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忘れられた姫の冒険  作者: こと
第2章 リディネイラ王国
17/21

ノエルの苦手なもの

こうしてデュークとジョシュアの2人を旅のメンバーに加え、次の地を目指す。

マルゼーラの町を出てすぐ、タイクーン王国の国境を越え、隣国リディネイラ王国へと足を踏み入れた。


「この国は水が豊富で、とても水質がいい事で有名なんだ。川も多いし、海にも面している」

そう言ってノエルは橋の下を指差した。穏やかに流れる水が心地よく耳に聞こえる。確かに水は透明で澄んでいて、川底がはっきりと見えていた。


「本当にきれいね。川でこんなにきれいなら海もさぞかし美しいんでしょうね」

シャルロットはうっとりと想像を膨らます。

「そうだね〜。オレも早く海に行って女の子たちとはしゃぎたいよ」

「バカ。そんな事してる暇なんてない」

デュークはすかさずジョシュアを小突いた。

「でも少しだけでも行ってみたいわ。私、海を見たことも行ったこともないの」

森で暮らしていたシャルロットにとって本でしか見たことがなかった。実際の海がどんなものか知りたくて、すぐそばにある現実に胸を踊らせる。

「だよね〜行きたいよね!分かってらっしゃるシャルロット姫様!」

ここぞとばかりにシャルロットをおだてるジョシュア。調子いいんだからとデュークとノエルは呆れていた。


「でも港町は次の国の国境近くだからまだまだ遠いぞ」

「……ねぇ、次の国境越えたらまた違う国よね?地図を見る限り、次の次の国はオーフェリアって書いてない?」

地図を覗き込むシャルロットの目がキラキラと輝き、期待に満ちた表情でノエルを見つめた。


「確かにそうだけど、オーフェリアは世界で1番広い領土を持つ国なんだ。国に入ったとしても王都までは結構遠い」

その言葉を聞いてガックリと肩を落とす。現実はそんなに甘くないんだなと痛感した。

「まっ、のんびり行きましょお姫様」

うなだれるシャルロットにジョシュアは肩をポンポンと叩いて慰める。




「そんな事より、今日はもうすぐ日が暮れるからここら辺で休もう」


デュークの言う通り、段々と夕日が沈んでいた。周りは宿らしきものはない。今日は野宿という事になりそうだ。



「え、待って。それ本気か……?」



急にノエルの表情が曇り、少し青ざめているかのように見える。


「ノエルどうしたの?体調悪い?」

不思議そうにノエルの顔を覗き込むシャルロット。

「大丈夫だよ放っといても。……全くこういう時に王子様は弱いんだから」

様子がおかしいノエルを無視して黙々とテントを張るデュークとジョシュア。その光景に疑問を感じたシャルロットは状況が飲み込めない。


「なになに?どうしちゃったの皆」


あっという間にテントを張り終えた2人は、特にジョシュアはニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「王子様は屋外で寝るという行為が耐えられないのさ」

「ジョシュア!それ以上言うな!」

慌ててジョシュアの口を抑えるノエル。得意げにニヤニヤと話すジョシュアに怒りを覚えるが、本当の事なのであまり強く言い返せないでいた。



「……みっともないと思うかもしれないけど、俺は虫が苦手なんだ。特に夜なんか暗いから、いつやつらが襲ってくるか分からないし、熟睡できるわけがない」



恥ずかしそうに目を逸らしながら話すノエルに少しかわいい、と思ってしまった。

「誰にでも苦手なものはあるものよ。大丈夫、動物たちも人間を怖がっているから警戒しているの。私がここの虫たちにノエルに近づかないように言っておくから安心して」


平然と話すシャルロットに3人はきょとんとする。普通の人間にそんな事が出来るわけがない。



「ひょっとしてマルゼーラの湖で話してたのって独り言じゃなくて動物と話してた……?」



デュークは思い当たる節があり、先日の事を思い出した。あの時、シャルロットに話しかける前に何やらブツブツと1人で話しているのを見ていたのだ。


「あれ、見られちゃってたの?実は私、赤ちゃんの時から森で暮らしていたから何だか自然と動物の気持ちが分かるのよね」


「それはすごい力だ……」

「森からの恩恵……って事なのかな。すごい特技だね」


デュークとジョシュアは驚きの眼差しでシャルロットを見つめる。




「あぁ……これで俺は安心して眠れる……」



ノエルは神を見るかのような面持ちでシャルロットに手を合わせて拝むのだった。

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