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第18話技術指導

「刀を使う……『斬る』為には、相応の訓練が必要になると、実感できただろうから、本来の目的の技術的な指導に入る。」


「分かったわ……」


「稽古打ちと素振りどっちがいい?」


「先ずは素振りからで……」


 そう言うと自前の濶剣ブロードソードを構え、数度幾つかのパターンの素振りを見せる。


 剣と言う物は、その形状からして人体に対して『米』の字に斬りつける事が基本となる。

 額より上の位置で構える『上段の構え』から、上から下へ垂直に斬り下ろす。コレを『真っ向斬り』または『唐竹からたけ』、『切落きりおろし』と言う。

 類似したもので同じく『上段の構え』から、上から下へ斜めに……肩から脇腹目掛けて斬り下ろす。これを『袈裟斬り』と言う。


 ――――彼女の振り下ろしを見ている限りは、特に問題を感じない。十分に練習を積んでいるように見えるので、学生レベルでは問題には感じない。


 『西洋剣術』……特に盾を併用したそれは、大きく振りかぶった状態からの斬撃……いわゆる『袈裟斬り』を多用する。

 しかしその所作は、あたかも金属棒を振り回しているように感じる。

 長剣ロングソード両手剣バスターソードは両手を用いるが、西洋剣術は盾とセットが基本なので、躱すか鎧で受ける事を基本とする。日本の剣術との相性はあまりよくない。片刃と両刃の違いもあるしな……


 次に見せるのは『薙ぎ』、『胴』、『逆胴』と呼ばれる、横方向からの水平斬撃で、太刀や野太刀での居合をイメージして頂くと分かりやすい。盾持ちの多い西洋剣術での場合は、相手の盾での防御を崩す大技として用いる事が多く、その場合は薙ぎ払い攻撃は盾を持っている左に比べ、明らかに隙が大きいので余程練度に差が無いと厳しい技になる。


 だが彼女の動きは、この学校の平均程度のレベルはありそうだ。


技術が必要な事が練習では出来るのに、本番では出来ないのか?


 左右の脇腹から肩へ切り上げる『逆袈裟ぎゃくけさ』、『真っ向斬り』とは逆に下から上へ切り上げる『逆風さかかぜ』、そして最後に『突き』。


 某人斬り抜刀斎の必殺技である、九頭龍閃くずりゅうせんやキネマ版である九頭龍閃ここのつがしらのりゅうのひらめきと言えばどういう動作か想像しやすいだろうか? 

 

 個人的にはキネマ版の方が無理ない連撃で、ストーリー構成に粗は目立つものの、実写唯一の成功と言って良い。  (作者個人の見解です)

 何より、電王から応援している佐藤〇が格好いい。



 基本的な剣術の動作を見た俺には解る、『彼女の剣』は実に素直。

いい剣筋で基本に忠実、地味で辛い基礎をしっかりこなした、それだ。

……俺達のように寄り道をしている奴に比べ、格段に速く上達するだろう。


 産まれながらの非力を加味しても多分、十年も努力すれば、無駄が排除され、より研ぎ澄まされ、良い教師にすら成れるだろう……



 俺や同級生・上級生の多くは、悪い意味で戦闘慣れしている。

試合中に足の裏で蹴り飛ばすとか、爪先で砂を蹴り上げ目潰しするとか、そう言う搦手と言うか、実践的な戦術を仕掛ける癖が身に付いている。

しかし彼女の素振りには、そう言う事をする場慣れした雰囲気を全く感じないのだ。

 そのせいで教科書通り、お手本通りの返し技しか返せないのだろう……それだと対人戦では使い物にならない。自分以下の雑魚にしか勝てない。強者には勝てない。凡人の剣筋でしかないのだ。


 全体的には努力はしているのに、結果が付いてこないタイプだ。

何ともまぁ不遇だ。


「……さて君の剣筋を見た俺からのアドバイスだが、基本に忠実で10年すれば師範になれる安定コースと、今からでもすぐに強くなれるけど人に教えたりが不向きになるコースどっちがいい?」


「私は結果を残さなければいけないの! だから今すぐに強くなりたいわ!」


 彼女の言葉に迷いはなかった。


「OK、じゃぁ先ずランニング朝晩20周と、打ち込み稽古の時間を増やそうか? できれば搦手を使うような相手がいい……幸い俺に比べ君には人望がある。そっちは自分で探してくれ……あとは徹底的な筋トレだ。

素振りはコレから真剣で行え、木剣より重いから腕に負担をかけることが出来る。あとはタンパク質……赤身肉や大豆をとれ。

詳しい特訓メニューはこの紙を見ろ」 


 俺はそう言って数枚の紙を押し付ける。


「あとは身体強化の魔術を維持して、出力を変化させるトレーニングをしておけ、また一週間後に練習を見てやる。

用があれば冒険者ギルドか学園のカフェテリアに来い。

緊急なら偽名でいい、クローリー家の別邸に手紙を出せ。

直ぐに来てやる」


「ありがとう!」


「今から帰って、お前の剣を打つ設計を考える。

要望があるならサッサと言え……刀を打つのは時間を使うし、高温の炉の前で長時間居なければならないから体力を使う。

今日は早く寝たいからな……」


 こうして俺がミナ・フォン・メイザースに、秘密を握られた日から三日目が経過した。

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