隣町へ
タイクーン城を出て、王都を背にして歩みを進めるシャルロットとノエル。
地図を片手ににらめっこするノエルの横に、シャルロットは期待と不安が入り混じった初めての感情に胸を高鳴らせていた。
自分の足で森ではない地面を踏んで歩いている、傍らにはタイクーンの王子……。
本当に現実の出来事なのか何度も自分に問い、頬をつねったり深呼吸したり、傍から見たら変人としか言いようのない行動だった。
「シャルロット……浮かれるのは結構だけど、その変な動きはやめてくれないか?」
ノエルの言葉にピタッと動きを止める。
自分では気づかなかったようだが、改めて振り返ると確かにおかしかった行動に今更恥ずかしくなってくる。この道を通る時にやけに視線を感じていた理由が分かり、急に顔が熱くなった。
「ご、ごめんなさい。ここは森とは違うものね。人に見られるってことよね」
今まで人に会うことなく過ごしてきたシャルロットにとって周りの目を気にすることは考えたこともなかった。ノエルはやれやれと肩をすくめ、ため息をつきながら再び地図に目をやる。
「とりあえず今日は王都の隣町、ネイレンに行こうと思う」
ノエルが地図に指を指す。その地図をひょこっと覗き込むと広大な土地がシャルロットの目に入ってきた。タイクーン王都からネイレンまで数ミリ単位なのに対して、オーフェリア領土まではめまいがするほど遠い道のりだった。
「すごい……。世界ってとてつもなく広いのね」
世界地図を初めて見たシャルロットは素直な感想を述べる。
「そりゃそうだ!船や飛空挺でもかなりかかるのに徒歩でオーフェリアを目指すのはどれほど時間がかかるか……。今からでも遅くない。一気にオーフェリアまで飛空挺を出してもいいんだけど」
「それはだめよ!」
シャルロットが強く反対する。シャルロットは旅を始めるにあたって徒歩でオーフェリアを目指すことに決めていた。
何故ならこの旅で自分自身を成長させるために、様々な国や地域を巡りたいと考えていたからだ。
ただでさえ、シャルロットは普通とは言いがたい生活を送っていたのでマイナスからのスタートとなる。
「冗談だよ、冗談。俺もそれについて行くとキメたんだから最後までやり遂げるよ」
2人は目を合わせて微笑んだ。
「あ、そうそう。これから先は俺とシャルロットが王子と姫であることは絶対に他人に話さないこと。ばれたらいろいろと厄介だからな」
「わかったわ」
王子と姫であることがばれたらどんな大変な事態になるか、流石のシャルロットも想像できた。
そうこうしている内に2人は隣町のネイレンにたどり着いた。




