転生先の世界の文化水準が前の世界とそんなに変わらない件
某声優さんが、異世界転生の転生先が文化レベルが低いって言ったので思いついて書いてみました。
激しい衝撃とともに視界が暗くなる、たしか横断歩道を青になったのでわたってる最中だったような……、
ブラック会社だと気づいてから、なんとか辞めようとして、
そのたびに辞表を受け取る上司は逃げ回り、受け取っても受け取ってないとされること数回……。
最後は、上司に延髄蹴りからのバックドップを決め、その手に辞表を握らせたのをスマホで写して社内メールにばら撒くというかなり強引な手を使って、辞表を認めさせるというホトホト疲れた状態になったわけだが、普通であれば傷害事件として処理されるんだろうな~、警察の介入を嫌った常務が警察や裁判所に届けない代わりに穏便に退社手続きをしてくれたおかげで、やっと自由になれたのに……。
「あ~、ついてない……」
こういうのが走馬灯なんだよな~と考えてると、しだいに周囲が明るくなりだした。
「おぉ、死後の世界って本当にあるんだ」
明るく靄がかった場所を進んでいくと、さらに明るくなった場所にでる。
「……神様でも出てきそうな雰囲気だな」
周囲をキョロキョロと不審者のように見ていると、一人の白い服着た爺さんが近づいてきた。
「お仲間かな?」
こんな場所で会うんだから、死んでるんだよなとか思いながら近づいていく。
「おぬしは、三辺敏郎で間違いないか?」
と聞いてくる爺さん。
「いや、俺の名前は三辺藤四郎だけど……」
言った瞬間、その爺さんがマジで驚いた顔をしてくる。
「ほんとに、三辺敏郎でないのか?」
ちょっと引き攣った顔をしつつもう一度聞いてくる爺さん。
「いや、たしかにちょっと響きは近いんだけど俺の名前は三辺藤四郎って名前なんだけど」
もう一度名乗ると、爺さんは下手な口笛を吹くような表情で
「おぉ~、三辺藤四郎さんか……、うん、問題ない問題ない」
この爺さんがしている表情には見覚えがある、俺が出した辞表を受け取ってないと言ってた時の
上司の顔だ。
「というか、爺さんって何者?どちらさま?」
そんなことを聞いても、しょうがないよな~とか思いながら聞いてみる。
「あぁ、これは失礼した、儂は神じゃ」
まさかな~とは思ったけど、ほんとに神って名乗ったよ。
「いやいや、神って……、冗談でしょ?」
というか、自分で神って名乗る人ってヤバイ奴系だよな。
そんなことを言う俺に頭の後ろ辺りを指さし、
「ほんとに神だって!ここに聖印見えるじゃろ?」
確かに、爺さんの頭の後ろは魔法陣のような模様が輝いている、そんなことを考えてると爺さんが俺を指さし、ちょっと作った威厳のある声で、
「三辺藤四郎よ、おぬしは死んだのだ」
と伝えてきた、まぁ、そういう感じだろうなとは思ってたので、たいして驚くでもなく
「やっぱり、そうか……」
そんな態度の俺に、爺さんはマジマジと覗き込み、
「あんまり驚いておらんのぅ」
と言ってくるので、笑顔を作りながら、
「いやいや、充分驚いてるって、それにしても神様って大変だな、こんな風に死んだ人間に一々挨拶しにくるなんてさ」
会社から自由になったと思ったら、そのまま世界からも自由になったって話だろ。
そんなことを言う俺に、爺さんはちょっと目を逸らしながら、
「いや、今回は特別なんじゃ、おぬしを異世界に転生させようと思っての」
は?異世界?ラノベとかでよく書かれてる?というか異世界なんてあるのかよ。
たしかに、剣と魔法の世界とか興味ないわけじゃないけど……。
これ、ただの夢の話とかってオチじゃないよな、まさかっていう気持ちとマジでっていう気持ちで
心の中が震度4ぐらいの地震がきてるみたいな気分だ。
「どんな世界に行きたい?」
そんなこと聞かれたら、答えなきゃだよな。
「やっぱり、剣と魔法の世界でしょ!それと記憶は残してほしいな!あとはスキルがあって、ステータスが見れて、忘れちゃいけないのはチートな能力!!」
一気に捲し立てた俺に爺さん若干曳きつつ、やっぱりなとか小声で言っている。
「あ、そんなイロイロお願いとかできないのか?」
ちょっとガッカリしつつ聞いてみる俺、最低でも記憶は残したいたいなぁ、忘れてまたブラックな環境とか行きたくないし。
「いやいや、大丈夫じゃ、今言ったことは大体叶えられえるぞい」
マジか!急にテンションが上がってくるのを必死に落ち着け、冷静な対応を試みる。
「最近、こういう場面で言うことが大体同じでのう、ちょっと驚いただけじゃから」
今の口ぶりからすると、そんなに頻繁ではないにせよ異世界転生してる人間っているんだな。
兎にも角にも、俺の人生はこれからってことだよな、頑張って生きててよかった!もう死んでしまったけど、そんなことを頭の中でグルグル考えてる俺に爺さんは聞いてくる。
「今あげた以外に希望はあるかね?」
う~ん、急に言われると迷うな、考えろ~ラノベの主人公はこういう時何貰っていたっけ。
そんな感じに考え込んでいる俺に爺さんは、
「悩みが多そうじゃの~、では成長促進とナビとかはどうじゃ?
できることが増えれば選択肢も増えるだろうて」
それだ!確かに目安にできそうなことが判れば人生安泰だろう。
「うん、それでお願いします」
そういうと、爺さんは満足そうに
「うむ、それでは転生を始めるとしようかの、良き人生になるように頑張るんじゃぞ」
そう言われた途端、意識が遠のいていく……。
「行ったか……、ホントは三辺敏郎って人間を送らなきゃいけなかったんじゃが、
まぁ問題ないじゃろ」
遠くから、そんな爺さんの独り言を聞いた気がした。
『魂の定着および安定を確認、記憶を展開します』
そんな声がしたのをきっかけに俺は目を覚ます、手を見ればたしかに小さい、身体をイロイロ動かそうとするが、やはり動かしにくい、お尻に手をやると紙オムツ……?
紙オムツって、これまた普通だな、ゴワゴワするでもないし、甥っ子につけた記憶の物とそん色ない物だと思う。
「あ~、ぶふぅ~」
口周りの筋肉が重い、口がうまく動かせない、これが赤ん坊の顔の筋肉か……。
辺りを見渡してみる、上にはプラスチック製のグルグル回るヤツ、
ベビーベットは木製、聞こえてくる音に目を向ければテレビ……。
あれ?異世界に転生したんだよな?
ポーンという音とともに聞こえてくる声、
『解、転生は成功しています、この世界の名前は【ルガリア】あなたが前にいた世界とは違います』
わ~マジか、スキルと思われる声が聞こえたので安堵する反面、これだとラノベで読んだ内政チートみたいなことは無理そうだなぁ、リバーシとか将棋で一発当てようと思っていただけに、ちょっとショックだ。
テレビの音の方にもう一度振り向いてみて、さらに驚く。
テレビに向かって「わ~」とか「やらせるか~」とか言ってるのがどうやら今世の母親らしい、
若いな~とか思って見ていると、その手元には何か握られ必死に指を動かしている。
まさか、ゲーム?
『解、そうです』
ダメ押しの答えを聞いてショックを受けていたら、何やら音楽が聞こえてくる。
ポケットをゴソゴソしていた母親が取り出したのは流線形の金属のパネル、
それをピッとすると話し始める。
「もしもし~、アシェス?どうしたの?……うん、うん、……わかった~、……愛してる♡」
激甘の雰囲気だされたことに若干曳きつつ、スマホまで普及してるって……、
これは内政チートは絶望的だな。
俺って、この世界で大活躍できるのかな~?
ポーン
『解、それは……』
落語みたいなオチになった_(:3 」∠ )_