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弁当がある学校生活

 席に着く。友達の群れがぞろぞろやってくる。そこにみかこの姿はない。一時限目の授業を終えてしばらくすると、かけるが担当の先生に連れて行かれるのが見えた。まわりは「なんでだろうね」と不思議がっていたけれど、理由がわかっている私は特段驚くこともなかった。それになんだか「ざまぁみろ」って感じだわ。私がみかこみたいに馬鹿だったらどうなっていたことか。それにこどもまでできたとしたら私はどうするだろう。やっぱり堕ろす? それとも産んでしまう? ――あぁもう、また余計なことを考えてしまったわ。今日はみかこがいないからノートを綺麗に整理しなくてすむ。もともと私は走り書きでも授業の内容が頭に入るのよ。それをしなくてよくなったのは良かったかも。でもなんだかスッキリしない。漠然とした気持ちが湧いてくる。


 そうこうしているうちに昼休みになった。高校生になってはじめての母親の弁当を友達の前に広げると、「え。今日はお弁当なの雫ちゃん!? さすがお金持ち、手の込んだ料理ばっかりじゃない。私なんか豚のしょうが焼きよ。弁当格差~」なんてみんなでそろってわいわい言うものだから、少しだけ腹が立った。だから私は笑顔で「じゃあ具を交換しましょうよ、その方が楽しいでしょ」と言い返した。すると、みんなはまるで餌を求めるひな鳥のような声を出して物珍しそうに、弁当の具を交換していく。気がつけば私の弁当は庶民派弁当になっていた。母親の料理で唯一残ったのは卵焼きだけ。まぁ別にいいけど。


 そういえば日野はなにを食べているのかしら? チラッと見てみるといつも通り本を読んでいる。その横には封のあいたポテトチップスが置いてあった。ふーん、あいつって偏食なのね。それにもう温かくなってきているのに室内でマフラーを巻いてるって……どれだけ寒がりなのよ。


 そんなこんなで長い一日が終わった。友達と別れた私は校門の少し手前まで来ている。久しぶりに食べる冷めた卵焼きは、甘めでバターの味が濃かった。家で食べるものと味を使い分けているのだと昼食の時間で初めて知る。まぁまぁ美味しかったんじゃない?


 「やぁ、月野さん」


 校門前まで行くと日野が満点の笑顔で手を振っている姿が言えた。……こいつ、本気でストーカー化しそうで怖いわね。ずっと待っていたのかしら。


 「また予知?」

 「そう。今度はかける君が深夜2時に△□通りで違法ドラッグに手を出すんだって」

 「放っておけばいいじゃない、あんな最低な男」

 「放置しておくと大量殺人を起こす危険性があるんだよ」

 「あんたの予知、段々情報量が多くなってきてない?」

 「そうなんだ。ボクたちが人を助けて夢を見ると、少しずつ予知の力が上がってくるのがわかるよ。君は?」

 「さぁ。悪戯する程度の力はあるんじゃない」

 「君の魔法の力は強力だと思うんだ。だから気をつけて使ってね」

 「どうせあんたが打消すんでしょ」

 

 日野は「まぁそうなんだけど」と言って、マフラーを巻きなおした。首にチラッと見えた青いあざ。あれなにかしら? あんなところに何かをぶつけたりする? よっぽどドジなのね。もしかしてあざを隠そうとして巻いてるのかしら。逆に目立つのに……。


 「じゃあ△□通りで!」

 「あ、まだ協力するって言ってないでしょ!」


 ――行ってしまった。まぁ仕方ない。みかこを無理やり孕ませたかけるへの仕返しではないけれど、弔い合戦といきますか。

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