやらロベルトの魔法陣は、町の防壁を飛び越え、俺達を直接町中に招き入れたようだった。

俺達の周りには木々が生い茂っていたが、そこを抜けるとすぐ町が現れた。


まだ朝方なので町はしんとして、住人は一人も見当たらない。


そこは閑散とした町、というより村のようだった。


ポツポツとレンガ造りの家は建っているが、ガエルダのように色とりどりの屋根は付いていない。

どの家も茶色いレンガ造りで、一番高い建物は村の奥にある教会と思われる建物だった。


そして辺り一面には、霧のような白い靄が立ち込めている。



「す、すごく静かだね……。こ、ここにレオさんは、連れてこられたのかなあ……?」

「こっち。」


ロベルトはそう言って、アルクの服を引っ張り続ける。



俺達はとにかく、ロベルトに付いて行くことにした。


ロベルトが導く方向へと歩きながら、俺は問いかける。


「おい、牢の中では、魔法陣は作れなかったのか?」


「つくれない。あの中では、まほうが、つかえなかった」

ロベルトが答える。


「他の狐族は、転移魔法が使えないのか?」


ロベルトは首を振った。

「ぼくしか、つかえない」


「おい、この子はどっかに囚われてたのか?というかエレちゃんは一緒じゃ……いや、その話は後だな……」


ロベルトが教会の前で足を止めたので、レナは質問を止めた。

ロベルトはアルクを見上げ、なぜかその後ろにさっと姿を隠した。


「え、えっと、ここに入ればいいんだよね…?」


ロベルトはこくりと頷く。


そしてアルクとレナは一緒に、教会の扉に手をかけた。



重い扉がギギギと音を立てて開く。

すると教会の奥、本来神父が立つであろう講壇に、狐族の男が一人腰かけていた。


男は俺達を見て、にっこりと笑っているような声で言った。




「やあ、いらっしゃい、待っていたよ。思ったより早かったね。」


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