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忘れられた姫の冒険  作者: こと
第1章 始まり
16/21

再起

今日はよく晴れた青空が広がっている。

家にはデュークとジョシュアがいるので、シャルロットは外に出て町を散歩していた。


前に1人で散歩していた時に見つけたマルゼーラの湖に向かっている。辺りは静かで自然豊か。心を落ち着かせるためにはここが1番良かった。




「鳥さんこんにちは。今日も穏やかでいい日ね」

タイクーンの森でいつもしていたように動物たちと話をすることで現実を忘れられた。と同時に、誰かを傷つけてしまうくらいならタイクーンに戻って、今まで通り普通の生活に戻ってしまおうか……とシャルロットの気持ちも揺らいでいた。


ふと水面を見つめる。

映った顔はとても沈んだ顔をしている。まるで別人のようだ。


「なんてひどい顔……」

自分の表情に落胆し、無理矢理頬をつねって笑顔をつくる。が、更におかしな事になり、余計にため息を増やしてしまう。




「うわ、すっごいブサイク」




背後から声がする。

驚いて振り返ると笑みを浮かべたデュークが立っていた。

「ひ、ひどい!というか声ぐらい掛けてもいいんじゃない?」

恥ずかしさと怒りから頬を赤くする。

ブサイクと言われたことに結構カチンときたみたいだ。


「はいはい。邪魔だからどいて」

デュークは適当にあしらうと、持っていたつぼに水をくみ始める。その光景をじっと見ていたシャルロットは辺りをキョロキョロと眺めた。

「(今デュークと2人っきり。これはチャンスなんじゃない……?)」

シャルロットはノエルのことで謝りたいとずっと思っていたが、なかなかタイミングが掴めず、ずるずると引きづったままでいた。この機会を逃すものかと、深呼吸して、勇気を出して口を開けた時だった。




「この前、強く言いすぎて悪かった」


「え……」


先に謝ったのはデュークだった。

予想外の態度に驚きを隠せない。



「あんたの事、何も知らないのに偉そうなことを言った」

「ぜ、全然全然!謝るのは私の方。あのままだったらノエルは死んでしまっていた。デュークが助けてくれたおかげよ、ありがとう」


言えた。

あんなにも悩んでいた事をしっかり伝えられたのだ。言葉に出したことでシャルロットの心にすっきりとした爽快感が駆け抜ける。思わずにっこりと微笑むとデュークは驚いた顔をした。


「なんだ、それが本当の顔か」


数日間暗い表情のままで過ごしていたシャルロットの変わりように驚き、同時に安堵の笑みを浮かべた。



「あー、デュークときちんと話せてよかったわ!……でも……」

シャルロットの中の問題が解決した訳ではなかった。1番大きな問題は旅を続けるかどうかだ。


「あのねデューク。私、私の本当の気持ちはやっぱりオーフェリアに行きたい。でも、そのオーフェリアから門前払いされてるなら、ノエルが傷つくなら……行くのが怖いわ」

「……でもそんな中ノエルはあんたを守った。ノエルの答えは決まっているんじゃないか」

「それって……」


シャルロットは胸がギュッと締め付けられる。ノエルは危険を承知で旅を続ける覚悟があるということだ。

「あんたも旅を始める時、相応の覚悟があったんだろう?ノエルも一緒」



「私の……覚悟……」

もちろんシャルロットだって自分の進む道を決心して旅に出た。しかし今になってその覚悟が甘かったのではないかと気付かされる。


「ノエルと襲われた時、その……人を殺してしまった……。これからもそういう事があるって考えたら……」




「そうしなければあんたの進む道は開けない!」




デュークが声を張り上げる。真剣なその眼差しにシャルロットは言葉を失う。



「楽してオーフェリアへ行けるんだったら1番いい。でもそうじゃないんだろう?だったら、そこまでして行きたいのなら切り開くしかない。平和に過ごしてきたあんたにはまだ分からないと思うけど、今のこの世界には綺麗事言ってるだけじゃどうにもならないことだってある……」



デュークのエメラルド色の瞳が悲しみを帯びる。詳しくは分からないが、その瞳を見ればデュークがこれまでどんな事を経験してきたかを物語っているように見えた。シャルロットは自分が今まで生きてきた状況がどれだけ幸せだったかを噛み締める。






「シャルロット!」



声のする方へ目をやると、ずっと眠っていたはずのノエルと、慌てて追いかけるジョシュアの姿があった。


「ノエルにジョシュア!どうしてここに?」

「デュークがシャルロットのところに行くと言うから心配でここまで……。全く、目を離した隙に抜け出すからこの王子様は……」

ジョシュアはやれやれと肩を落とした。デュークはわざわざシャルロットに謝るために来てくれたのかと思うと嬉しくて目が熱くなった。


「余計なこと言わないでくれる、ジョシュア」

デュークは冷ややかな視線をジョシュアに送る。その顔は少し赤くなっているようにも見えて、シャルロットはクスッと微笑んだ。




「ノエル、もう歩けるの?」

「ああ、デュークとジョシュアのおかげで回復するのが早いみたいだ」

ノエルの元気な姿を見て嬉しく思うシャルロット

。そこには死にかけの苦しそうな表情を浮かべるノエルはいなかった。




「で、デューク。最後まで言えたの?」

ジョシュアはニヤリとデュークを見つめる。

「それは……」

デュークは何か言いたげに言葉を濁らせていた。


「……?何かしら?」


「えっと……つまり、これから……その……。俺も行く」


「?」



言っている意味が分からなくてポカーンと口を開けてしまった。

その状況にジョシュアはプッと吹き出して大笑いする。

「何してるのさデューク!子どもじゃないんだから!」

「うるさい!少し黙ってて」

ジョシュアの頭を1回叩く。そして咳払いをして、その場を仕切り直した。





「シャルロット、俺も旅に連れて行って」


「デューク……!」



デューク自ら申し出てくれるのが嬉しくて笑みをこぼす。そして初めて名前を呼んでくれたことに地味に感動した。


「もちろんオレも行くよ。何だか君に興味がわいてきたんだよね。存在しないはずのお姫様が生まれた国へ行く旅……。楽しみだね」


ジョシュアは何だか違う方向に興味がありそうだが、協力してくれるのには間違いない。シャルロットは苦笑いを浮かべるが、内心嬉しく思った。





「決まりだな」

ノエルはシャルロットを見つめる。シャルロットは元気よく頷いた。


「2人ともありがとう。そして、これからよろしくお願いします!」



心強いメンバーが2人加わったことでシャルロットの旅路に日が差し込むようだ。湖の水面はシャルロットを後押しするように、風に吹かれたキラキラとした波が揺れていた。

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