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倉庫

 図書館と倉庫は近い。歩いてすぐの所にあるが、図書館よりも奥まった場所にある。

 二人は倉庫の曲がり角まで来た。そっと倉庫の前をのぞいてみる。倉庫番のおじいさんは居た。椅子に座りながら(うつむ)いている。やはり寝ているのだろうか。

「ほら平気よ! サイ! 倉庫に入るわよ!」

「待ってよララ」

 堂々と倉庫へ向かっていくララに忍び足で着いていくサイ。

「マグロの刺身が美味いのう……むにゃむにゃ」

 おじいさんが寝言をつぶやいた。海が汚染された今では刺身を食べる事はもうできない。

「あらあら、美味しそうな夢を見ているのね。”サシミ”は食べた事ないからいつか食べてみたいものね」

「起こしちゃうから声を出しちゃダメだよ」

 二人はそっと扉の前へ行く。目を合わせ(うなず)く。ララがドアノブを掴み、ドアを開ける。古い建物なので(きし)む音がしたが、おじいさんはサーモンを食べ始めたので平気だった。


 倉庫の中へ入ると少しカビの匂いがした。ドアをそっと閉める。すると、辺りは真っ暗になってしまった。

「うわぁ! 何も見えないよ〜」

「サイは怖がりね。ほら! これで大丈夫よ!」

 ララはどこからか懐中電灯を取り出した。

「そんなものがあるなら最初から出しておいてくれよ!」

「ふふ。ちょっとサイを驚かせてあげたかったのよ」


 二人は倉庫の奥へと進んでいく。昔はありふれた物も、今ではもう珍しい物となってしまっている。

「見て! これは自動車って乗り物よ! 本の挿絵でしか見たことがなかったから、初めて見た時は感動したわ!」

 はしゃいでいるララにサイは注意をする。

「僕たちは遊びに来たわけではないだろ?」

「そうだけど……せっかくだから楽しまないと!」


 倉庫内の物を次々と見回していく。しかし、花火を打ち上げるための筒は中々見つからない。倉庫内を一周して自動車の所まで戻ってきてしまった。

「”ツツ”っていう物はどこにあるの?」

「きっとこの辺にあったはず……」

 無造作に置かれたガラクタたちを押しのける。

「さっきも見た場所じゃないか。本当は見間違えただけなんじゃ」

「そんな事はないわ! 今にでも見つかるはずよ!」

 ふとサイは上を見つめてみる。暗くてよく見えないが、何か自分の身長よりも高い場所に置かれているように見えた。

「ねえララ。あれは何だろう」

 サイは先程の何かを指差す。

「懐中電灯で照らしてみるわね」

 すると、現れたのは棚の上下に置かれた筒と丸い球だった。

「サイやるじゃない! あれが私の見た筒よ!」

「下にある丸いのは打ち上げるハナビかなぁ?」

「とにかく取ってみましょ!」

 自分より高い場所に置かれている物なので背伸びをしても届かない。

「ねえサイ。私を肩車してくれない?」

「しょうがないなぁ」

 肩車をすると、ちょうど花火の球が目線の高さになった。ララはそれを取る。

「やった! 取れたわ! でも何だか大きくてとても重いわ。筒を取るためにはこれは邪魔ね。落とすから受け取ってね」

 サイの返事を聞く間もなく下へ落とすララ。

「ちょっと! 懐中電灯持ってるのはララだけなんだから見えないよ!」

 何とか目を凝らして球をキャッチするサイ。しかし、それによって肩車のバランスが崩れる。

「うわぁ! 今度は私が落ちるわ!」

 思わず棚にしがみつくララ、それによって棚が傾き始める。そして、次の瞬間……。


バァァァン

カランカラン


 棚が倒れた。ララとサイも一緒に倒れる。大きな音が鳴る。ラッキーな事に二人に怪我はなかった。棚が直撃しなかったのが幸いした。

「いてて……。あっ! 筒が目の前に転がっているわ! ラッキーね」

「何がラッキーなもんか! 危うく大怪我する所だったぞ!」

「済んだ事は気にしない気にしない! さあ、帰るわよ」

 しかし、二人にとって残念な事に、それは済んだ事ではなかった。

「おい! 誰かおるんか!」

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