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妹とは呼ばせない! 作者:東 啓太

第1章:妹と妹オタク

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プロローグ『妹が終わらない』

素人です。
感想いただけたら嬉しいです!
 ーー夕方。
 俺はミナに高台の公園へ呼び出された。

 予定の場所である高台に行き、少し辺りを探す。
 街の景色がよく見える場所にショートカットの黒い髪の女の子が見えた。

「来てくれてありがと……お兄ちゃん」

 ミナは気がついてこちらを振り返る。
 その少し赤みのさす頰には少し泣いたであろう、涙の流れた跡が残っている。
 高台から見える街の景色が綺麗なのか、それとも何か景色を見て思う事があったのかは俺にはわからないが。

「もう……気づいてるよね?お兄ちゃん」

 ほんの少しの間が空いた後、ミナは話を切り出す。

「ん?何が?」

 よくわかっていない俺は首をかしげる。気づいているよね?と言われても全く心当たりがない。
 ミナはそんなを見て説明を始める。

「ミナとお兄ちゃんは6年前まで一緒に暮らしていたよね」

「ああ、そうだな」

「あの頃は楽しかったなぁ……。当たり前みたいに笑いあって話し合って」

 ミナは6年前を懐かしむように言う。
 6年。この空白の間はミナにとっても俺にとっても辛く、苦しいものだった。

 優しく笑い、微笑んでくれる母。一見厳しそうでも優しく、しっかりと話を聴いてくれた父。二人がおよそ6年と少し前に観光バスと大型トラックがぶつかる事故で死亡した。一緒に乗っていた俺たちは運良く怪我ひとつなく助かった。
 しかし、その後が最悪だった。

 どこにも行けず帰ってきた時に見た、静まりかえった家。俺と離れたく無いと泣くミナは祖父に引き取られ、俺は名前すら知らないような親戚の親戚に引き取られた。

 そして高校生となり、一人暮らしを始めたのが今。

「確かにこの6年は別々で暮らしてきた。だが、もう一度暮らせるはずなんだ。そうだろ?ミナ」

 その考えを俺がミナに伝える。確信を持ち、はっきりとした決心を持って。
 しかし、ミナは俺の予想とは全く違う反応を示す。

「ごめんなさい……お兄ちゃん」

 乾ききった涙の跡がまた新しく湿る。

「え……?」

「数日前に再会できたのは偶然で……たまたま出かけた場所が同じだっただけ」

 頰を湿らせ、少し鼻声になりながらいうミナ。

「そ、そんな事ない、ミナ。そんなことあるはずないんだ……」

 認められない、信じたくない俺はそんなミナの意見を必死に否定する。

「そっか……」

 ほんの少しだけミナの声が穏やかなものへと変わる。
 幼い子供のように認めがらない俺を慰めるように。

「お兄ちゃん……ミナにもお兄ちゃんにもそれぞれ帰る場所があるんだよ。ミナ達はもう……赤の他人でしょ」

「そんな……はず……」

 ないーーとは言えなかった。
 数日間ミナと過ごす事が出来た。しかし、その数日はどこか後ろめたさと、ぎこちなさがあるものだった。
 だから……。ない、と否定することは俺には出来なかった。
 ミナの言葉にショックを受ける俺を再び慰めるように、涙を少し流し、ミナはいう。

「ミナ、本当はお兄ちゃんとずっと……ずっと一緒に居たかったんだよ」

「な、なら、ずっと俺と一緒にーー」

「え……」

 認められない俺はそんなミナの言葉にもすがりつく。俺の言葉にミナはほんの一瞬だけ反応する。
 しかし、ミナは少しうつむき、首を横に振る。

「ごめんなさい……お兄ちゃん……」

「ま、待ってくれ……ミナ!」

 ミナは後ろを振り向かず走って行く。
 その頰には悲しみ、そして兄への愛しさを含むような涙が光っているのが分かる。

「ミナ…ミナ……ミナーーー」

 ミナは一度も振り返らず走っていき……。
 やがて俺の視界から消え、その場には泣き崩れる俺だけが残る。

「なんで……なんでだよ」

 俺はゆっくりと掠れた声で呟きながら立ち上がる。
 そしてトボトボと帰っていく。一歩一歩、自身にかかる重さからあがらうかのように。

 幼く、わからずやの俺と自身の現状をはっきりと認める事が出来るミナでは何もかもが叶わないのかもしれないし、願う事すら不可能なのかもしれない。

 ーー以後、俺は二度とミナと会うことは叶わなかった。

『BADEND』

 ーーーーーーーーーー

「はぁぁ……またかよぉぉぉ」

 彼はボサボサになった頭を悔しそうに抱える。
 目の下には薄っすらとクマが出来ており、そろそろ睡眠か仮眠を取らないと大変だと言うことを知らしている。

 ちなみに……お別れの悲しいシーンになっていたのはノートパソコンの中だけである。
 ノートパソコンの中のゲームの中だけである。
 もっと言えば、一人の男が自室でパソコンに向かってゲーム内のセリフを呟いているだけだ。

 現実であんな事……起こるはずはないのだ。

「……ミナって不幸にならなきゃいけない運命なの?」

 かれこれ合計一週間近くこの妹ゲーム「妹と呼ばせてよ!」をプレイしている。
 その中の妹キャラの一人『ミナ』を攻略しようと五時間近く頑張っているのだが……。
 どれだけ違う選択肢を選んでもクリアの兆しが見えてこない。
 今回もいい感じじゃないか〜?と思い興奮のあまりセリフを口に出しながらゲームを進めていたのだが……やはりバッドエンド。

 このゲームのミナは不幸にならなければいけない運命なのだろうか?とありえないが考えてしまう。

「くっ……プライドに反するが……」

 出来る限りネットは見ないようにしているのだが今回だけは……と検索してみる。

「妹と呼ばせてよ!公式サイト……はぁ」

 そして出てきた公式サイトを開き、目を通していく。
 彼の目に飛び込んできたのは、

『誠に申し訳ございません。ゲームのミスにより妹キャラ「ミナ」は現在、ハッピーエンドに行き着かないようになっております。ただ今、ミナ編はバッドエンドのみお楽しみいただけます』

 という文章。

 今のところ、ミナは不幸にしかなれないようだ。
 つまり、五時間という時間と労力が無駄だったようだ。

「は、はは……はぁぁぁぁ?」

 彼……葉桜慶人はざくらけいとは疲労が溜まりきった顔で絶叫をあげるのだった。
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