無料サービスの在り方と、サービスする側の収入について
私事で恐縮だがね。
僕はいま、荷物の宅配サービスをやっている。とはいえ、客に直接会うことはない。何しろほら、僕は倉庫担当だからね。
最近ではすっかり見かけなくなったけど、僕が入社した当時は、たくさんの『とある通販業者』からの荷物があふれかえってたんだよ。そう。赤字覚悟の『送料無料サービス』ってやつだ。
すると、たまに会社にクレームが来ることがある。荷物の到着が遅いとか、時間通りに来なかったとか、中身が損傷していたとか、そういった内容だね。
そういうクレームも、僕は甘んじて受けていた。始末書だって文句を言わずに書いた。ただ、お客様にきちんと荷物を届けられなかったことが心残りだった。
――最近、こんな話を聞いた。
「金も払ってないくせに文句言う客って嫌だよな」
僕はその意見に、ちっとも賛同できなかった。
いいかね?僕らの時給は常に一定だ。客が金を払おうと払うまいと、僕自身の給料がそれで上下したことはない。だから僕にとって、無料の荷物を取り扱うのも、有料の荷物を取り扱うのも同じ気持ちだった。金を払うか払わないかに限らず、僕に仕事を与えてくれる契約相手はみんなお客様だ。
もちろん、重量オーバーで追加料金を支払ってくれる方や、いつも同じ荷物を定期的に預けてくれるお得意様もいるにはいるが、だからと言ってそのお客様の荷物を特別扱いしたことはない。
僕は客から直接金を受け取っているのではない。雇ってくれた会社から金を受け取っているのだ。
そして、客も僕に直接金を払うことはない。会社に金を払っているのだ。
それを忘れて、自分はのうのうといつも通りの給料をもらいながら、「あ、こいつは無料配送の客の荷物だ。じゃあ雑に扱っていいや」など言語道断だ。それはお客様に対する裏切りであるばかりか、雇ってくれた会社に対する裏切りでもあり、給料泥棒に等しい行為である。
客が金を払わないのと、
僕らに給料が払われているのとは、
全く別の問題だ。
さて、ところでこの考え方。あくまで僕の独自のものであるらしい。世間一般には『金さえ払えば何してもいい』『金を払わないやつには何をしても許される』みたいな風潮が流れているらしくてな。
よく、このサイト『小説家になろう』の運営に対する悪口を言うと、『金も払ってないくせに文句を言うな』とか、『無料でサイトを利用しているくせに何を偉そうにしているんだ』とか、そういった批判が来るという噂を聞いた。
確かに運営会社であるヒナプロに金を払っているのは、我々ユーザーではなく、(おもに美少女ソシャゲの運営をしている)スポンサーだ。だからこそ、金を払ってない我々は運営に感謝こそすれ、文句を言うことはできない。
……本当にそうか?
こういっては何だが、あー。それは例えばわが社が無料配送の荷物をお客様に届けた時、
「中身が壊れてたんですけど」
と言ってくれたお客様に対して
「無料で運んでんだから文句を言うな。嫌なら自分で持っていけ!」
と返すような話と何が違うのだね?
ヒナプロは偉いと思うぞ。
無料でこのサイトを立ち上げたことにより、新常識を作り上げた。
『小説は、誰もが自由に書いて、誰にでも自由に見せることができる』
という新常識だ。出版社の自費出版サービスなどでは、まず実現しなかった世界を作り出したと言える。そんなヒナプロは、今でも『無料ユーザーを無料だから無下に扱う』と言うような態度を示していない。実に謙虚だ。
もっとも、彼らヒナプロ社員だって、我々が金を払ってなくとも、会社から給料は出ているわけだからな。当然の業務と言える。
仮にヒナプロ社員がユーザーを無料だからという理由でないがしろにしたなら、それは会社に対しても株主に対してもスポンサーに対しても裏切りだ。ユーザーに対する裏切りなのは言うまでもない。
そんな会社じゃないと、期待したいがね。
さて、あまり言いすぎると、そろそろ意味不明な批判が来そうだ。『だったら俺たちに金よこせ』とか言ってくる輩がいるかもしれない。
そろそろ今日は引き上げよう。
ああ、ちなみに感想欄はフルオープンにしてみた。応援メッセージなど、待っている。
あまり的外れな批判でなければ歓迎しているし、的外れな批判も歓迎しないが受け付けているよ。
では、お休み。
次回は、
昭和の頃には実在した物々交換が、現代で禁止された理由。国は税金を取るために、すべての国民を管理したがっている!?クレジットカードに隠された真の意味とは――
について書いていきたいと思わない。
つまり、全然違う話になる。