54.国王との謁見(2)
「何をしているのだ?」
国王の目が妖しく光った。この国王も何を考えているかがわからない。
「私の方から申し上げてもよろしいのですか?」
ティメルは隣に座っている主を見た。主は、口の端をヒクヒクと震わせている。
「なんだ。デーセオに関わることなのか?」
尋ねられてもティメルの主は答える気がないようだ。なので、仕方なくティメルが言葉を続けることにした。
「今は、フルヘルト領におります」
腕を組んでいた国王の顔が歪む。ティメルの言った言葉の意味を考える。そのままの意味としていいのか、深く汲み取った方がいいのか。
「保護、したのか?」
国王はとりあえず無難な言葉を選んでみた。
「保護といえば保護かもしれません。何しろ、彼女は嫁ぎ先を探すという名目で、身を寄せた親戚宅から売りに出されていましたからね」
次第にティメルの本音がだだ漏れし始めている。その言葉にまた国王は顔を曇らせる。
「どういうことだ?」
「どうもこうもありません。聖なる力を失ったレーニス様ですが、神殿を追い出された後は親戚宅に身を寄せたようです。ですが、そちらでもやはりレーニス様が邪魔だったのでしょう。嫁ぎ先を探すと言いながら、金を払ってまで彼女を欲しがっている禿エロ親父を、あの親戚は探していたようです」
「人身売買か?」
「名目上は嫁ぎ先を、ということになっているので、人身売買ではありません。ですが、見方を考えれば立派な人身売買です」
「なるほどな。それでフルヘルト領で匿っている、というわけか」
「そういう流れになるのですが。で、デーセオ様。いいですか? もう、ここまできたら陛下にお伝えしてもよろしいですよね?」
優秀な部下は、一応、主の意見を聞いてくれるようだ。
「かまわん。お前の方から続けてくれ」
デーセオとしては自分からこの国王に言う勇気がないのではなく、面倒くさいから言いたくないだけで。
「では。デーセオ様の許可もいただきましたので。ええと、そう。神殿を追い出された元聖女候補はレーニス様とおっしゃるのですが、このたび、このデーセオ様が妻としてお迎えいたしました」
「つま? 妻、だと? つまり、こいつの結婚相手が、その売られた元聖女候補だと?」
「はい。あのまま禿エロ親父の元へ嫁いでしまったのであれば、彼女の未来が潰されてしまうことが目に見えておりました。何しろまだ、辛うじて十代」
「十代。十代って、それこそ犯罪だろうが、そのデーセオと結婚したとしても」
「いえいえ。きちんと婚姻を結ぶ年齢には達しておりますから。そんな十代前半ではございませんよ。そろそろ二十に手が届くところでございます」
ところどころ、自分がけなされているような言葉が出てきているような感じがするデーセオであるが、それに反応するのも面倒くさいし、余計なところで口を挟んでこの国王からもっと突っ込まれた話をされるのも面倒くさいので、全てをティメルに任せることにした。
「まあ。犯罪でなければいい。ま、その、なんと言っていいか難しいところだが。とりあえずは、結婚おめでとう」
「あ、ああ」
としか答えることができないデーセオ。だが、やはりいろいろと鋭い国王は気付いたようだ。
「それで、それがデーセオの呪いが解けている、ということに関係するのだな?」
「さすが陛下です」
ティメルはパチンと指を鳴らした。もう、この場に堅苦しい礼儀作法は無くなってしまった。たいてい、この三人が集まれば最終的にはこのような感じになってしまう。
「では、もう少し込み入った話を続けさせていただきます」
というティメルの言葉を耳にしたデーセオは、余計なことは言うなよという気持ちでいっぱいだった。




