23 魔界で
ストーリー上必要な、ただ一回の残酷シーンです。
苦手な方がいらしたら、ごめんなさい。
魔王城を撤退した魔族たちが集う、魔界の一角。
群がる魔族たちの前に、瀕死の『勇者』が横たわっている。
四肢を砕かれ、両眼を潰され、胸を切り開かれて。
「でも死ねないの」
「勇者ですもの」
「その肉体が、強靭すぎて」
楽しそうにしゃべるハーピーたちが、舌なめずりして見つめているのは。
断ち割られ、押し拡げられた血みどろの胸郭の中で、剥き出しになったまましっかりと脈打っている『勇者』の心臓。
「回復はさせぬ。しかし、殺してもやらぬ」
「この心臓が動いている限り、次の勇者が生まれて来る事はないのだからな」
「この状態のまま、苦しみながら生き続けるがよい」
「これで、我等魔族の天下よ」
しかし、最早動くこともかなわぬ『勇者』は、不敵に笑った。
こみ上げる血にむせびながら、力を失わぬ声で言う。
「じゃ、ひとつ反則技を見せてやるか。
ちょっと変わったトモダチが教えてくれた、異世界の裏技ってやつ。
『かそくそうち』ってな」
かちり、と奥歯で音がした。
剥き出しの心臓が、ブレたように揺らいだ。
血を吐きながら、勇者は嗤う。
「心臓の一生分の鼓動数は、決まっているんだそうだよ。
だから心臓だけ、時を進めて一気に動かしてしまえば・・・
百年も時を進めてしまえば・・・
・・・寿命が来て・・・心臓は・・・自然に・・・止ま・・・る・・・」
心臓が、ブレながら脈動する。
とくとくとくとくとくとくとく・・・・・・
驚き騒ぐ魔将たち。
「自殺する気か!」
「やめさせろっ!自死されたら、すべて無駄だっ!」
「無駄に死なせるくらいなら、せめて経験値をっ!」
「勇者殺しの称号をっ!」
あわてた魔将の一人が、功を焦って槍を振りかざし、勇者の胸を狙って突き下ろした。
「・・・なんてのは嘘八百・・・」
心臓が貫かれるのと、『勇者』の嘯きは同時。
いっときのブーストならともかく、そんな器用なこと、出来るか、ばーか。
ざまぁみやがれ。
誰かの経験値になっちまうのは悔しいが、せいぜいあの愚かな国を震え上がらせてやってくれ。
『勇者』の俺がいなくなれば、次代の『魔王』と同時に次代の『勇者』が誕生する。
後の事は、そいつに任せたぜ・・・
・・・ああ・・・ごめんな・・・ティー・・・・・・




