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53.国王との謁見(1)

 結局通された場所は応接室で目の前にはお茶やらお菓子やらが並べられている。


「君と腹を割って話すには、こちらの方がいいだろう」


「俺には腹を割って話すような内容は何もないがな」


「いやいや、まずは、結婚おめでとう。で、花嫁はそっちか?」

 と言うそっちは、恐らくティメルのことを指しているのだろう。


「んなわけあるか。妻は置いてきた。おいそれとお前に会わせるわけにはいかないからな」


「酷い。普通、結婚の報告といったら夫婦そろってくるものだろ?」


「そんなこと。あれには書いてなかっただろうが」


「普通は書かなくても、なんとなくわかるよな」という顔を国王はティメルに向けると「デーセオ様にははっきり言わないとわかりません」という顔でティメルは返した。言葉が無くてもなんとなく自分のことでやりとりをされているデーセオは顔を歪めるしかない。


「で、腹を割って話すような内容とはなんだ?」

 ふてぶてしく腕を組んで足を組んだデーセオは、相手が国王であるにも関わらずそんなことを口にする。


「結婚の馴れ初めとかかな?」


「誰が話すか」

 と顔中を真っ赤にしたデーセオであるが、すでにそれだけで国王は彼の気持ちというのをなんとなく察したので、これは後で彼をいじるためのネタの一つにしておこうと思った。

「君が教えてくれなくても、そこの君の優秀な部下から根掘り葉掘り聞くから、いいや」

 恐縮です、とティメルが頭を下げたため「お前は黙っていろ」とデーセオは威嚇する。ティメルにとっては、主から受けるそのような仕打ちはパワハラでもなんでもなく、いつもの照れ隠しということを理解している。


「それよりな、俺もお前に聞きたいことがあったんだ」

 と言うそれは、国王に向かって言うような口調ではないのだが、それを不敬であるとかなんとかとこの国王は言わない。

 なんだ、と左眉をピクッと反応させた。


「あの神殿の様子はなんなんだ? ここに来るまでに、前を通ってきたが、酷かったぞ?」


「神殿?」

 どうやら、国王はあの神殿の現状をわかっていないようだ。


「ティメル」

 とデーセオが優秀な部下の名を呼ぶのは「詳しい説明はお前がしろ、というか俺にはできん、というよりも面倒くさい」という意味である。


「では、ご指名いただきましたので、私の方から説明させていただきます。今、デーセオ様の方から話がありました神殿の状況ですが、聖女様からの祈りを断られた民たちで、神殿の外が埋め尽くされておりました」


 また国王の左眉がピクリと反応する。

 それを目にしたティメルは言葉を続ける。

「以前からあの神殿は、金持ちにしか……あ、失礼しました」


「いや、いい。そのまま続けてくれ」


「では、私の本音も交えながら。以前からあの神殿は、金持ちにしか聖女様の祈りを捧げていないということが噂されておりました。私が調べたところ、噂ではなく事実ということがわかりました。ですが、以前は、祈りを求める民たちをそのまま帰すことに気が引けるという聖女候補様が、その民たちの祈りを全て引き受けてくださっていました」


「一人で、か?」


「はい。差別なく祈りを捧げていた聖女候補様は一人です。あとは、聖女候補を含めあの神殿は、神官たちのいいなりですから」


 ふむ、と国王は顎をさすりながら考え込む。

「そういった情報は、こちらにまで流れてきていないな」


「ということは、誰かが情報を統制させているのでしょうね」


 なるほどな、と国王は考え込むようにして顎をさすり続けている。

「ところで。その聖女候補はどうした? 今まで一人で民たちの祈りを引き受けていたのだろう? 彼女がいるのであれば、そのような状況にはならないのではないか?」


「その聖女候補が神殿からいなくなったため、そのような状況になっているというわけです」


 聖女候補が新しい聖女様になられた、という話は聞いていない。それにも関わらず、聖女候補が神殿からいなくなった、という言葉が示すところは。

「失ったのか? 力を」


「そのようです。聖女様が彼女から聖なる力が失われたということを口にしたことにより、彼女は聖女候補を解かれています」


 ふむぅ、と国王は腕を組むとソファに深く座り直す。

「それで、その聖女候補は今、どうしているのかわかるのか?」


「はい」

 と返事をするティメルが笑顔であるところが恐ろしい、とデーセオは思っている。そして、いつそのことが知られてしまうのではないか、という不安が腹の底にあった。

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