第1章 不幸の連鎖
マウレリア悲しい感情、夜明けが近づき花々が光と共に現れる。)
(光の霊たち、弱った霊をなだめる 後に歌う)
幼子よ 怯える魂に今宵も安息の平和を
広がる彼方の夢を仰ぎ見てそなたの心もときめくだろう 明日の光を信ずるのだ さぁ夜明は間近だ
朝明にしかと映るは神聖なる光励ましに
逞しく顔を覗かせた花びら
闇の簾をゆるりと開けば
彼らは天国のような世界を象るのだ
三色菫 庭園に満ちわたり
背は低いが身は美しき乙女の群れ
紅に肌を染めて
人々の冷えた心に温かな光を
紫菫 人々を和ませ
永遠の祝福と共にあれ
黄色の花々よ 愛と歓喜に満たされよ
さぞその太陽のような輝きは永遠の喜び
を生む
マウレリア どうしたことか 負の感情をかき消す様な小さいようで大きなどこか切ない光 これが光と言わないならどこからが本源だと言うのだろう
暴走する禍々しい魔力とはうって違い完全なる秩序と法のもとに集いしかれら
それらがこぞって結束する時光は本質を変える 愛により初めからあったはずの願わしき平和を歌う 炎はまことに喜びを覚え燃え盛る
主からの力によりさぞ迫り来る時闇の大群は恐れをなす 四方八方へと飢え乾きを覚えながら荒野をさ迷う やがてくる滅びにたじろぐかのように 長い砂漠の中を大海のくらい闇の中をさ迷い歩く
わたしをゆっくりと導く手はほのかに温かくしかし小さな花のように繊細でどこか頼りなくも思える 私が知るぞ知った時からいつものように優しく微笑みかけている その長い髪は愛を翼とし静かにはためかせている
花と花が結束され異なるいくつもの感情を醸し出す
種子たちはいまかと誕生の瞬間を待ち侘びる
上を見上げれば 高鳴る胸を優しく包み込む雄大な空がわたしをどこに行こうとも見失わずただ静かに見守っているのだ
そしていずれは知る 揺るがない栄光が我らに囁きあい果てしない万物の偉業を日ごとに告げる
それは賛美
夢でうなされるとき人はおののきのうちに助けを呼び求めるがひとたび覚めれば
人々のなかではやがて語られなくなる
光の世界は昔の古い言い伝えのようにいつも謎だらけの答えを残してこの世界を覆っているのだろうか
ジュリア アレクシス様 どうしたんですか?そんなに暗い顔して
マウレリア (感情) ジュリアの霊が働いたのか 明るい髪に白い肌 いつもあなたはささやかな宴と平安でわたしを招いてくれる
よくありがちな王族気取りの言い方はしたくないが あなたは私の楽園であり陽気な歌を流している歌うたいのようだ
ああ例えるならあなたの麗しさは歓楽のひとときとともにあの美しく夢心地にすら感じさせてくれるブルーマリンみたいだ
そこで自由に羽を伸ばしていつまでも争いごとのない時代にわたしがいつか……
(平静を取り戻して)
ジュリアか いやこれはこれは 少し
気持ちが滅入っていた あなたの前で
あまり取り乱ししたくはなかったのだが
見破られてしまいましたな
あなたはいつも人が良すぎるくらい他人のことに気をもんでいる でもあなたは心から隣人を愛している 以心伝心とまではいかないがわたしには伝わるのですよ それはあなたの愛でありどこの土にもうまっていないあなたの気高い特質という宝なのです
ジュリア まぁそんなふうに言ってもらえるなんて光栄ですわ
マウレリア
わたしはね
霊だ 魔力だ騒いでいる血に飢えたギルドの者達を見ると馬鹿馬鹿しくなってね
みな誰かから力を与えられているか知らないのですよ 全ては上から与えられし力よ 不器用な人間たちはそれを上手く制御できずすぐにまたふんぞり返ってしまう
ジュリア そうですね あなたは正しいと思います あなたに反論しようと誰も立ち上がるものはいない あなたは全てを悟りながら王として支配を行っている しかしどうか気をつけて あなたのような才知を備えた方はあなただけではありません
あなたをしばし観察しているヴィヨン教皇様もあなたをただでは置かないでしょう あの方は自分より強大な霊を持っているあなたに腹を立てておりますゆえ どうも嫌な予感がするのです あなた様とのあの方の関係を考えただけで頭痛がしてきますわ
マウレリア 君って人は本当にすぐ心配を抱えてしまう わたしのことはあまり悩みの種にしないでいただきたい わたしのただそばにいてこのわたしに誓のキスをして頂きたい
ジュリア(少し取り乱す)……しかしそのようなことは許されません あなたと私の立場をよくお考えください このまま進んでしまえばどうなるかはあなたが1番よくおわかりでしょう
マウレリア 模範解答をしたみたいな感じだ あなたはつまらないものにいつも振り回される右往左往にあなたの感情は揺れ動き果てが見えない 狂った羅針盤のようにあなたは行き着く先を知らない いつも誰かの心配ばかりする わたしが力を尽くして導き出しあなたの手を取って行くつもりだった あなたはいつも私を心配していた 悲しそうな瞳に偶然ではない響きを感じた 私は確かにあなたと過ごした日々を見て何事も無かったなどとはいえない 少なくとも壊されるならその方があなたから感じたこの悩みと不思議な苦しみも終わり楽になれる 率直にあなたの意見が聞きたい
ジュリア そのようなことを申されましても
わたしはあなたに幸せになって欲しい それがわたしの只一つの純真な願いなのです
わたしがあなた様と顔を合わせている それだけでもおこがましい事なのです どうかこれ以上わたしに恥をかかせないでくださいまし
マウレリア なるほど あなたは問題から遠ざかってしまう わたしにだって感情が勿論ある あなたには己を正す力も愛に動かされる勇気もある それはつまりあなたが私に対し抱いていたのはちっぽけなものだった 少なくとも好意は持っていない そういう事だ
ジュリア そんな……わたしはただ……
マウレリア もう分かっている 次にはどんなまやかしがあるか 失礼した また良い機会に会おう
ジュリア 私だってあなたのことが…… (悔し涙を見せる)
マウレリア(感情) やはりそうだ 私のほしいものなど何処にもない 手に入らない 淡い期待は水晶玉のようにどの角度から眺めてもなるほど美しくできているか手からずりおちる時は一瞬だ 跡形もなく残酷に砕けて散ったらもう元に戻らない そう出来ている それがこのわたしの現実である
いつもそうだ
晴れ間がやがて雨に変わる
ジュリア 雨……あの方の感情が現れているの?
マウレリア さてギルトを集めねば しかし皮肉に嫌なものを思い出すな チッ なぜあの芋やのっぽ野郎が私の記憶に入り込んで私の思考の邪魔を……学生どもめ わたしとしたことが…… にわかなことだ 哀れなのは私ではないのだ 呪われた世代よ
天界の領域
主の前に最初の反逆者サタンが現れる
サタン では私から先に
地上ではあなたの力添えでさぞ楽しく拝見させてもらっています
さてこの時代の移り変わりとともに人間は進化こそ遂げてはいないものの変わりに知識を得ることで魔術や霊の力により私たちと似た造りになりました
そこで私は少し興味をもったのです
この変妙なあなたの力と私の魔力をもった
人間たちが本能を剥き出しにすると一体どんな面が拝めるのか あの男ですよ わたしでさえもう言わなくてもあなたが特にこのものを
愛ししたっていることくらい分かります
主 アレクシスのことか たしかに私は彼を高く評価している
どの人間も羊飼いのいない羊のようにゆくべき道を知らないでいる
だがあの者は人々とは異なっている
わたしのおきてを愛しただ彼一人が真の愛に近づこうとしている
サタン 然しそれだけではない筈です 彼は感受性豊かで人々の心を理解出来る あの者はまだ気づいてないようだが膨大なあなたの力を発揮出来る いまは少しばかり知恵が足らぬので力をすべて制御できないが十分です
そして公正をこよなく愛する狂った迄の正義感、あなたの四大特性を見事に備えている
そして心に闇を抱えている
手筈は整っています
主 わたしはあのものの力を高く評価したわけではない
本当の美しとは精神に現れるのではないか 苗木に水を注がなければやがて枯れてしまうように純粋な心がなければ何も意味が無い その大地にとって何ら混じり気のない水を天からふらせたのはだれか
お前はあのものとわたしが似ているというのか なかなか妙なことを申すな
それにしてもあの者に対しそしてわたしに一体何を企んでいるのか?
サタン はっきりと申し上げますが別に私はあなたをからかってはおりません ええ 無論わたしも無駄足は御免こうむります
わたしは単なる「悪」ではなく人間の本質を見たいのです
ですからあのものから大切なものを奪わせてください
そうしたらきっと彼はこういうでしょう
「誕生から終わりに至るまでわたしは何も見出すことは無いと」あなたを憎み恐ろしい形相を魅せるでしょう 彼なら
主 あなたは全てを任されている 自分の望みを叶えるが良い
サタン 仰せの通りに