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魔法使いになった日

 カラスが朝日に喧嘩を売っている。まだ早朝だというのに都会の喧騒やネオンは私の心をすこぶるイラつかせる。両親は何不自由なく育った私を、まるで作品のように可愛がっていた。大学はそこそこ有名なお嬢様学校に受かった。何が嬉しいのか親戚一堂集まってお祭り騒ぎで、まるで自分のことのように近所にそのことを自慢している。


 「面白くないのよ、この世界は」


 みんな私を見ているんじゃない。私という作品を勝手に愛でているだけ。どうせレールからそれれば「失敗作」として見向きもされなくなるだろう。正直うんざりしている。


 「壊してみたいな、なにもかも」


 そう思いながら私はカーテンをザッと荒くあけて、うざったい朝日を覆い隠すように目を閉じ、「出て来い、悪魔」と唱えた。これは高校に入学しはじめた頃から始めたまじないだ。特に意味は無いが、これをすると心が落ち着くのだ。しかし、今日は様子が違った。


 「呼んだ?」


 長い黒髪を慌しく振り乱して後ろを振り向くと、バスケットボールのようにまん丸な体系の黒い小さな生物がいて、勝手にぺらぺらと自己紹介を始めた。


 「やぁ、ボクはアン。悪魔さ、1000回目のコールで目が覚めたよ、お礼に願い事を一つ叶えてあげるよん♪」

 「ごめん、用事は無いけど用事があるから帰って」

 「酷い、せっかく一緒にこの世界を壊してみようかなって思ったのにー」

 「魔法使いにでもならなきゃ無理ね」

 「そうか、じゃあその願い聞き入れた!」

 

 悪魔と名乗るその球体は、私の右手の人差し指の爪に☆のマニキュアを施してどこかへと消えた。どうすればいいのかわからなかった私は、とりあえず「あそこにあるネコの置物を消せ」と言ってみた。すると爪が輝き、置物はパッと消えてしまった。何気にお気に入りだったのに……。


 「でも、面白そうね。これ」


 今度は向かいの噂好きのおばさんが住んでいる家を真っ赤にペインティングした。特に恨みはなかったけど、なんとなくウザかったのよね。近所の人がどうのこうのとか興味なかったし、私が大学に受かったのを一番に近所に広めたのもあのおばさん。今度は自分が噂になる番ね。


 「あーもっと面白いこと……ないかな」


 よくわからないけれど、本物の魔法使いになれた。何でもできる。私のさじ加減でこの世界の命運がかかっていると思うと、どんどん心が満たされていく。今度は大地震でも起こしてみようかしら。そんなことを考えているうちに、「友達」という名の馴れ合いがある高校へ行く時間になった。


 「そうだ。A子あのこを消してみようかな。あいつ、私のノート目当てに”友達”っていってるだけだし、ハッキリ言って邪魔なのよね」


 私は、「A子あのこが行方不明になりますように」と唱えて学校へとワープした。

 

 どうなるか楽しみだ。

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