33 その後
そして、数年が過ぎると、新たな『魔王』が誕生した。
正常ならば、数十年、数百年のサイクルで繰り返されるものが、討伐されてから、これほど早く誕生するのはおかしい。
前回の討伐は、本当に行われたのか、確かに『魔王』を打ち取ったのか、と、資金と兵を提供した各国は、あれほど盛大に『勇者』を送り出した国を、一斉に非難した。
魔王討伐の一行を査問しようとしたが、『勇者』と『僧侶』は死亡。『聖女』と『魔法使い』と『シーフ』は行方不明。『王子』は『魔王』の死を確認したと神に誓ったものの、なぜか挙動不審で、特に「ステータス鑑定」を激しく拒む。
『勇者』の国は各国に莫大な慰謝料を払うこととなり、重税にあえいだ国民はとうとうクーデターを起こし、王朝が交代するという騒ぎになった。
逃げ出した王子は、かっての『勇者の館』に付属した廃園で捕らえられたとか。
とばっちりで打ち壊された修道院に、「私は『聖女』だ!」と叫ぶ狂女がいたとかいなかったとか。
『魔王』とともに誕生する、新たな『勇者』の称号が顕現した者は、今回は、大陸の反対側の国の、伯爵の次男坊だったそうだ。
華やかな式典の後『魔王』討伐のパーティーが組まれ、遠征軍と共に出発したと言うが、はるかに遠い国のこと、詳しい話は伝わってこなかった。
討伐がなされるまでには、まあ、数年はかかる事だろう。
最終話に続く




