15 樺の林の中で
シラカバとダケカンバの入り交じった明るい林。
幹の色が白く葉も明るい色の樹々は、花の季節も終わり、初夏の風に柔らかく葉をそよがせている。
下生えも少なく、歩きやすい林の中、あちこちに見知った草を見つけて、私は喜びの声を上げた。
「ああ、薬草が何種類も。ずいぶん珍しいものまであるわ!」
採取道具を持っていればよかった、とつい思って、私ははっと我に返る。
もう、必死に薬を作り続ける必要はないのだと。
魔王は倒され、遠征軍は戻った。
私の薬を必要とした人は、もういないのだと。
足元が乱れそうになって、私はぐっと踏みとどまる。
でも、『薬師』であることは、私の生きがい。これは、私の天職。
これから生活していくための、糧となるもの。
これから生きていく支えだもの。頑張らなければ。
「以前住んでおりました薬師どのも、この林で採取した薬草を使っておられました。
薬効の高い、良質のものが採れるそうでごさいますよ」
「ええ、これだけ魔素の流れの濃いところですもの。
こういう所で育つ薬草は、素直で元気が良くて、再生力も強く、良いお薬になるのです」
ミューさんは、低く喉を鳴らすように、笑った。
「子供を褒めるような言い方をされるのですな」
「薬草園で育った薬草と、野で採取した薬草を比べると、よくわかりますわ。
育った環境が、成分に反映されるんです。
人間が多く魔素の少ない王都では、うまく育たなくて苦労したんです。
薬草園が軌道に乗るまで、ずいぶんかかって」
魔素の多い土を運んでもらったり、話しかけたり、歌ったりして機嫌をとって。
王都の館に作った薬草園は、今、誰が世話をしてくれているのかしら。
また思いがすべり出してしまった私は、魔素の流れが変わったことにしばらく気付かなかった。




