鼓動
オレンジの弾丸に似た余香
水溶性の劇薬
ムーサの心臓の欠片の模造へ
熱狂する人々の時代
本当は事を急いてはいけない
ゆっくりと始めなくてはいけない
何故なら答えは遥か遠くに遺しているからだ
貴方はどこにいるの
出撃を待つ朝のような身体
濃霧を掻き分けて道を見出す腕
まだ走れるはず
まだ見つけられそうな気がする
貴方はどこにいるの
彼の地に雨が降る
それはまるで告げられた嵐の前の夕日
美しいものが光る度
風邪を引いたように力が抜けるけれど
私は本当に心ある機械なのか
根の無い野花のように
いつまでもなにも知らないままの幽霊のよう
磨かれないままのグラナイト
抱きしめて苦い涙を流していたら
生まれ変わった天使がそこで眠っていて
ぞっとした幻視をずっと覚えていて
同じものがどこかに埋まっている?
誰かが持っているのだろうか?
例えその時私達がどんなに不完全でも
銀が零した光で記された言葉は
出口をこじ開けてくれるだろうか
それとも不在の標を知るだけだろうか
貴方はどこにいるの……
恋慕という言葉に閉じ込められたものを知る過程は
きっと何者も信じないままの漂流から始まるのだ
見捨てられた劇場
濃紺の細いジーンズと白いシャツ姿で
緩く脚を曲げ爪先を地に立てた
打ちひしがれた風に押され
闇の中の白を見つめる
そんな人がいるかどうか私は知らない
分かるのは
深く息を吸い
宙を飲み
すべてはゆっくりと
急いではいけないということだけ
そして静かに
誰も知らないうちに
始めよう




