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勇者猫  作者: バゲット
41/98

41.最期の言葉

ハルトが、薄く目を開けた。



俺達は目の前の奇跡に、言葉を失う。


ただハルトを見つめるだけの俺達に、ハルトは優しく声をかけた。



「………やあ、無事に魔王は、倒せたみたいだね…………」



その声は弱々しく震えている。


アルクはハルトの上体を支えながら、必死にハルトに問いかける。



「ハルトさん!ハルトさん!!………い、生き返ったの……………?」



しかしハルトは、僅かに首を振る。


「いや、残念ながら、これは魔石による一時的な蘇生術だよ。おそらく5分ともたない。

でも良かった、うまくいったみたいで………」


「そ、そんな………」



ハルトはアルクを、そして俺を見た。


「………最後にどうしても、君達と直接話がしたかったんだ。」



ハルトはいつものように、にっこりと笑っていた。



「………ありがとう。僕の話を信じてくれて。


僕の訓練に付き合ってくれて。


リーンの相手をしてくれて。


僕の遺言を受け入れてくれて、魔王を倒してくれて。


僕の友達になってくれて、いつも一緒にいてくれて。


僕に心から、楽しい時間をくれて。本当に、ありがとう。」



ハルトはそれだけを一気に言った。




アルクはまた嗚咽しながら言う。


「そっ、そんな…………!!お、お礼を言わなきゃいけないのは、僕達のほうなのに!!!


ハルトさんがいなかったら、僕たち、魔王を倒せなかった………!!っっそれに、それに………」



アルクは涙で言葉を詰まらせる。



「それに、………っ、色々教えてくれて、それに……………、もし魔王を倒せなくても、ぼく、ハルトさんと一緒にいるだけで、楽しかった………………


ず、ずっと、一緒にいたかった………………………!!!!」



アルクはぼろぼろと涙を流す。

それは止めどなく流れ続け、ハルトの顔にぽたぽたと落ちる。



ハルトは僅かに震える左手を上げ、自分の上に置かれたアルクの右手をつかむ。



「アルク君………、君はこれから、自由に生きるんだ。勇者の運命に縛られない、自由な人生を……………。アルク君なら、大丈夫だ………」



そしてハルトは、俺の方に目を向ける。



「しょこら君は…………、僕が言わなくても、自由に生きるよね。……………ありがとう、魔石のこと、分かってくれて。」



そう言ってまたにっこり笑う。



「………………たまに、リーンの顔を見に行ってやってくれ。」



ハルトの体に流れていた白い光が、だんだん弱まってくる。



「ありがとう。僕の、勇者たち………………」



ハルトの目から、一筋の涙が流れる。



アルクの右手を握っていた手が、パタリと床に落ちる。


ハルトは再び目を閉じた。その顔は、小さく微笑んでいた。




その後しばらく、世界から音が消えた。


アルクが大声で泣き叫び、ハルトの名を呼び続けるが、まるで水の中にいるかのように何も聞こえない。



俺はじっとハルトの顔を見つめた。涙が出ないというのは、不便だった。




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