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第4話 ティモ【抗議】


「どうなっちゃうんだろう………」


クロちゃんが不安そうに呟くのを見て、ぼくは決めた。


「じゃあさ、ぼくたちがやろうよ、ドッジボール!」


ぼくは立ち上がってクラスのみんなに向かって言った。


「おい、ティモ! お前、分かっていってるのか!? 負けたら、みんな連れていかれちゃうんだぞ! それに、俺たち4年生に何が出来るんだよ、相手はみんな12歳って言ってたぞ、へたしたら中学生だ。かなうわけないだろ!きっと6年生がなんとかしてくれる!」


トキメキくんが震える声でそう言った。


「じゃあ、6年生が出て、負けたら? ずっと6年生を攻め続けるの? ぼくはそんなの嫌だよ。」


「それはっ! そうだけど………!」


ぼくは、ぼくたちの運命に関わることを、人任せにしたくない。

運命は、自分の力で掴み取らないといけないんだ。

あの雨の日、ゴミとダンボールの中でお腹が空いて力が出なくても、叫び続けた。

喉が枯れても叫び続けた。


だから、にいちゃんに会えたんだ。

何もしないで、運命に負けるのは、ぼくがぼくを許さない。



「んふふ、ティモちゃんの言う通りだねー。そもそもー、勝って得られるものがなくてー、負けて失うものしかない。数でこられたら最初から負けが確定しているんだから、別に誰がやったっていっしょだよー。だったらー、わたしも、身の安全は自分自身で掴み取りたいかなー。」


「タマちゃん………」


タマちゃんがぼくの肩に手を置いてみんなに笑顔で続いた。


「私はやるよー? 絶対に人任せになんかしない。あとでやっておけば良かったなんて、後悔したくないからねー。」


拳を前に突き出したタマちゃん。


「明日の命運を賭けた試合に出してもらえるように、先生たちに頼んでみよー!」






「だめだ。」



ぼくとタマちゃんとクロちゃんで職員室に突撃したら、ゴリ松先生に窘められちゃった。



「なんで! 戦わないと学校のみんな連れ去られちゃうんでしょ!」


ぼくはぷんすこと頬を膨らませてゴリ松先生に抗議した。


「ああ。試合は明日ということになった。だから、明日の学校は臨時休校とする。」


「つまりー、逃げて不戦敗するってことー? 植民地になってもいいっていうんだー。へー。」


タマちゃんの目が笑っていない。

本気で怒っているときの目だ。


「負けたら、どこともしれない場所に連れて行かれる。さっきもみただろう、異世界に連れて行かれるんだ。帰ってこれるかもわからない。だったら、明日、誰も学校に行かなければ、少なくとも連れ去られることはないはずだ!」


ゴリ松先生は拳を握り締めながらそう絞り出した。


「俺たちは、教師だ。子供を導くのが大人の使命だ。子供を元気に家に帰してあげるのが教師の仕事だ。わかるか、タマ。俺は、「大人」で「教師」なんだ。お前たちに戦いを強制してしまえば、その瞬間、俺は教師ではなくなる。お前たちを守るためなら、泥もかぶる。罵声でも浴びよう。だが、みすみす相手の勝負にのって、連れ去られてしまったら、俺は二度と立ち直れない」


それは、信念を持った瞳。先生としての覚悟だった。

そこまで言われたとき、タマちゃんの瞳から怒気が消えた。



「わかったよー。先生の気持ちはわかったけど、わかったところで納得はできないんだよねー。先生たちには想定が足りないよー。」


ふうと鼻から息を吐いたタマちゃんが、右手の人差し指を立てた。


「もし、試合を学校ごとボイコットして、相手がキレたら? ドッジボールじゃなくて、今度は直接町に魔法が降ってくるかもしれないんだよー? なんでドッジボールなのかはわからないけれど、魔法を使える相手が、魔法を使わずにいてくれる保証はないしー、それで地域が植民地にされた後にもっと酷い目にあったらー? 侵略者、略奪者が敗残兵や、女子供に何をするのか、わからないわけじゃないよねー?」


息を飲むゴリ松先生。


「修は子供に何を教えているんだ………。」


ボソリと呟くゴリ松先生。修さんがどうしたんだろう?


「た、タマちゃん、ど、どういう、こと?」


クロちゃんが不安そうにタマちゃんに聞くと


「負けたら酷い目に、逃げても酷い目に会うかもってことー。」


なるほど、ひどいこと………

酷いことって、つまり………


「ま、まさか、無理やり………」


「ん?」


ぼくはブルブルと震える。


「無理やり、セロリを食べさせるとか!?」

「んん???」

「無理やり、お風呂に入れるとか!!」

「ひっ!」


ああ、なんて恐ろしい!


そんな想像をしただけで、ぼくだけじゃなくて、クロちゃんも真っ青になっている!


「せ、先生! 絶対に勝たないと! 逃げてもいいことないよ!」

「そ、そう、だよ。無理やりお風呂なんて………! 耐えられない………!」


ぼくとクロちゃんが必死で訴えると、なぜかタマちゃんは目を瞑って眉間に指を当ててフルフルと首を振って


タマちゃんとゴリ松先生が揃ってため息をついた。


あれ? なんか違った?


「先生が私たちを守りたいのはわかったけどー、私たちも譲れないものがあるのー。明日が休校だっていうのならー、私たちは勝手に有志で集まって勝手に試合するよー? それでもいいのー?」


「む…………」


「だったら、初めから先生たちが優秀なメンバーを集めてちゃんとしたチームを組んで欲しいなー」


「………。」


タマちゃんの訴えにしばらく黙考した先生は


「校長と行政にも確認をとってみる。」


「ありがとー! せんせー!」


なんとか抗うチャンスはもらえたみたいだ。




よかったぁ

これで、明日のドッジボールのメンバーになれたらいいなぁ







続きが気になる、絵が可愛い、FA絵を描きたい、とちょっとでもおもったら


☆☆☆☆☆(これ) () ★★★★★(こう) よろぴっぴ

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