第十話
今回は少し長めになりました…。
次話が短めなので本日の12時に連続投稿します。暇があればそちらもどうぞ。
脳内マップを頼りに歩くこと数時間、劣等竜の体には未だ慣れることが出来ずここ迄来るのに時間を使ってしまった。
(小回りが利かないのは盲点だったな…)
劣等竜の図体は案外大きく、一度道を間違えてしまうと少し回ってから戻らないといけないのだ。
その為俺は何度かイラつきながらも漸く魔物の村迄たどり着いた。
(それにしても夢で見たのより元気が無いな…)
到着早々、俺はそんなことを思いながら森から顔をひょっこりと覗かせていた。
住民は夢で見た通り数種族いる。
だが彼らの顔には疲労や憤りなどの色が浮かんでいる。
何かあったのだろうか?
気になったので訊ねようかと思ったが俺は一歩踏み出す前に思い止まった。
(今の俺は劣等竜なんだぞ、出て行ったら怯えられるだろう…)
俺は自責し、その場に立ち竦む。
俺には何も出来ないのか、と考えたその時、一人の蜥蜴顔の男がゴブリンの様な魔物に話し掛けた。
俺は劣等竜の耳を澄ませ話を盗み聞く。
「オーク共の様子はどうだ?」
「オーク共は前線から一歩も動いていない」
「そうか……オーク共めッ、この村までその胃に入れようと言うのかッ!」
「村長…」
村長と呼ばれたゴブリンは拳を握り、その姿を見た蜥蜴顔の男は苦虫を噛み潰したような顔をした。
ふむ、話の内容から察するにこの村は今、複数のオークによって攻められている。そしてそのオーク達は前線を守りながら休憩していると言ったところか…。
しかも被害はこの村以外にも存在する、と…。
この世界のオークは中々に強敵なのかもしれない。
冷静さを取り戻した村長は苦しそうな表情のまま、蜥蜴カの男に訊ねる。
「村の女子供は眠ったか?」
「はい。……ですが何かを感じているようでなかなか寝付けない者もいたと…」
「あいつらには何も知らないままいてほしい…」
「それももう厳しいのではないか?」
「だがッ!……この村は身寄りの無い者たちの憩いの村なのだ。その村に脅威が迫っていると知れば、あやつらの居場所がなくなってしまう…」
この村は身寄りの無い魔物の憩いの村。
その様な場所に危機が迫っていると知れば、住民はどうするのか。
考えただけで憤りを覚える。
「オークを倒し得るのはオークよりも上位の種族のみ……この大森林にオークを超える種族などオーガしか…」
「あやつらは他種族には不干渉だ………一体どうすれば良いのだ…」
村長が頭を抱えたその時、俺は一歩、また一歩と前に踏み出した。
「なっ!」
俺の存在に気付いた村長は驚きを隠せないといった表情で俺を見た。
それは村長の隣にいた蜥蜴顔の男も同じで、蜥蜴顔の男は村長の前に出て俺から村長を庇おうとしている。
「グウ…」
(安心しろ、我はお前達の敵では無い)
一応俺は意を込めて言ってみたが……通じただろうか…。
俺がギロリと猛禽類の瞳を村長に向けると村長は短い悲鳴を上げ、「本当なのか?」と問うてきた。
その問いに俺は頷く。
「ガア…」
(すまないが話を聞かせて頂いた。どうやら困っているらしいな?)
村長はゴクリと唾を飲むと俺に一歩近づいて来る。蜥蜴顔の男はそれを止めようとするが村長が手で制しやめさせる。
「助けて、くれるのか…?」
「ガア…」
(それは報酬によりけり、だな)
「報酬……すまないがこの村には食われて良い者はいない…」
「グウーー」
(我は魔物など食わん。我が望むのはーー)
「望むのは……?」
「ーーグア…」
(ーー美味い料理だ)
俺が言うと村長は頭を下げて頼んだ。
俺はそれを了承し、視界の端に光りが見えたのを確認した。




