エンディング
無事に卒業式を終えたあとも私と日野はこの街を守る「正義のヒーロー」を続けていた。空き巣や放火魔などの、様々な犯罪者を懲らしめてやったわ。もちろん悪戯をしてね。そのたびに二人で笑いあっていた。毎日が楽しい。ただひとつ気になっていることが……。
「ねぇ日野。なんであんたそんなに傷だらけなの?」
首のあざに手の甲の引っかき傷。もしかしたら親から虐待されているのかもしれない。そうとなれば放っておけない。なんかこう、もやもやするのよね。日野って自分のことを話さないから何を考えているのかわからない。私がどんな顔をしていたのか知らないけれど、日野は「ははは」と笑いながら答えた。
「猫だよ。チャットっていうんだけど、暴れん坊でさ。首にキックしてきたり手を引っかいたりしてきて毎日大変でさ」
べらべらと、愛猫の自慢話なのか苦労話なのかわからないことを嬉々として口にする日野。その顔を見るとなんだかもやもやが晴れた気がする。
「なんだ……心配したじゃない」
「へぇ、月野さんって人を思いやる心があったんだ」
意外そうに言われた。
「人を悪魔みたいに言わないで」
正確には魔法使いだから。人の心はちゃんとあるから。
「ずいぶん性格が変わったね。あっちの世界はそんなに怖かったのかい」
「あんたも死ねばわかるわよ」
「じゃあ楽しみに待っておこう」
日野はそう言うと私を見てニコニコ微笑んでいた。空を見ると淡く虹が架かっている。このときまだ私は将来こいつと結婚することになるなんて知りもしなかった。日野の奴、こうなることを予知していたわね――
END.
この作品は「マラミク」という言葉を見つけて出来たものです。意味は曲解していますが、この言葉が消えないようにという想いを込めて書きました。
参考図書:『なくなりそうな世界のことば』吉岡 乾著 (創元社)p107
正しい意味は是非この本を読んで解釈してみてください。面白い本ですよ!




