表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

悪役のラスボスは酒を飲む


「魔シンデレラはともかく、世間一般の悪役は昼間っから酒を飲むではないか」

 世間一般の悪役ですと……?

「……たしかに」

 悪役は悪いことをしていなくては悪役にはならない。魔王様は正々堂々と世間一般の悪役だ。何一ついいこともしていない。完全悪役――悪人。

「私が保証します」

「う、うん? さらには、ラスボスはラスボスの余裕を見せつけるために、昼間っから酒の入ったグラスを片手に戦ったりするではないか」

「たしかに!」

 グラスには必ず紫色のワイン! おちょこに日本酒ではなく、グラスにワインが悪役の代名詞!

「デスラーとか」

「個人名はおやめください」

 冷や汗が出る、古過ぎて。せめてデ〇ラーとかにしてください。

「酔拳とかも」

「……」

 それはちょっと違うよな……在宅勤務でも悪役でもなさそうな……。飲めば飲むほど痛覚や羞恥心が薄れて……強くなるってやつだ。

「つまり、強いラスボスや余裕のあるラスボスは朝も昼も夜も自宅も他人宅も関係なく酒を飲むのだ」

 それって、ただの「飲んだくれ」ではございませぬか。頭が痛いぞ。

「迷惑極まりない奴ですね。ラスボスって」

「そうぞよ。って――予やん!」

 乗り突っ込みされる魔王様……いかん、ときめいてしまうぞ。

「しかし、魔王様。そういったラスボスが、酒を飲んでいたせいで勇者や主人公や古代進に倒されたとしたら……格好悪くはございませぬか」

 お酒を飲んでいなかったら的確な判断ができ、負けることはなかった……みたいな。

「それはそれで、酒のせいにして言い訳に使えるぞよ」


 ――負けた時の言い訳! 飲んでなかったら勝てた説――!


「さすが魔王様にございます! 感服いたしました」

 マジで。マジで、あんた魔王様だよ。

「フッフッフ。照れるぞよ」

「照れるな!」

「……」

 ラスボスバトルをいったいどうお考えなのか――。

「ラスボスとのバトルといえば聞こえはいいですが、我ら魔族にとっては最終局面になるのです。魔王様が飲んだくれていて的確な判断ができないのであれば、それはもはや……」

 もはや……なんだろう。自爆? 自滅? 自分の蒔いた種?

「後悔してもしきれない負けざまでございます。恥ずかしくこれまで魔王様のために命をかけて戦ってきた者達に顔向けできません」

 無様です。天国で謝らなくてはならないでしょう。

「ええやん。昼間っから飲んでいたから負けちゃった、テヘペロで」

「か――!」

 頭を抱えてしまう。魔王様がそんなことでどうするのだ――。首から上は無いのも忘れてしまうくらいにガビーンだぞ!


「さらには、魔王様はお酒にお弱いではございませぬか」

 たしなむ程度にグラスを傾けるのであれば、ラスボスらしさが出てよいかもしれませんが……。

「魔王様、酔っ払うと廊下で小便したり、重要書類にゲロぶちまけたり、玉座で無呼吸睡眠法を始めたり、見苦しくて見ていられません――」

 見ているこっちが息苦しくもなります。

「ちょっと待って! 予はそんなに酒癖悪くないぞよ!」

 ごめん。ちょっと盛ってみました。

「さらにはトイレで便座に座ってそのまま吐いて、ズボンがゲロマミレ」

「やーめーて!」

「自室に歩いて帰れず、台車に乗せられて運ばれる始末」

「やーめーて! 予を荷物のようにガラガラ運ばないで~!」

 足を掴んで引きずってもいい。おんぶはしたくない……首元で熱いゲロされそうで。

「さらには、酔っているくせに『でんでん酔ってないぞよ』の連呼」

「その時は、たぶん酔ってないのだぞよ」

「酔っていない時に、『酔ってない』など言う筈がありませぬ」

「……」

 はあーとため息が出てしまう。

 魔族を統一される魔王様がこれでは……先が思いやられるぞ。


「デュラハンも酔うと質が悪いではないか」

「――!」

 いや、落ち着け。私は魔王様の前で醜態をさらしたことなど……一度たりともない――!

「御冗談を。その手には乗りませんよ」

 フッ。前髪をさりげなく整える。首から上は無いのだが。

「デュラハンは酒飲むと、いつもいつも女子用鎧を自室の椅子に座らせて一人で……」

 咄嗟に立ち上がってしまった――。

「ま、待って! 魔王様――!」

 シャラップでございます! それ以上は言わないで! ニヤニヤしているのが……今ほど怖いことはない。

「さらには女子用鎧とお布団で添い寝って……正気か?」

「やーめーて!」

 魔王様、なんで知ってるの――! 自室には毎日鍵をかけ、寝る時はさらに「ガコン」もかけて寝ているのに――。

「予は全知全能ぞよ」

 神か――! オーマイゴッドか! 無限の魔力で盗聴も透視も思いのままなのか――! だったら、私めの自室なんかを覗く必要なくない?

「プライバシーの侵害でございます!」

 冷や汗がダラダラと流れ落ちる。神様や魔王様にはプライバシーは通用しないのか。情けも容赦もないのか――。

「っていうか、毎晩毎晩、卿の部屋の前を通ると扉から破廉恥な独り言が聞こえてくるから丸聞こえで、魔王城内の全モンスターが知っておるぞよ」

「うふふ。うふふ……」


 ってことは、恥ずかしい一人飲みの独り言が……レベル1のスライムたちも聞いて知ってるのね……。破廉恥って……酷いぞ。ガクッ。


「もはや、恥ずかしくて四天王の一人として廊下を歩けませぬ」

 大きな顔をして歩けません……。

「首から上は無いからいいじゃん。魔王軍の面汚(つらよご)しめ」

「ドイヒー」

 汚せる面が……欲しいぞ。シクシク……。


読んでいただきありがとうございます!


ブクマ、感想、お星様ポチっと、などよろしくお願いしま~す!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければ魔王様シリーズを読んでみてください!
『魔王様シリーズ』
 
― 新着の感想 ―
[一言] デュラハンさんの新たな性癖が……っ(笑) これは恥ずかしいですよね!わかります!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ