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17.竜騎士との結婚(1)

「私、デーセオ・フルヘルトは、レーニス・フォッセを一生の妻とし、この命ある限り愛し続けることを誓います」


「私、レーニス・フォッセは、デーセオ・フルヘルトを一生の夫とし、この命ある限り愛し続けることを誓います」


 夫婦の誓いの言葉がしんと静まり返った大聖堂に響いていた。続いて、デーセオはレーニスのヴェールをそっと持ち上げるのだが、その持ち上げたデーセオ本人の顔は、結婚式であるにも関わらず顔半分が隠されている。デーセオはヴェールでなく、結婚式というこのときもあのフードを深くかぶっているのだ。これだけ間近にいても彼の顔を見ることはできない。それだけしっかりとフードをかぶり、顔を隠している。

 だが、誓いの口づけだ。ヴェールをあげた彼の顔が近づくと思いきや、頬に触れるだけの柔らかい口づけ。それが終わるや否や、大聖堂にはうわーっと大歓声が響き渡る。

 これでレーニスはデーセオの正式な妻となった。


 レーニスがここへ来た初日にデーセオと顔を合わせてから、今日というこの日まで、その間レーニスは彼の姿を見ることができなかった。仕事が忙しいという理由ではあるのだが、食事の時間くらいはと思ってもそれすら合わない。だから、会えない。今、三日ぶりに彼と顔を合わせたところでもある。


 そんな顔を半分隠したような大きな男と、聖なる力を失った元聖女候補の変な結婚式。それでも祝ってくれる人たちがいることは素直に嬉しいと感じているレーニスだが、隣にいる夫となった人物は、それでもその顔を見せてはくれない。逆に、ここまで頑なに隠されてしまうと、絶対に見てやるという強い気持ちが沸き起こるのはなぜなのだろう。


 この領主さまの結婚式ということだけあって、この領全てがお祝いの雰囲気に包まれていた。城内ではたくさんのご馳走が振舞われ、恐らくデーセオの関係者たちが、次々とやってきては挨拶をしていく。この城に訪れることのできない民たちも、浮かれモードで飲み食いをしている。それは、デーセオの結婚ということもあり、民たちにも酒や料理が配られたからだ。


 結婚式の夜といえば初夜。少し無知なところがあるレーニスだって、それくらいのことは知っている。だが、閨事の知識はと問われると、無いかもしれない。よくわからない、が正解。

 だが、彼はここに来ないだろうと勝手にそう思っていた。夫婦の寝室、と言われているその部屋に移動してきたのは今日であるけれど、恐らくこの広い寝台の上で、寂しく一人で眠りにつくだろう、とレーニスは思っていた。

 だから、レーニスが寝台に横になってうつらうつらと眠りの世界へと誘われていたときに、この部屋に誰か入ってくる気配がしたのは意外だった。


「レーニス、眠っているのか?」


「あ、旦那様」

 ごそごそとレーニスは身体を起こした。だが、この部屋は真っ暗で、なんとなくでしかその彼の姿を捉えることしかできない。


「今日は疲れただろう」

 ぎしりと寝台が沈んだ。


「あ、はい。あのようにたくさんの方に祝っていただいたことはありませんでしたので」

 近くにデーセオの顔があるのに、その顔をはっきりと見ることはできない。


「俺が、怖いか?」

 デーセオはそう尋ねていた。暗闇でこの顔が見えないからといっても、なんとなく風体は感じることができるだろう。だが、返ってきた言葉は。

「いいえ」

 すっとレーニスの手が伸びてきた。それがデーセオの頬に触れる。


「旦那様はなぜ、そのお顔を私にお見せくださらないのですか?」

 デーセオはレーニスの手に、己の手を重ねて答える。

「醜いからだ。お前に魅せられるような顔をしていない」


 デーセオはレーニスが笑ったのを感じた。ふっと、その息が鼻に触れたから。


「ですが、旦那様はお優しい方です。あの禿エロ親父に売られようとしていた私を助けようとしてくださった」


「だが、俺もエロ親父かもしれん」

 デーセオは自分の頬に触れていた彼女の手を掴むと、その甲に口づけを落とす。

「お前を妻に娶った以上、白い結婚は望まない。生涯をかけてお前だけを愛することを約束する」

 そしてその夜、デーセオは妻となった人物を抱いた。


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