27 エリクサー
エリクサー。あれが出来た時は、大変だった。
『信じられない反則技だ』
「と、言われても、出来ちゃったの」
彼はため息をついて頭をかかえ、脱力したようにしゃがみ込んでしまった。
『いーかげん常識がないとは思っていたが、ここまでやるか?』
「だから、私がやったわけでは・・・」
『ああ、そうだな、わかっている。これがあれば、この先、俺たちがどれだけ助かる事か。
だが、なんとかしないと。なんとか取り繕わないと大変なことになる』
しばらく額をおさえて考えていた彼は、やがて立ち上がってきっぱりと言った。
『よし。調合室を建てよう。
こんな薬草園の中の小屋じゃなく、超高級なガラスのフラスコや、蒸留器や、それらしい高価な道具が揃った、外から覗けない大きな建物を。
商業ギルドから高価な材料を仕入れてもらって、入室制限の魔法をかけて、入れるのは君と俺とヨハンだけにして』
「でもいるものはこれだけ・・・」
『見せかけのためだ。
戦でこれを使ったら、皆に何だかわかってしまう。どこから手に入れたか、問い詰められる。
だから、薬師の君が、大変な手間と時間をかけて、研究の結果やっと完成したことにする。内密にギルドに製法の秘匿権を申請する。話しても、だれも信じてくれないだろうが』
彼は私の肩を抱き、目の高さを同じにして覗き込む。
真剣な時だけ、こうするのだ。
『このことは、誰にも、しゃべってはいけない。君を守るためだ。いいね』
こくん、と私はうなずいた。
ちょっと目を離すと、何をするやら・・・少しふらついて出ていきながら、彼は頭を振ってそう呟いていたっけ。




