揺れる心
すっかり日も昇り、外は昼の陽気に包まれている。そんな晴れやかな雰囲気とは反対に不釣り合いな表情を浮かべているシャルロット。
用意された部屋で1人、小鳥が飛ぶ姿を見てはため息をついてばかりいた。
しかしそんな姿も絵にはなるようで、中庭にいる兵士や従者たちがひそひそとシャルロットの噂をしていた。
時より風になびく金色に近いクリーム色の長い髪、光に反射するような水色の瞳。
そんな姿は城の誰よりも美しかった。
ただ本人にはそんな自覚一切ないが……。
「浮かない顔、してるな」
後ろからかけられた声にハッとして見ると、ノエルの姿があった。
「びっくりしたわ。いきなり入ってくるんだもの」
「何回もノックしたさ。気づかないほど上の空だな」
そう言って窓際のシャルロットの元へ近寄る。
「……頭パンクしそう。私が姫だなんてすぐには信じられない」
「まあ、そうだよな。実感なんてすぐには湧かないだろう」
空の一点を見つめ続けるシャルロットを横目に、ノエルは考えた。
森の中で育ったシャルロット。
自由に育ってきたかというとそうではない。
限られた世界の中でしか自由がなかった。
でも姫であるという事実を聞いてシャルロットはこれからどうするのだろう。
どう、したいのだろう……
「俺なら……」
「え?何か言った?」
聞き取れなかったシャルロットはノエルの方を見る。
「シャルロットは、これからどうしたい?」
「これ……から……?」
これから────
姫だという真実を知り、そうなると気になるのはオーフェリア王国にいる生みの親、もとい国王、王妃。
自分の本当の両親に会ってみたい。
そんな思いが胸の中に宿った。
しかし、シャルロットがオーフェリアに行けば災いをもたらす存在、として追い返されてしまうかもしれない。
それに生まれてすぐの我が子を手放す人だ、シャルロットを快く迎えてくれるわけがない。
だとしたらこのまま育ての親と森へ帰り、今までどおりの生活をしていた方が幸せなのではないかと思った。
「ノエル……もし、もしもよ?災いをもたらす存在っていうのが何を表すのか分からないけど、オーフェリアの……私の本当のお父様とお母様が生きているのか分からない私を迎えてくれるか分からないけど……行ってみたい。オーフェリア王国に」
淡い期待が少しずつ芽生え始めてくる。
勇気を出して話してくれたシャルロットの気持ちにノエルも目を見てしっかり頷いた。
「君ならそう言うと思った。本当に行くと言うなら相応の覚悟が必要だけどね」
「……覚悟、そうね」
シャルロットは手にぎゅっと力を込め、決意を固めるのだった。




