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お婆さんとB子の会話

 ――夢の中に落ちてゆく


 私は真っ白な空間の中にいた。目の前には下校中に助けた腰の曲がったお婆さんと、クラスのお局のB子が狭い畳の部屋で嬉しそうに会話している姿が見える。


 「ゆみこ、合格おめでとう。これ入学金と学費だから大切にタンスにしまっておくんだよ」


 そう言うとお婆さんは白い紙袋を猪女――ゆみこに渡した。ふーん、そんな名前だったのね。というか殺風景な部屋ね。それに、金庫じゃなくてタンスって……どれだけ古風なのよ。泥棒にでも入られたら一番に盗まれる場所。そんな無防備だからひったくりなんかにあうのよ。あーあ、こいつの知り合いだったなら助けなけりゃよかったわ。


 「いいよおばっちゃ。お金ないんでしょ、わたし自分で働くから」

 「ゆみこは勉強を頑張りなさい。賢くなって自立すること。それがママとパパとおばっちゃとの約束でしょ」

 「でもわたし、Fラン大学だし。特技も何もないし勉強もできない。自立なんて出来るかな」

 「ゆみこは人を思いやる心を持っている。大丈夫、その心があれば自立なんてすぐにできるわ」

 「でも、こんな大金……」

 「それは、あなたが大人になって働いてから返してくれたらいいから。孫の進学ほど嬉しいものはないんだよ、ゆみこ」

 「おばっちゃ……!」


 なにこれ、私なにを見せられてるっていうの。お涙頂戴劇? というよりも、ゆみこがお婆さんのことを「おばっちゃ」って呼んでるとか笑えるんですけど。普段は「あたしねあたしねー」ってうるさい奴なのにさぁ。それに、貧乏なら貧乏にふさわしい生き方をすればいいのに、このお婆さんは何が嬉しくてこいつを大学に入れたりするの? Fランでも底辺にとっては箔がつくから? わからない、不思議だわ。でも日野はこういうやり取りを見て満足してそうだから不快だ。


 でも、ゆみこは溢れんばかりに涙を流している。そんなにお金がもらえるのが嬉しかったのかしら。まぁ貧乏だものね。そういえばこいついつも惣菜パンばっかり食べてたっけ。授業中よく眠ってるのは働いていたからなのかも。それでもゆみこのまわりには沢山の「友達」がいる。なんだかそれが羨ましい。


 羨ましい? あれ、なにこの気持ち。嫉妬? 何に対して――


 「やぁ、月野さん」


 私のいる白い空間の中に突然日野が現れた。


 「なに、また予知?」

 「そう。今度は焼身自殺だって」

 「えげつないわね。いつ、どこで、誰がとか、わかってるの」

 「みかこちゃんが深夜の0時に、例の公園で」

 「みかこ?」

 「いつも君の隣にいた仲の良い友達じゃないか」

 「あぁ、A子あのこね。でもどうして」

 「そこまではわからない。でも、救わなきゃ。大切な友達を失っちゃうよ」


 大切かどうかは知らないけれど、卒業式まじかでお葬式などに行くことになるのはゴメンだ。ということで、作戦を立てた。私は深夜に魔法を使って家を抜け出し、公園へと行く。日野もどうやってか家を抜け出して私と合流する。そしてA子――みかこの自殺を魔法と打消しの力を使って失敗させる。そこで目が覚めた。


 「はぁ……、なんでよりにもよって焼身自殺? あいつそこぬけの馬鹿なのね」


 私はいつも通り身支度をして学校へ行き、いつも通りの学校生活を送り、深夜になるのを待った。

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