表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/66

11.竜騎士の部下(1)

 レーニスがフルヘルト卿の話について「はい」と答えた次の日。彼の部下と名乗る男がフォッセ家の屋敷に現れた。


「レーニス、レーニス」

 と、ひときわ高い声をあげて彼女を呼びに来たのは、ロイス。仮面をかぶらなくても、その顔は笑顔で溢れていた。


「オーサー様が、いらしているの」


 また聞いたことの無い名前がレーニスの耳に入ってきた。どちら様でしょう、という顔をすると。


「フルヘルト卿に仕えている魔術師の方よ。これからのことを相談されたいって、今、いらしたのよ」


 魔術師。聖女の聖なる力とは異なる不思議な力で、魔獣を倒し、魔獣を飼い慣らし、人を助け、人を呪う。

 それがレーニスの魔術師に対する印象だった。今日、ここを訪れたオーサーという魔術師はどのタイプの魔術師だろうか。


「レーニス、着替えをしてからいらしてちょうだいね」

 ロイスは身近にいた侍女にレーニスの着替えを命じると、そそくさと戻っていく。


「お嬢様」

 この屋敷のお嬢様でもなくお荷物であるレーニスのことを侍女はそう呼んだ。仕方なく、レーニスは侍女に従い、着替えをする。この屋敷に来てから、初めて袖を通すようなドレスだ。どこに隠してあったのか。いや、恐らくだが、その嫁ぎ先の相手に会わせるようなときのために準備しておいたものだろう。


「お似合いです、お嬢様」


 侍女のこの言葉は本心なのかお世辞なのかよくわからないところがある。ありがとう、とはにかんでから、彼女はオーサーと呼ばれる魔術師がいると思われる応接室へと案内された。


「奥様、お嬢様をお連れしました」

 まあまあ、と手をすりすりしているロイスだが、笑っている瞳の奥にどこか卑しい光が灯っているように見えた。

「オーサー様、レーニスです」


「お初にお目にかかります。レーニス・フォッセです」

 神殿で過ごしていた彼女は、聖女候補としての挨拶しかできない。ドレスをローブに見立て、裾をつまみ上げ少し頭を下げる程度。

 オーサーもすっと立ち上がると。

「ティメル・オーサーです」


 とても柔らかい挨拶だった。


「さあさあ、レーニス。座ってちょうだい。オーサー様がね、これからのことをご相談なさりたいそうなのよ」


「あ、はい」

 さあさあ、と背中を押されるようにして椅子に座るレーニスだが、その視線はしっかりとティメルを捉えていた。魔術師と聞いていたが、それを感じさせない物腰。一言で言えば、魔術師らしくない。

 レーニスが聖なる力を失っているため、もしかしたら彼の力を感じないだけなのかもしれないが。


 ほう、とティメルは唸った。

「レーニス様は、お美しいですね。そのドレスもお似合いですよ」


 こういった社交辞令にも慣れていないレーニスは、ありがとうございます、としか言えなかった。


「本来であれば、主が挨拶に伺うべきところを、私が代理で来てしまい申し訳ありません」


 いえ、とレーニスは答えた。彼女を買ったフルヘルト卿が気になるところだが、このティメルという男を見ている限りだと、なぜかあのパエーズ卿よりは数百倍もマシだと思えた。

 それからティメルは今後の予定について簡単に説明をした。それから、三日後に迎えに来る、と。

 肝心のフルヘルト卿こと、デーセオは領地でレーニスを迎え入れる準備をしている、という言葉もつけて。


「レーニス様。ここからフルヘルト領までは馬車で三日ほどかかります」


 途中、フェルゼン領、ホラント領で一泊し、その三日目の昼過ぎにはフルヘルト領に入るとのこと。フルヘルト領に入れば、デーセオの居城はすぐそこだと言う。


「長い旅になりますが、レーニス様のご負担にならないように配慮するつもりです。なんなりとお申し付けください」


 その日、ティメルはそう言って帰っていった。

 それからレーニスの周囲は騒がしくなり、忙しくなった。てっきりレーニスを追い出すための準備かと思いきや、それなりに嫁入りの物を持たせてくれるらしい。だが、たかが三日。準備できるものとは限られているが、それでも上等なドレスを数枚持たせてくれた。いつの間に準備をしていたのだろう、と思えてしまうそれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ