24 ホーン?ラビット
「きゃあっ!」
眼の前にざっ!と飛び出した姿に、私は思わず悲鳴をあげた。
でも、攻撃はなかった。
え?
眼の前に飛び出した、巨大なホーンラビットは、ひょいと立ち上がる。
え?ホーンラビットなのに角がない?
おまけに服を着ている?
なに?これ?
人の子供くらい大きな、角無しのホーンラビットはぴょんと飛び上がった。
二本足で立ち、手の中の何かを覗き込む。
「オクレタ、オクレタ。チコク、チコク」
ブツブツ言いながら二足歩行でぴょんぴょんと走って行ってしまった。
なに?あれは?
後ろの方から、ばたばたとこちらに走ってくる音がする。
「ターニァ殿!」
あれは。
「ミューさん!」
「何かございましたか?
お家に伺おうとしていたら、突然悲鳴が聞こえて!」
あせって駆けつけてくれたらしい。
「お怪我はありませんか?お顔が真っ青でございますよ!」
「ああ、ごめんなさい、ご心配かけて。
ホーンラビットが出たのかと驚いたのですけれど、あなたと同じ、獣人の方だったようなので」
「わたくしめと。同じ?」
「は、はい、ウサギの獣人の方かと」
「ターニァ殿。ターニァ殿は、わたくしめを、獣人と、お思いだったのですか?」
え?
えーと、何かミューさんを、怒らせてしまった?
あ、獣人だという事は秘密だった?
「ご、ごめんなさい、私・・・」
「大変心外でござります。ターニァ殿。こんな誤解を受けては仕方がござらん。
ターニァ殿」
「は、はい」
「わたくしめは、このミューtrr%&$rr#"&srrrは、純粋の、生粋の、純血の・・・御免!」
いきなり身震いし、ポーンとトンボを切ったミューさんは、ぼん、という煙と共に、かちり、と長靴の踵を打ち合わせ、
「猫。でござります」
羽根つきの帽子を胸にあて、深く礼をとった。
青と銀の服に、折り返しつきの長靴で、背筋を伸ばして立つのは・・・
三角の耳をピンと立て、緑の眼の瞳孔は陽光に縦長となり、長い尻尾がぴしりと宙を打つ・・・
茶虎の猫。
「ああ、どうか驚かれないでくだしゃれ。魔物ではござりません」
哀願するように差し出された手は丸く、肉球が。
ピンクに紫のぶちの入った、肉球が・・・
「これにはいろいろわけが・・・にゃうっ!」
私は思わず身をかがめて、ミューさんを抱きしめてしまっていた。
「猫さんっ!」




