#5「あなたはずっと特別で」
あれからさらに一週間ほど時間が経っていた。
バイトも学校も休みが重なっていて、無理やりにでもバイトを入れてもらおうとしたが、これ以上は居られると困ると言われて、時間をつぶす用事がなくなってしまっていた。学校での課題も一通り終えてしまっていた俺は、寝室でパソコンを弄るのも億劫になり、リビングに置かれているソファに寝転びながら次の予定を確認していた。
そうはいっても、男の一人暮らしだ。入っている予定を消化しても時間は余る。まだしばらく暇な時間が続くことから目を背けたくて、何をしようかと天井を見上げた。
掃除するほど汚れてもいない、新しめの天井。同じ間取りの家だからだろうか。それだけで彼女に出会った時の事を思い出して、ついついコルセア様の事を考えてしまう。
コルセア様は、あれから一度も配信をしていなかった。
他のネット活動もあからさまに数が減り、不安になった俺は何度かは彼女の様子を見に行っていた。あの日から数回は足を運んだのだが、いつも体調が悪いことを理由に門前払いだった。
これ以上しつこくするとファンとしても隣人としても境界を超えると思った俺は、彼女が何かするまで行動できずに待つしか選択肢には存在しなかった。
正直、そこまで心配せずともコルセア様が配信自体をやめることはない。……と思いたい。
仮に彼女がネットでの活動をやめてしまったとしても、それは彼女の自由だし、ライバーのコルセア様のファンである以上、彼女の意思は尊重したいとも思う。
辞めないようにうったえることもできたが、俺が何かを言う資格なんてどこにもなかった。自分がファンだけならまだしも、カンバスの鯉が好きと言った彼女には特に、だ。
「もしかしたら、彼女が影響を受けたと言っていたカンバスの鯉が居なくなった後のコルセア様もこんな気持ちだったのかね」
誰にも届かない独り言がむなしく天井ではね返った。
「今回の事で俺が彼女にできることはもうないのかもしれない」
そう思って、とりあえず動こうと体を起こそうと――、
ピロリン。
胸元に置いたままの携帯から、メッセージの着信音が鳴った。
「こんな時間にメッセージ? 誰からだろ」
慌てて携帯を手に取って画面を確認してみると、そこには千歳さんの名前と『お呼び出しでーす』とどこか緊張感が抜けてしまいそうなメッセージが届いていた。
手元に届いたメッセージのタイトルに首をかしげる。
「千歳さんからの呼び出し?」
何が起きたのかと内容を確認してみるが、日時も場所も書いておらず、『できるだけすぐに来てね』とそっけなく書かれていた。
千歳さんの性格を考えるに、急ぎではあるが用事の都合はつくと言った意味合いがあるはずなので、呼び出しに応じるかどうかは俺の都合しだいと言った感じだろうか。
意味は分からなかったが、用事もないし、お世話になっている大家さん直々の呼び出しを無視するわけにはいかない。『すぐに行きます』とだけ返してから外に出る支度を始めた。




