第2話 ★澄海【ドッジボールで世界を救う?】
第二話 スカイ【ドッジボールで世界を救う?】
その日、世界は唐突に姿を変えた。
謎の組織が全世界に大音量で宣言した。
『今この時より、この地球の侵略を開始する。侵略を防ぐことができるのなら、防いでみるがいい。ただし、勝負は12歳以下のドッジボールで受けて立つ』
「なんでなのー!!?」
「なんでやねん!!!」
タマとおっちゃんのツッコミがうちの庭に響く。
ん? このタイミングで自己紹介? まあいいけど。
僕は澄海。上段澄海
ママが霊媒詐欺師で、パパがハーフ宇宙人。
ママからの言いつけで、霊媒師としての特訓を行っているところだ。
ちなみにおっちゃんはママの一番弟子。霊媒師よりも呪術師としての適性が高いみたい。
ウチで猫たちとおっちゃんと一緒に霊媒師の修行を行っていたんだけど、なんか急に世界の法則が変わったとか異空間から異なる生命体が地球にやってきたとかで政府関係者が大慌てだ。
「どどどどーしよー! おっちゃん! ここ、漫画の世界だったのー!? レベルファイブ!? 超次元ドッジボールが始まっちゃうのー!?」
「なんでドッジボールで侵略をすんねんとかなひけU-12なのとか言いたいこと色々あるねんけど、普通に武力で戦争するとかなかったんかいな!! いやまぁ戦争になったら困るけどさ。」
僕は冷静に居間のテレビをつける
すると、緊急速報が流れていた。
「………おっちゃん、猫たちも。テレビ見て」
おっちゃんとタマ、ティモ、クロたちを手招きして居間に呼ぶと
『現在、謎の侵略者に学校でドッジボールを挑まれ、敗れた学校の地域はどんどん植民地になっている模様です!』
「どこからツッコミ入れたらいいのー!!?」
『アメリカ、テキサス州にて、行われた領土防衛戦ではバスケットボールの期待の星、ジョージ選手率いるドッジボールチーム、スーパーリベンジャーズが異世界のチームとの試合を行われましたが、内野選手が全員アウトになり、テキサス州は侵略者の手に落ちました』
「アメリカさんーーーー!!! 各地域の命運を小学生に託すのってあり!!? どんな世界線なの!!!」
『相手チームの情報ですが、魔法? のようなものを使っている模様です。防衛戦のルールでは反則ではないようです』
「おっちゃん! ちょー次元! やっぱり超次元ドッジボールだよコレー!! キャッチする時に『ゴッドハンド!』とか言いながら片手でキャッチするんだよー!! 不思議なオーラとか使うんだよー!」
「いや、おっちゃんたちかて霊力妖力使ってなんや妖怪とか退治してはりますやん、タマちゃんや」
「そーいやそーだった!!」
『どうやら相手のチームはエルフのようです。耳が長くて美少年美少女、そして魔法が得意であるとの情報が届きました』
「どーやって届いたのーーー!!!! っていうかなんでそんな情報なの!?」
『美少年………じゅるり』
「このアナウンサーどうにかしてーーーーー!!!」
自称ボケ担当のタマのツッコミは、ウチの庭の青い空に溶けて消えた
★
世界が侵略を受けて早3日。
日本の小学校も複数の襲撃を受けているらしい。
負けた学校の生徒は異世界に連れて行かれてしまっている。
狙われるのは小学校。
そして、植民地になるのはその小学校の学区。
小学校の数は日本全国で1万9000校
一つ一つ侵略を行なっているらしい。
相手側の侵略におけるルールの一つとして
その学校の代表を集めてもらい、その上で
ドッジボールを行う。
負けたらその学校の人間は人質となってさらわれてしまう。
勝ったら防衛成功。
しばらく侵攻はストップする。
もしかしたら、再戦とかあるかもしれない。
勝ったところで、侵攻を遅らせるだけで、相手を侵略できる訳ではない。
「………ドッジボールで決着をつける云々は別として、あまりにも地球人に不利な条件で闘っているね」
と、僕がボヤくと
「せやんね。勝って防衛したところで旨みがゼロ。噛んだ後のガムや。」
「………ちょっと何言ってるかわかんない」
おっちゃんが返してくれた。
前提条件が、相手の勝利は侵略。こちらの勝利条件が防衛。
こっちが逆侵攻をしているわけではないし、防衛したところで、また次の侵略が来るかもしれないのだ。
おっちゃんの言う通り、勝っても旨味がない。
まあ、僕としては興味ないけどね。
「………別に僕、分析が得意とかそう言う訳じゃないんだけど、いろんな国のいろんなチームを見て、相手のチームについて少しだけわかってきたよ。」
「スカイくん、どういうこと?」
僕がちゃぶ台に頬杖ついてテレビを眺めて呟くと、頭の耳をコチラに向けた後、ティモが振り返った。
「………相手のチームにもぼろ負けしているチームと勝っているチームがある。」
そうなんだよ、どこの地区の小学校が防衛を成功した、とか。
そういう情報も飛び交っている。
つまり、勝てるんだ。
「ほ、本気で侵略、している訳では………ない、のかな」
クロが胸の前で両手を組んで僕を見つめる。
僕はため息を一つついて
「………わかんない。まあ、相手も同じ12歳以下ってことだから、勝てるチャンスはあるんだろうね」
「なるほどー。わたしも慣れないツッコミばっかりしてしまったけれどー、冷静になってみればー、相手のチームごとに複数のコンセプトがあるっぽいねー。統一パーティって感じー?」
タマがいつもの調子を取り戻したのか、食い入るように画面を見つめる。
色の違う左右の瞳の瞳孔が細くなり、肉食獣本来の獲物を狙う瞳となる。
「ほう、タマちゃん。例えば?」
おっちゃんがそう問えば、画面から目を離して、タマはおっちゃんのあぐらをかいた膝の上にぽすんと収まる
「んふふー。例えば、エルフ統一。猫獣人統一。犬獣人統一。ドワーフ統一。黒色人種統一、とかだねー。相手が魔法を使わない人種なら、割と勝ち目はありそうかなー」
「相手も同じ小学生くらいで、チームを組むとしても、近しい相手とでなければ連携は出来んからな。息を合わせるためにも、似たような能力を持つもので固めているのかも?」
「それかー、あちらさんも種族ごとで仲が悪いかかなー?」
「ああ、派閥争い。どこでもありそーやんね………! そういや、国家間でよく仲が険悪になるのって大概隣国なんだって」
「へー。じゃあ獣人であっても種類で分けて複数の個性を同じチームに入れないのは、仲が悪いからー? ご近所トラブルや隣人トラブルなんかも距離が近いからこそ起きるのかもー」
「かもかもー」
「んふー!」
背中のおっちゃんを見上げてバンザイするタマに、おっちゃんはぷにぷにーっとタマの両頬をつんつん。
タマはくすぐったそうに目を細めた。
「…………あと、やっぱりなんで12歳以下に限定しているのかわからない。試合会場に自衛隊を派遣しても、謎のバリアで大人は弾かれるらしい」
僕はスマホに目を落として少し詳しく調べてみた。
「こういうのは、ゲームとかでは大人は机を囲んで陰謀してて、子供たちが兵士となってドッジボールをしている説が有力やな」
「………漫画じゃあるまいし」
………。 ??
ん? ここは小説の世界?