8 勇者の塚
なんと説明しようかと、私は困惑した。
これからお世話になるこの村の方たちに、お礼はしたいのだけれど。
希釈する?飲用専用にして、果汁で割る?
ここで養蜂が出来るようなら蜂蜜が使えるから、薄めて甘味をつければお手軽な値段で女子供も楽に飲める飲用ポーションが出来るかしら。
そうか。
それを目的にして、考えていれば。
そのことだけを、考えていれば。
なんとか日々を過ごしていけるかもしれない・・・
ぼんやり考えこんてしまった私に、村長さんは話し続ける。
「以前の薬師の爺様も、この家の裏の林で薬草を摘んでおりました。
奥の深い森は危ないですが、ここらの林のあたりには、魔物が出ることもございません。
林の中央あたりに、『勇者の塚』がございますのでな。
『勇者』と言う言葉を聞いて、私はビクン、と我に返った。
「『勇者の・・・塚』ですか?」
「古の勇者の墓、と言い伝えられておる小さな塚でございますよ」
「古の勇者のお墓?」
「もう何世代も前の言い伝えで、その方の名も伝わってはおりませんが。
ここは見事魔王を倒し、世界を救った勇者が余生を過ごした場所と言われております。
最後の戦いで深く傷つかれ、長生きはされなかったが、元の世界に思いをはせながら、静かに暮らしておられたと」
「もとの・・・世界?」
「その勇者殿は、転生者であられましたのです」
「転生者・・・」
前世の、異世界の記憶を持った、稀人だったのだ、と。
ミューさんは、譲渡の書類を渡してくれる時、何と言ったっけ・・・
そう、たしか、『勇者に縁のある土地だ』、と。
「以前に都から学者様がおいでになって、いろいろ調べていかれましたが。
『ぱわーすぽっと』とかなんたらいう、おかしな場所になっとって、魔物が避けるのだそうで。
塚のそばで眠ると、勇者殿の夢が垣間見られると言い伝えられております。
そのせいか、時折奇妙なものが出たりしますが、害はありませんので、ご安心ください」
話の途中からまた思いが滑り出した私は、そのまま考え込んでしまった。
元の世界に戻れなかった、古の勇者。
私はほーっとため息をつく。
『勇者』になった人は、みんな、幸せになれないのかしら・・・。




